ツイッター連載「肥満ウイルス」まとめよみ

チャプター8−8 DJ



DJは終電の近いJR中央線を新宿方面に向かって乗っていった。


旅行にでも行くのか?

旅行にいくならせっかくの俺の3日の休みが無駄になる。まあ、初日にしてDJ野郎がどんな奴なのか見られたのだから成果はあったのだが。


自分もDJを追いかけて中央線に乗ろうかどうしようか考えて野口は辞めた。

DJがどこに向かっているのかもわからないし、大した所持金もなく終電をのがしたら帰ってこれなくなる。

野口は来た道をアパートに向かって戻っていった。

野口はなんとなく眠れずにいた。

深夜3時半を過ぎた頃だ。

住宅街の中のアパートの近隣は静かだ。 



外にタクシーが止まったのが、わかった。


野口はカーテンの外を見ると、タクシーのトランクが開きDJがタイヤ付きのフレームに乗ったダンボール箱を下ろしているのが見えた。タクシーの中からDJのほかに2人の女が降りて来た。3人はDJの部屋に入っていったようだ。 



それから、しばらくして例の煙草と何かが混じったようなキツイ独特な香りが漂ってくるのがわかった。

そしてシャカシャカとドンドンが始まった。


野口は次の日、アパートのそばのゴミ置き場で週刊誌を2冊拾った。

そこから丁寧に文字を切り抜き、チューブのりでレポート用紙の裏にペタペタと貼り付けた。


「杉なみク高えんじ西 まる山アパート2階の男はヤクブツをやっている」


1文字1文字探して自分の指紋がつかないように貼り付けるのに3時間もかかってしまった野口は、最終的に馬鹿らしくなって宛先は手書きにした。 




「警視庁薬物取締り係御中」


それを近所のポストで投函した。この投書のせいかどうかわからないが、1週間ほどしたある日、杉並署の刑事だという男が野口のアパートにやってきた。


「3階の方についてちょっとお話しを伺いたいのですが・・先月の中頃、夕方不信な物音など
しませんでしたか?ちょっと事件に関することで聞き込みをしていまして」

「いや・・3階からは特には。それより1階からいつも変な薬のような変な匂いがしているんですけど」

「ほーー。そう、1階ね。3階のことは特にわからない・・と。ありがとうございます。じゃあ、もし何か思い出したり気がついたようなことがあったら、ここに連絡くださいね。どうも、おじゃましましたね」


刑事は野口に名刺を渡して帰っていった。どうやらDJのことをチクったから刑事が来たのではなさそうだ。その翌日、パトカー数台アパートの前に停まりものものしい雰囲気の中、3階の学生が連行されていった。


何が起こったのか野口にはよくわからなかったが、その日のニュースで、いつも3階でたむろしていた大学生のグループが、一緒に騒いでいた女生徒にいたずらをした容疑で逮捕されたのだった。


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