徒然草 第四十七段(くさめ、くさめ)

 

 清水寺にお詣りに出かけた時、一緒についてきた年寄りの尼さんが道すがら、「くさめ、くさめ」と言い続けていました。このまじないをしないと、くしゃみをした時に死んでしまうと言います。

 

 その尼さんが育てた坊ちゃまは賢くて比叡山で勉強していると言います、その坊ちゃまが、今くしゃみをしたのではと思うと気が気でないから、まじないをやっているという事でした。

 

 

 

 どうも「くしゃみ」をすることによって魂が体外に出てしまうと、寿命が縮まると考えられていたようです。それを留める呪文が「くさめ」だったといいます。

 

 

「お母さん、くしゃみしたら魂が体から出るの?」

 

 

「お父さん、どうしよう、この前クシャミしたけど。」 モモ

「魂なんて出ないですよ。安心しなさい。」 父・母

 

 

 昔は「くしゃみ」の事を「鼻ひ」と言ったようです。「くしゃみ」が出るたびに、「くさめ、くさめ」と呪文を唱えているうちに、「くさめ」が「鼻ひ」に取って代わったようです。

 

 それにしても、傍らから見るとその尼さんは変人にしか思えないのではないでしょうか。

 

 

「そりゃ、歩きながら『くさめ、くさめ、…。』と、ぶつぶつ言ったら気色悪いでしょ。」

 

 

 狂言にも「くっさめ」という言葉があります。「くさめ」と「くっさめ」は同じ言葉です。

 

 その昔、小学校に色々な文化行事の鑑賞が体育館で行われていました。一度、狂言を見たことがあります。その中で「やるまいぞ」と「くっさめ」という言葉だけは覚えています。

 

 

「小学校の時に狂言鑑賞とは、洒落た学校だね。」

 

 

 しかし、狂言の「くっさめ」が「くしゃみ・ハクション」だと再確認したのが、コンタック600のCMです。

 

 和泉流宗家 和泉元秀さんが「ハ~ッ くっさめ くっさめ」と「くっさめ」を連呼しています。和泉元秀さんは泉元彌さんのお父さんです。

 

 


「お父さんの知識は、テレビからなのね。」

 

 

 

「狂言の人も、魂ぬかれかけたのかね。」

  - モモの一言 -