※和意谷池田家墓所「五のお山」案内標柱
※和意谷池田家墓所「五のお山」池田茂政公、正室万寿子の墓所・・・向かって左（奥）が茂政公、右（手前）が万寿子の墓です
池田茂政公、万寿子の墓
戦国武将の墓・供養塔シリーズ
戦乱の時代は、おおまかに言うと応仁の乱(１４６７年応仁元年）から大坂の陣(１６１５年）までで３つのカテゴリに分類されると思います。
1️⃣戦国時代
応仁の乱(応仁元年１４６６年）から室町幕府の滅亡、織田信長政権の成立(天正元年１５７３年）
2️⃣安土・桃山時代
織田政権(天正元年１５７３年〜天正１３年）豊臣政権(秀吉関白宣下天正１３年〜慶長８年１６０３年）
3️⃣江戸時代
徳川政権(家康征夷大将軍宣下慶長８年１６０３年〜大坂の陣豊臣家滅亡、慶長２０年１６１５年）※慶応３年１８６７年大政奉還で、江戸時代は幕を閉じます
この３時代に活躍した大名、武将の墓、供養塔を調べ、訪問した記録を残したいと思い、このシリーズを立ち上げます。
備前岡山藩主９代池田慶政公、正室万寿子
池田従四位上左近衛権少将茂政・・・１８３９年(天保１０年)〜１８９９年(明治３２年）
正室万寿子・・・嘉永元年(１８４８)〜明治元年(１８６８)(岡山藩８代池田慶政の長女）
岡山県備前市の和意谷池田家墓所の「五のお山」に池田茂政公、正室万寿子の墓があります。
池田茂政は、８代藩主池田慶政の長女の万寿子と結婚し、婿養子となり、９代藩主となりました。
「和意谷池田家墓所」に葬られたのは、家祖輝政公、藩祖利隆公、初代光政公、８代慶政公で、２代綱政以降７代までの藩主は綱政が創建した禅宗寺院「曹源寺」に葬られています。
茂政は、養父である８代藩主慶政に倣い、池田家代々の墓所として、初代光政が造営した和意谷池田家墓所に葬られることを望み、亡くなったと言われています。
その理由としては、茂政は、水戸徳川家の出身で、儒学に傾倒していたこと、並びに初代光政を尊敬していたこと、明治時代の廃仏毀釈などにより、菩提寺としての曹源寺が衰退したこと、明治時代になり、「池田家」が天皇家の直臣になったことが挙げられます。
それでは、「池田茂政、万寿子夫妻」の生涯を辿ってみたいと思います。
※和意谷池田家墓所「五のお山」池田茂政公墓所入口・・・厳重に施錠されており、中に入ることは出来ません
※和意谷池田家墓所「五のお山」池田茂政公墓所・・・一から四のお山と同じ儒教式の墓所で、円墳の前に巨大な方柱墓が建っています
①池田茂政公、正室万寿子墓所(五のお山和意谷池田家墓所）
池田茂政は、明治３２年(１８９９)岡山城で亡くなられ、和意谷池田家墓所五のお山に葬られます。
正室万寿子は、文久３年(１８６３)、８代岡山藩主池田慶政の跡を継ぎ、婿養子として、水戸徳川家９代藩主斉昭の９男茂政を迎え入れる形で結婚しました。
尚、万寿子は、２０歳で早世(自害した説あり）したため、二人の間には子供は出来なかったようです。
和意谷池田家墓所「五のお山」にある茂政公、万寿子の墓は、一、ニ、三、四のお山と同じく儒教式の墓所で、円墳の前に大型の方柱墓が建っています(輝政公墓にある亀趺はありません）。
「五のお山」は、向かって左(奥）に茂政公墓、向かって右(手前）に万寿子墓があります。
墓域は石製玉垣に囲まれ、中央に小山のような円墳があり、その前に巨大な方柱墓があります。
方柱墓の前に石扉があり、茂政公墓は、厳重に施錠されていて、中で参詣することは出来ませんでしたが、万寿子墓の石扉は壊れていて、中に入ることができました。
万寿子墓の扉は壊れていて、無造作に、脇に置かれていました。
五のお山にも、四のお山同様、藩主の事績を刻んだ大型の傘型板碑がありません(もう、大名家の権力の無い明治時代だったからでしょうか）。
茂政公櫛形墓には「麝香間祇候従一位勲二等池田茂政公之墓」と法名でなく、生前の官位名が刻まれています。
