先週末、銀座のグッチ館で行われた、羽生さんの写真展を観に行ってきた。久しぶりの銀座なので「一緒に夕飯でも」

ということで夫も一緒だった。

 足を踏み入れた瞬間、大小の写真の数多さに驚くとともに、羽生さんの世界に包まれるような幸福感をおぼえた。

  躍動する羽生さん、笑顔溢れる羽生さん、


 そして、しなやかな羽生さん。


 そして俯いた美しい羽生さん。

 でも、私の心を激しくゆさぶったのは、羽生さんの「足だけ」を撮った写真だ。


 その足は、全体に血管がはり巡らさていた。過酷な仕事をする足に、少しでも多くの血流と酸素を送るためだったのだろう。足指には、ほとんどぜい肉がなく彼の体を支える細く、そしておそらくは見た目以上に強靭な骨を薄く肉が覆っている、というように見えた。踝(くるぶし)付近には、スケート靴で絶え間なく擦れるからだろうか、大きな傷跡がみえる。

 私は、初めて羽生さんのスケート靴を脱いだ裸足の足をみた。そして、あの華麗で美しい滑りの下に隠された、「満身創痍ならぬ満足創痍」ともいうべき足を見て、彼の壮絶な鍛錬を想った。全身全霊スケートに打ち込み続けた人の足は、こんなに荒々しく傷だらけなのだ。

 おそらく、これを撮ったカメラマンの方も、細身でしなやかで躍動感に満ちた美しい羽生さんからは想像できない、彼の足の様相に驚かれ、心に何か深い感慨を抱いて、これを撮ったのかもしれない。

 少なくとも私は、この足の写真を見て、言葉にできない深い感銘を覚えた。彼の身体も足も、フィギュアスケートに人生の全てを注ぎ込んでいる人の証しとしてあるのではないか、と思ったからだ。きっとこれからも、彼の身体と足は、フィギュアスケーターとしての歴史を刻んでいくのだろう。そして、そういう姿を見せ続けてくれる羽生さんへの敬愛と感謝の気持ちが、心の底から湧き上がってきた。


[追記]

羽生さんの足に人格があるなら、その「足」さんにも感謝し、これからも、羽生さんを宜しくと、お願いしたいような気持ちだ。