昨年7月。
家をリフォームすることが決まって、荷物の整理が始まった。
今のマンションに引っ越して40年。今の部屋に来て30年。
たまった。たまった、
ガラクタは、山のようにたまっていた。
人一倍、捨てられない性格。
子供の物だけでも、ランドセルから図工の作品、日記帳、幼い頃描いた絵まで色々… 保存していた。
でも、これらも、ほとんど処分。
自分の物はまだなんとかなる。
思い切れば、いいのだから。
バンバン捨てた。
服も靴も思い出の品も、写真を撮って捨てた。
でも、
夫の物は違う。
亡くなってまだ1年ちょっと。
何もかも、決心がつかなかった。
いわゆる世間一般で言う終活、断捨離と違ってリフォームなので、工事日程がはっきり決まっている。
引っ越し業者が来る日までに、すべて箱詰めを終わっていなければ…
当たり前だけど、荷物は多いほど料金はかかる。
最初に処分しなくても、リフォーム後の収納スペースは、格段に減るので、実際問題として入らない。
お金をかけて、箱詰めの手間をかけて運び回って、結局最後は捨てる。
ならば、最初に処分した方がよい。
それは、もう強迫観念となって、いつも心から離れなかった。
一度残した物も、また見直して処分。そしてまた処分。
そんなことを何度も繰り返しながら、それでも最後まで、どうしても捨てられない物があった。
その一つは、夫のステレオ。
もう、スピーカーはない。
聴くこともできない。
プレーヤーとアンプとチューナーだけ。
夫の学生時代の物。
夫は当時、オーディオクラブに入っていた。
それぞれ自分のステレオを持っていて、その音質?性能?について、あーだ、こーだとしゃべって楽しんでいたらしい。
そのステレオというのが、実は買ったものではなく、自分で組み立てて作った物。
中学の頃から新聞配達のバイトをして、アマチュア無線をやっていたくらいの機械好き。
学生なのでお金などあろうはずもない。
バイトやすでに社会人になっていた兄達からもらった小遣いで部品を買い集めたらしい。
一間の下宿。
組み立てている間は、片付けることもできない。1日や2日で出来上がるものでもない。
そういう状態が、ずっと続いていた。
これでは、掃除もできない。
ネジの一本でもなくなれば、もう
組み立てられない。
ある日、夫の下宿に行くと、れいのごとく部屋いっぱいにステレオの鉄板とかネジとかごちゃごちゃしたものが散らかっていた (置いてあった)
いつになったら完成するのか?
しげしげとその部品を眺めていると、何かがピヨーンと飛んだ❗
しばらくすると、また飛んだ。
山型にピょ~ンと。
それは、蚤(のみ)だった。
話には聞いたことがあったが、
見るのは初めてだった。
ステレオを見る度に、多分蚤(のみ)にかまれながら、痒い思いをしながら、それでも組み立てたであろう夫のことを思うと、どうしても捨てることができない。