Epsode zero

 

Episode Zero:Ambition to English 

英語への想い 

とにかく無性にアメリカ(USA)に行ってみたかった。大阪大学・理学部生物化学科での大学院生活が始まったばかりの1964年春のこと、恩師堀尾武一先生との出会いがこれを加速させ、僕の人生を大きく決定づけることとなった。堀尾先生は米国NIHから研究補助金(Grant)を獲得してラボを運営しておられた新進気鋭の助教授で、夏休みのほぼ一か月はUCSD(Unive. California, San Diego)で研究に従事しておられ、お土産はPlayboyだけではなく目新しい実験用の小物が一杯だった。この環境はとても新鮮で新たな英語という言語との出会いがあった。さらに、プロポーズのとき、院生で髪結いの亭主状態であったこともあいまって、新婚旅行は「学位取得したらアメリカに行くから」と啖呵を切っていたこともあって。 

 

■英語との出会い 

  1. ローマ字のAlphabet:大文字と小文字が漢字や数字よりも妙に書いてておもろかった。 

  1. 中学高校時代:吉川校長先生のラテン語と英語。Dictation(口述筆記)という試験。 

  1. 祖父:早稲田大・英文科卒で、夏休みには大阪から名古屋に帰省して英語の勉強を見てもらった。その時の祖父は名大、名工大受験者に向けた受験塾の英語教師をしていた。それまでは旧制中学の英語教師で、あの敵国の言語と敵視されていた時代に「英語」を?加えて野球部の部長を務めておられました(熊本中学で)。なので野球の早慶戦はラジオそしてTVと一大行事だった。タバコの代わりにペンを口に銜えて慌てていた姿を今でも思い出す。照れ隠しでしょうか、「タバコは配給で配られてきたから吸うようになっただけ」なのだ。そして「雄志、漫画はなぜ面白いか?」---自分と無関係だからだなどと煙に巻かれた。 

  1. 大学受験:英語だけは成績が良かった。だけど、大阪外大という選択肢はゼロだった。これを指導されていたら人生変わっていたやろなー。後に阪大に吸収されたことが妙な感じで、海外特別選抜試験でここを受かって卒業していた息子夫婦は「面白くないなー」と。司馬遼太郎さんも含めて、そら、そーやろな。 

■ドイツ語(河辺先生)との出会い:

先生曰く「私は、有機化学は分かりません。だけどこのドイツ語文章からは、コレコレこういう順序で反応が起こる、と書かれています。皆さんどうですか?」はとてもインパクトがあった。こんな理論整然とした言語を日頃から話しているドイツの方々が不思議でした。僕は英語に訳して理解していた。ドイツ語との出会いは、特に日本語のあいまいさを認識するようになった。 

 

■英語表記への拘り:

Science用語はカタカナ表記するよりも原語表記する方が色んなことが分かる 

点にように思う。例えば、 

  1. ニコチンアミドモノヌクレオチド:これをNicotinamide mononucleotideと表記すると、少なくとも二つの生体成分に帰属することが推測できる。加えて、見たらわかる、はカタカナ表記では伝わらない。 

  2. エストラジオール:この表記では、エスト-ラジオールなのか、エストラ・ジオールなのか分からない。Estradiolと表記すると少なくともdiol(オール、OH基が二つある)構造体であることが分かる。 

  3. テストステロン:Testosteroneという言語の内、testoはTestis(睾丸)に、steroはSteroid(ステロイド)に、そして最後のoneは二重結合を、それぞれ意味する。なので、ステロイドで、どこかにケトンが男性と関係の強いある化合物であることを類推することができる。 

このように、植物、細菌などは勿論、医学生理生化学関係の用語をカタカナ表記すると化合物の基本構造を全く類推できない。ましてや、生体現象の理解のベースなど類推できるわけがない。などなど科学教育上きわめて不具合ではないでしょうか。現にラボでは多くのラテン語系言語が飛びかっています。---というような想いを根底に次の話へと移りたいと思います。

 

Episode1に続く