.

.

『幸せの青い鳥』

.

.

.

それを追いかけて辿り着いた場所は、悲しくて温かかった…。

.

.

.

.

.

.

.

.

.

Hummingbird〜scene1〜

.

.

.

『迷信じゃなかったのかも…』

.

.

カーテンレールにかかるサンキャッチャーの煌めき。フローリングにキレイな水色が浮かびあがる。

.

壱馬と作ったシーサーは、玄関に。

.

.

新しいアパートを探しに行った不動産屋さんで、これからケーキ屋さんを始める予定でって、そんな話しをしたら『ちょうどいいとこあるよ』って紹介してもらった空テナント。

.

.

住宅街の中にぽつんとある、元々はクリーニング屋さんだった場所。

.

.

私が『こんな感じで』って思ってたぴったりの場所と、広さ。

.

.

「なかなか買い手がつかないから、家賃だいぶ下げてて」

…ほんとに？

こんな好条件ある？って位で。

.

.

「ここにします! お願いします！」

あっけない位一瞬で、私の夢への一歩目は決まった。

.

.

『オーブンと冷蔵庫は、うちの小さいのを持って行ったらいいよ？ライムがいなくなったらもう、後は2人でのんびりやってくだけだから』

ってオーナーのおじちゃんおばちゃんは、『餞別変わりに』って厨房機器を譲ってくれる約束をしてくれて。

.

何か全てが上手くいきすぎてちょっと怖い位で。

.

.

「あっ、そうそう。ライム？ちょっと紹介したい人いるんだけど。ライムのお店を雑誌にって…うちの姪っ子なんだけど」

.

「えっ？」

.

「新しく始めるお店を、何もないとこから追っかけたいらしくて。ライムの話しをして、シュークリームをこないだ食べてもらったんだけど、感動してたよ？『こんなおいしいの食べた事ない！』って。

是非、取材させて欲しいって。…どうかな」

.

.

「えっ、や…でも」

.

.

急に聞かされたその話しにうまく反応できなくて。『まぁ、今度うちに来るから、その時に会って話し聞いてみたらいいよ。そんな、力入れなくても大丈夫だから』って。

.

.

社交的とはとてもじゃないけど、言えない性格だし。思ってる事を言葉にして伝える事も得意じゃない。

.

雑誌で見るようなオシャレな感じのお店にする予定でもない。小さい子が、お小遣いを握りしめてお店にやってくる…そんなお店にしたかったから。

.

.

『すみません』って断ろう。そう思ってた。

.

.

.

.

出版社の人との約束の日。

.

.

「こんにちは、お世話になります」

.

入口のドアが開くと一緒に聞こえてきた、はっきりと大きな声。

.

「おぉ、来た来た」

.

おじちゃんが立ち上がって「こっちこっち」って手招き。その視線の先、ドキドキしながら立ち上がって振り返ると、その人とパチって合った視線。

.

.

.

「「あっ」」

.

.

.

お互い、同じタイミングで発せられた音が重なった。

.

.

.

.

…next

.

.

.

覚えてくれてますか？この彼女。再登場。

後半はじめまーす。 himawanco