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if…scene11〜
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『来月の卒業式まで、問題起こさんと、おとなししとけよ!』
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担任にそう言われたにも関わらず、「よし、じゃあ今日これからカラオケ行くか」「明日から、俺教習やん」
もう、遊ぶ気まんまんな俺ら。
高3の2月。
『自宅学習期間』それは受験するやつらだけに当てはまる。
俺の周りにそれが当てはまるやつは、残念ながら皆無。
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就職決まってるやつ、専門行くやつ。
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このメンバーで遊べるんも後少し、ってなったら、もう必死で遊ぶ!に限る。
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「彰吾!私、今日はバイト休みやから、また明日の夜な」
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「おん、また明日」
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「ばいばい」
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小さく手を振って真っ白のマフラーに顔を埋めて、円と出てく背中を見送った。
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相変わらずな関係。
毎日会うし、この頃には、たまに2人で古着見に行ったりするようになってた俺等。
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「えっ、彰吾それはないわ。似合わん」
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「はっ?」
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修二でもそこまではっきり言わんのに、コイツは…。
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「こっち!彰吾はこっちやって!ほら、着てみ?」
嬉しそうに洋服を持ったまま、俺を試着室に追いやる。
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『ほんまや、これええやん』
小さい箱の中、鏡に映る自分はいい感じ。
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「ほら、やっぱ似合うやん。めっちゃいい」
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そんな褒められたら、もう買うしかない。
今月、金ないんやけどな…。

でも明日美のセンスは俺も信用しとる。俺の好みをよーわかっとる。
…それが、嬉しかった。
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『また明日』それが当たり前。
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やのに…その日の『バイバイ』が、最後。
普通すぎて、思い返すのもやっとな位な、ありきたりなやりとりやった。
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3月1日。
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卒業式に、彼女はいなかった。
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いつもの時間に明日美はいなくて、俯いて修二に肩を擦られながら教室に入ってきた円。
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「円?…どした?…明日美は?」
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「…わからん」
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「はっ?」
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「お母さん、亡くなったって。やから、卒業式はいかわれんって、それだけ連絡あって。
家行ったんやけど、誰もおらんくて。何回も連絡したんやけど、電話もLINEも繋がらん」
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『親友やと思ってたのに、悔しい』 って泣く円。
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「そんなん…ないやろ」 
繋がるとは思えんかったけど、何度も鳴らした明日美のスマホ。 
呼び出し音は途切れる事はないまま。
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いなくなって気づく。 彼女の存在の大きさ。
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明日美のいない卒業式。
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『本藤明日美』
担任が名前を呼んでも、返事はない。 
ぽかんと空いたパイプ椅子。
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何が彼女に起こったんかも詳しくはわからん。 
お母さんが亡くなったって事実だけしか。 
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あいつの口から、家族の事なんて聞いた事なんかない。
っていうか、今になって気づく。
俺、明日美のこと何も知らんって。
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周りの話しを『うんうん』って聞いてるけど、自分のことはあんまり話をしてなかったな…。
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『古着が好き』『好きなおにぎりは、ツナマヨと明太子』『体育が苦手』『お昼寝が好き』 そんな事しかしらん。
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好きなものは知ってる。
楽しそうに笑ってる顔は知ってる。 
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でも、泣いてるとこは見たことない。
負の感情を表に出してる明日美を、俺は知らない。
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『言えなかった』
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『言わなかった』
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どっちかなんてこの際どうでもいい。
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『明日美にもう2度と会えない』
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そんな気がした。
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...next
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『言わなかった』明日美ちゃんの事情は次回。
himawanco