良ちゃんは何も言いません・・・
聞こえてきたのは、深い溜息だけ・・・
目の前で様子を伺っていた奈月さんはと言うと・・・
目をまんまるとさせ、今にも電話を取り上げそうな勢いです。
奈月の顔を見ることもできず、
自分が何を言ったのかも良くわからず、
ただ、今電話を持っている左手が震えていることを
気付かれないように、冷静を装うのに必死でした。
良ちゃん:『オレがMちゃんに言ったとか
言ってないとか関係無しに、
お前はどうしたいわけ???』
どうしたいって・・・
はっきり言って、この時のhimeは、冷静さを失っており、
こんな簡単な(?)質問すら理解出来ませんでした。
ただ、質問を投げられた以上、
返さなきゃ!って思いでいっぱいで、
何か言わなきゃって気持ちに襲われていました。
それで、出た言葉が、
hime:『himeと別れて、先輩と付き合いたいんでしょ?
なら、そうしていいよ。
himeは全然気にしないから。』
でした・・・
この時、himeの頭と口と心は、全く別々に動いていて、
ナンデこんなこと言っちゃったんだろ・・・
って後悔に襲われるのは、
この後、ずっとずっと後のことです。
このときは、そんなこと全く感じず、ただ、
考えもせずに出てくる言葉を、
ただ発してるだけでした。
良ちゃん:『なんだよ、それ・・・
人のせいにした言い方すんなよ。
お前がどうしたいか聞いてんだろ
答えろよ』
良ちゃんの口調も徐々に強くなっていきます。。。
目の前の奈月も、もぉ手に負えないって感じで、
窓の外を眺めています。。。
耳は、しっかりこちらの会話に向いているようですが・・・
良ちゃんの『答えろよ』って言葉はショックでした。
普段の良ちゃんは、穏やかな人です。
そんな人が、こんな言い方するなんて・・・
小学生が先生に怒られているような、
そんな気持ちになってしまい、もぉ、
あと一押しで涙が出るのは間違いありませんでした。
そんなことは電話で話している良ちゃんに伝わるはずも無く、
次に聞こえてきたのは、
先ほどとは比べ物にならないほど
深く切ない溜息だけでした・・・
そして、
聞こえてきたのは・・・
『だいたいこんな話、電話で済まそうとすんなよ・・・
帰りにまた連絡するから、
落ち着いて話そうぜ・・・』
そう言うと、himeが返事を言う前に、
ツーツー
と、何とも虚しい機械音が耳に響いてきたのでした・・・
電話を切ると、奈月も何も言わず、長い長い沈黙が続きました。
重い空気の中、その沈黙を破ったのは、
偶然現れた穂高でした。。。