飲んで帰ってきたら、部屋中が砂糖だらけになっていた。
買い置きの砂糖をミルクが噛み千切ってばら撒いたらしい。
迂闊だった。
あたしは激しくミルクを叱った。
ばしばし叩いてしまった。
けれども、ミルクはそんなあたしに向かって
怯えながらもゴロゴロ言って、困惑した顔をしている。
ハッとしたあたしは慌てて泣きながら、何度もミルクに謝った。
ミルクはゴロゴロ言いながら、擦り寄ってくる。
あたしはなんて酷い人間だろう。
ミルクはずっと、『おかえり』を言っていたのにね。
いきなり怒ったあたしは『ただいま』も未だだった。
ゴロゴロ言いながらも悲しい声で鳴いていたミルクは今、
あたしの膝で眠っている。
もう叩かないから。
もっと大事にするから。
ずっと、ずっと、傍にいて。
ずっと、ずっと、傍にいるから。
君が砂糖をばら撒いても笑って許してあげれる寛大な人間になるから。
溶けた砂糖でベタベタの床に座ってあたしはいつまでもそう呟いていた。