1996年

私が初めてブラックバスを釣ったクランクベイトのルアーとアウトドア用に購入した安価な腕時計、そして山で拾った水晶


意識している訳でもないが、今でも捨てず置いてあった

今から26年前  10月
私は寒さが厳しくなる前に長野県 甲武信岳に水晶拾いに行った

水晶採取ではなく水晶拾いだ

収集家が採取し要らない水晶を捨てていくのだがその水晶が道端の泥に埋まり、ズリ水晶(廃棄水晶)になり私の様な素人でも拾う事ができた

御守りに国産水晶が欲しかっただけなので容姿が悪かろうが自分で拾った天然水晶である事は疑いようもなく私には欠けたような水晶で十分だった

ほんの数個の水晶を拾いティッシュに包みジーンズのポケットに放り込む

甲武信岳を後にしその足で当時流行だったブラックバスフィッシングをやるため野尻湖に行った

関東圏の色々な湖や池に釣りには行ったが私はまだブラックバスを釣ったことはなかった

私にとって釣りは入れ込む程の趣味ではない
せめて一匹! と、ほぼ無気になってるだけ

野尻湖で黙々とそして闇雲にルアーを投げる事2時間ほど

また釣れねーのかと半端諦めた時だった

経験した事ないヤバい手応えが竿から腕に伝わる

まさか! これか?!  これがバスの手応えか!?

興奮してゲームを楽しみ味わう事も忘れ超高速にリールを巻き上げた

素人まるだしである

幸いバレる事もなく初めてのブラックバスを引き揚げる事が出来た

30センチ程のバスを一頻り眺めてリリースし、その後、何投しようがあたりもなく陽が暮れチープな腕時計は蓄光機能を果たしていた
帰宅後、投げ過ぎてボロボロになった記念すべきブラックバスを初ヒットさせたクランクベイトをルアーケースに納めていると旧職場の友人が遊びに来て雑談の途中、以前私が就職していた職場の先輩が亡くなったと知らされた

私は言葉を失った


その先輩は私より20歳位歳上で、口喧嘩を最後に私は退社しその後会う事はなかった

今思えばくだらない喧嘩で悪いのは私だ

私と先輩は会社の寮に住んでいた

その寮は築年数50年位あるであろうゴキブリ、ムカデ、ネズミが頻繁出現する木造の汚い寮だった

現在よくある機能的かつプライベートが保てるワンルームタイプではなく四畳半に2人が同居しトイレ、風呂、洗面所は共同で古いマンガに出てきそうな学生寮のような感じだ

先輩とは歳もひと回り以上違うし部屋も勤務していた支店も違うが朝、寮を出る通勤時間が同じ為、否応無しにほぼ毎日顔を合わせるという挨拶程度の人間関係を続けていた

さほど親しい間柄ではないが唯一の共通点はお互いバイク乗りだと言うことだろうか

寮の入り口には私と先輩のバイクが並び、会うとよくバイクの話をした

当時私は最新のスポーツバイクに乗り峠を走り回り粋がっていた

先輩はスピードも出ないクソ遅いロートルバイクを所有し、休みの日はボロいバイクを一日中磨いていた

私はよく言った「そんなボレ〜バイク捨てて新しいバイク買えばいいじゃん!」

(全くクソガキだな😅)

先輩は「エンジンが鼓動する」「音が染みる」「スピードはいらない」
「あと2、30年すればオマエも分かるさ☺️」
いつもニコニコして言う

ある日先輩は一冊の小説を「これ読んでみ。読めばきっとこの「W」が好きになるさ😊」
と私に本を手渡した
【Wとは先輩のKawasaki  W1と言うバイクの愛称】

この頃の私は少年漫画の活字以外には興味もなくその小説は部屋の押し入れの新しいガラクタになっただけだった


ある日、先輩のバイクに勝手にまたがりタンクをベタベタ触りながらいつもの様にこのボロバイクをディスった
ジャレてふざけたつもりだった

先輩の顔色と形相がみるみる変わり
「何勝手に乗ってんだ!」
「テメーなめてるのか!」
今まで見たこともない凄い剣幕で私に凄む
こんな先輩見たことない
たじろぐ私

バイクから降りるや刹那私は胸ぐらを掴まれめちゃくちゃ怒られた

毎朝会うのも気まずい

そのうち馬鹿で血気盛んな私は毎日逆ギレ状態


その出来事は私がその会社を退社した原因でもあった


あれから20年以上経った

今ははっきり言える
わかる

あのボロバイクは先輩の一部

私は馬鹿だ
私が悪かった

先輩から渡された小説を読んだのは最近の事だ

Wのエンジンはバーチカルツインと言う
そして鼓動
生きている

小説に描かれているWは脇役や無機質な道具ではなく主役だ

頭から離れない

小説には信州が出てくる
長野県だ


なんかリンクしていく

私の目の前に長野県の水晶と長野県で初めてブラックバスを釣ったルアー


そしてつい最近、長野県のバイク店  カワサキプラザにふらっと立ち寄った

え!!
まさか!
これって!!
【W 】だ!

先輩のWとは色は違うがこれだ

当時のクラシカルな雰囲気はそのままの来年2021年仕様の最新型らしい

私はスタッフに聞いた「このエンジンは?」

スタッフ「バーチカルツインです」

「この新型の発売日は10月1日です」

速攻見積もりを頂き帰宅する

よし!
私は糸魚川で天然石を加工する石屋
先輩のいた会社を退社してなければ石屋になっていたかはわからない

石に聞いてみよう









私は今こうして石を磨き生業としている

買うしかねーらしーな🏍