<僕は隣りの夫婦づれの低い話声を耳に挿さんだ。
「いま、向うの山に白い花がさいてゐたぞ。なんの花けえ?」
「あれは辛夷こぶしの花だで。」
僕はそれを聞くと、いそいで振りかへって、身体をのり出すやうにしながら、そちらがはの山の端にその辛夷の白い花らしいものを見つけようとした。いまその夫婦たちの見た、それとおなじものでなくとも、そこいらの山には他にも辛夷の花さいた木が見られはすまいかとおもったのである>
堀辰雄 辛夷の花より
4月23日
只今1度!!!
寒さに負けずに咲くコブシの花が頼もしく愛らしい(^^)