石を扱う同業者のコンパに呼ばれた。

いつもは頑なに断っていたがそろそろ出席しなければと空気を察し出席した。

 

そっと行って そっと1番下座の端に座り 目立たないように手酌で瓶ビールをグラスに注ぐ。

 

誰かと目が合う度に「珍しい奴が来たな」と思われてる・・・

視線が痛い。逃げたい。

遠い席からこちらをチラチラ見ながら話しているのを見ると「私の事をヒソヒソ話してる 」?

実際には自分が思っているほど他者の関心はないのだろうがちょっとした被害妄想。

動揺すると挙動不審になるから動揺を隠そうと平静を装うが小さな所作が挙動不審になってるかもしれない。キリがない。

いつもニコニコしているから愛想良く思われるが人付き合いが好きな訳ではない。

本当は陰に隠れたい。愛想良いのは他人のヘイトがこちらに向かない様にする私のパッシブスキル。

人と接するのは苦手だ。 好きではない。

 

宴もたけなわ

野郎共が幽霊や怪奇現象の話を大げさに語る。

廃病院や廃校で白い影を見た!

気味悪い声がした!

 

ガキの飲み会か? 全く興味もない。

雑念が多い大人には夏夜の体感を下げるにはキンキンに冷えた生ビールの最初のひと口の方が特効薬となる。

 

皆ほろ酔いで席順が崩れる。

滅多に飲み会等会合に出席しない私に気を遣っているのか入れ替わりで誰かが会話しにくる。

私はまるで隠れる場所を失ったレアキャラだ。

 

隣に来た女子に

「コバさん  幽霊はいると思う?」と聞かれ

私は「どうだろうね」と笑顔で答えるのだが否定や肯定しているわけでもない。

この隣にいる女子が幽霊かもしれないし、実は自分自身が霊体かもしれないではないか。

もしかしたら…もしかしたら…

あ・・・・何かにログインしてしまった私

隣の女子が口をパクパクと私に何かを言ってるのは分かっているが聞こえない。

 

若い頃 バイクで直進中、急に右折車が飛び出して来て激突した。

バイクが大破するほどの酷い事故だった。

なのに私は少しの擦り傷と臀部の打撲だけ。

誰が呼んだか救急車が来た。

イテテとケツを摩りながら平然と歩くほぼ無傷の私に周囲は驚く。

右折車に突き刺さりグシャりとなり鉄の塊と化したバイクを見て私は思った。

これって…絶対に命落としていたよな…

警察と事故検証している私。

 

少年期、川で友人が溺れて助けに行った。

パニックになった友人はこの世のものとは思えない形相で私にしがみつき暴れる。

泳げないくせに何だよこのクソみてーな力は!

水中に引きずり込まれる!

水中から水面を見るとは私を踏み台にして水上に浮上している歪んだ奴の顔が見えた。

こいつは河童だと思った。

 

ビジネスマンの私、事故った私、溺れた私、石屋になってる私

どれが本物なのだろうか…

 

それは全て現実で本物。

私はパラレルワールドは信じる派である

 

パラレルワールドや異世界に飛ばされた自分の体験話をするとエキセントリックな奴だと思われてしまうだろうな。

 

「ねぇ!コバさん! 聞いてる?」

隣の女子の声が聞こえる。

 

うん。 見えるし聞こえてる。

 

 

過去の話に戻ろう

糸魚川のビジネスホテルでチェックアウトの際、夜勤のオヤジさんから姫川薬石を貰った。

もっと欲しければ姫川に行けば拾えますよ と教えていただいたので姫川河口に行った。

何処で見たような景色だった。

はて? 何処だ?

幼いころ見た景色・・・思い出せない。

デジャブ

ビジホのオヤジさんから貰った薬石と何度も見比べながらいくつか拾い持ち帰った。

 

拾っている時は大きく見えなかった薬石は家に持ち帰ると部屋のスケールに合わず巨大だ。

浴槽に入れたいのでハンマーで拳大に砕いた。

堅く苦労した。

破片は鋭利で脆く割れやすいので洗濯ネットに薬石を入れて浴槽に沈め入浴した。

お湯がトロけてる。

湯上がりポカポカ。

なるほど。やはり効いてる気がする。

 

この石はいったい何だろう?

何ていう名の石だろう??
もっと知りたい。

気になって眠れない。

 

帰って来たばかりなのに翌日また400km先の糸魚川に向かい走っていた。

途中、先日泊まったビジネスホテルに3泊の予約をとった。

 

次回に続く