池田茂政は、幕末時は「従四位上左近衛権少将」でしたが、明治になると、維新の功労者に与えられた「麝香間祇候」という「従一位」に相当する位階を明治天皇から与えられています。
正室万寿子墓には、「少将兼武蔵守源朝臣室家池田氏之墓」と万寿子の出身が「池田氏」であることが分かります(しかし、「源氏」ではない…）。
※和意谷池田家墓所「五のお山」池田茂政公墓所入口・・・入口の扉が壊れ、玉垣の前に無造作に置かれています
※和意谷池田家墓所「五のお山」池田万寿子墓所・・・一から四のお山と同じ儒教式の墓所で、円墳の前に巨大な方柱墓が建っています
扉が壊れ、「全開」状態になっており、中に容易に入れますが、あまり、しげしげ眺めているとまた、「無礼者！！！」と言われそうですので、拝んだ後、早々に退散致しました
②池田茂政、万寿子の生涯〜出自、家督相続
「岡山藩池田家」の墓所は、「和意谷池田家墓所」と、「曹源寺池田家墓所」に分かれています。
家祖輝政公、藩祖利隆公、初代光政公、８代慶政、９代茂政は和意谷池田家墓所、２代綱政〜７代斉敏までは曹源寺にあります。
なぜ、このような「大名墓所」になったのか？
通常、大名墓所は歴代藩主が同一の場所に葬られるのが通常ですが、もちろん違う場合もあります。
大名によっては、「国元」と「江戸」に墓所がある場合があります。
藩主が国元(領地）で死去された場合は、国元の墓所、江戸で死去された場合は、江戸の墓所と、江戸時代の大名家は国元と江戸(東京）に墓所があるのが「通常」で、歴代藩主が揃って葬られていない「例」は多くあります。
しかし、国元に二箇所正式な「墓所」のある大名家は、特殊です。
その背景は、和意谷池田家墓所を造営した池田光政と禅宗寺院曹源寺を造営した息子綱政の「宗教観の違い」に起因しているのです。
曹源寺墓所には、２代〜７代の藩主が葬られ、「事実上岡山藩池田家墓所」として機能していたにもかかわらず、なぜ、茂政は養父である先代藩主慶政同様に、「旧墓所」扱いだった「和意谷池田家墓所」に葬られることを望んだのか？
それには、慶政と同じく茂政の「出自」が関係していると思われるのです。
茂政は、「婿養子」として藩主になりました。
茂政の出身は、親藩大名で御三家「水戸藩主徳川家」です。
では、なぜ一見、池田家と関係なさそうな「御三家水戸家」から養子になったのか？と疑問が湧きます。
茂政自身が、池田家の血脈をひいた「子孫」なのか分からないので、茂政の「血統」について、念の為、検証してみます。
池田茂政父系
①池田茂政→
②水戸徳川家９代藩主斉昭→
③水戸徳川家７代藩主治紀→
④水戸徳川家６代藩主治保→
⑤水戸徳川家５代藩主宗翰→
⑥水戸徳川家４代藩主宗堯→
⑦讃岐高松藩３代藩主松平頼豊→
⑧讃岐高松藩松平家一門衆松平頼章→
⑨讃岐高松藩初代藩主松平頼重→
⑩水戸徳川家初代頼房→
⑪徳川家康
父系について、辿ってみると、池田茂政は、徳川家康から数えて１１代目の「徳川男系子孫」で、池田家とは関係が無さそうです。
母系についても、検証してみました。
池田茂政の母は「松波貞子」と言い、徳川斉昭の側室です。
母、貞子は、側室と言っても、京都の公家日野氏の一族である「地下松波氏」の出身で、鎌倉後期まで遡る「名家」でもあります。
しかし、父系、母系とも、池田茂政は、池田家とは直接的な「血縁関係」は無いと思われます。
万寿子については、「婿養子池田慶政」と「池田宇多子」の間の長女ですので、「池田家の女系子孫」になります。
万寿子の母である宇多子は、慶政との間に、万寿子以外の子供はいなかったようです。
池田慶政には、他に息子が２人いましたが、「宇多子との子供」ではないため、池田宗家を継がせるには、血統背景が薄いと考え、２人を養子に出し、「娘の」万寿子に跡を継がせました。
