台所でひときわ芳香を放つのは浅黄色の花梨(かりん)の実(写真)。
このバラ科の実は拳(こぶし)大の形で、
梨の仲間のラフランスを思わせちよっとかじってみたくなるが、
なぜか食用には向かない。
花梨酒にしたり、
また漢方薬にも利用されるらしい。
花梨なんて洒落(しゃれ)た名前は、
人の名前にも使われたりしている。
以前東温市の小高い山に上ったとき、
花梨の実を見つけてあなたは駆け寄った。
高く手を伸ばしても届かないので、
青空に向かって大きく溜め息をついたのを憶えているよ。
持っていたガラケーで幹に凭(もた)れた写真だけを撮ったね。
その写真は引き出しの中で眠るケータイに保存されているけれど、
今も色褪(あ)せないままだよ。
浅黄色の花梨は今も台所で爽やかな匂いを放っているが、
うなじの仄かな香りのオーデコロンはもう替えたのかい。
おっと訊くだけ野暮だね。
あなたの心は私から見れば薄蒼い浅葱色だから。
by 啐啄(そったく)童子
芸術の秋夜長の秋
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