万寿子は、様々な事情があったと思われますが、水戸徳川家から茂政を「婿養子」として迎えることになりました。
文久３年(１８６３)、茂政２４歳、万寿子１５歳でした。
③池田茂政、万寿子の生涯〜岡山藩主夫妻として
茂政は、婿養子となり、正式に９代藩主に就任しました。
茂政は、実父である水戸徳川斉昭がバリバリの「尊皇攘夷派」だったため、その影響を受け、自身もバリバリの「尊皇攘夷派」でした。
この時代の(幕末時）岡山池田家の一族である、鳥取藩主は、実兄(斉昭５男）でこれも婿養子として藩主となっていた「池田慶徳」でした。
池田慶徳、池田茂政とも、水戸徳川斉昭の子で、兄に有名な「徳川幕府１５代将軍徳川慶喜」がいます。
岡山藩主の茂政は、常に一族且つ、実兄が藩主である「因幡鳥取藩」と常に行動を共にします。
茂政は、水戸藩が強く主張していた「天皇主体の公武合体」を同じく、強く主張していました。
当初は、「倒幕」の中心だった毛利敬親の「長州藩」に対して好意的でしたが、「禁門の変」を契機に中立の立場をとるようになります。
しかし、二度に亘る「長州征討」に関しては、「攻めに行くフリ」をしています。
慶応３年(１８６７)、徳川１５代将軍慶喜は、「大政奉還」を行います。
明治天皇が即位し、明治時代にはいると茂政は、尾張徳川慶勝とともに京都に呼ばれ、慶応４年(明治元年、１８６８)、「王政復古の大号令」により、徳川幕府（慶喜）討伐が命じられます。
茂政は、朝敵であっても、実の兄である慶喜を討伐することは出来ないと思い悩んだ末に、「病気」を理由として、家督を養子にしていた「鴨方藩主池田章政」に譲り、隠居してしまいました。
維新後は、「楽山」と号し、能楽の普及に努めています。
明治３２年(１８９９)死去。
享年６０歳でした😭
④池田茂政の家族、子供たち
１.正室 万寿子(８代池田慶政長女）
２０歳の若さで死去され、茂政との間の子供はいませんでした。
２.長男 池田勝吉(母、側室）
３.次男 西尾勝順(母、側室）
４.次女 鄰子(母、側室）
実業家で、次の一万円紙幣のモデル「渋沢栄一」の三男渋沢正雄の夫人になります。
長男て実業家の正一を産みました。
５.四女 恒子(母、側室）
元公家で、政治家となった堀河護磨の夫人になります。
６.五女 隆子(母、側室）
岡藩１３代藩主中川久成の養子となった中川久任の夫人になります。
７.養子 章政(備中鴨方藩９代、のち備前岡山藩１０代）
天保７年(１８３６)〜明治３６年(１９０３)
章政は、備前岡山藩最後の藩主となります。
養父茂政は、２人の男子がいましたが、母が側室で、「池田家との血縁関係」が無いため、跡継ぎにしませんでした。
章政は、肥後人吉藩主相良頼之の次男として生まれました。
なぜ、章政が茂政の「跡継ぎ」となったのか？
章政は、れっきとした「池田家の男系子孫」なのです。
血統を検証してみます。
①池田章政→
②相良頼之(人吉藩１３代、父、相良頼徳、母側室）→
③相良頼徳(人吉藩１２代、父相良長寛、母、側室）→
④相良長寛(人吉藩１１代、父池田宗政、母、正室福岡藩６代黒田継高の長女藤子）→
⑤池田宗政(岡山藩４代、父池田継政、母、正室仙台藩５代伊達吉村の次女村子）→
⑥池田継政(岡山藩３代、父池田綱政、母、側室幸品）→
⑦池田綱政(岡山藩２代）→
⑧池田光政(岡山藩初代）→
⑨池田利隆(岡山藩藩祖）→
⑩池田輝政(岡山藩家祖）
池田章政は、輝政から数えて「１０代目の男系子孫」となります。
人吉藩１１代相良長寛は、岡山藩４代藩主池田宗政の次男で「人吉藩相良家」の養子となりました。
章政は、長寛の曾孫に当たる人物です。
「その後の池田家」については、次回の「六、七のお山」の投稿時に説明させて頂きますので、宜しくお願い致します。
長くなり申し訳ありません🙇
続きます🙇
最後まで読んでいただきありがとうございます🙇
