バケツでトイレ…“嘔吐”の要求も…昼夜問わず暴行 法廷で明らかにされた常軌を逸した虐待 岡山6歳女児虐待死
10/14(土) 23:32配信
FNNプライムオンライン
2022年1月、岡山市で母親と交際相手の男から虐待を受けた当時6歳の女の子が死亡した事件で、逮捕監禁致死などの罪に問われている男の裁判が10月11日、岡山地裁で始まり、常軌を逸する虐待の数々が明らかになった。
6歳の女児を押し入れに放置…死亡させた疑い
逮捕監禁致死などの罪に問われているのは、岡山市南区築港新町の内装工・船橋誠二被告(40)だ。起訴状などによると、船橋被告は2021年9月、交際相手の西田彩被告(35)と共謀し、西田被告の娘の真愛ちゃん(当時5)の髪を引っ張ったり顔を殴ったりしたほか、長時間、椅子に置いた鍋の上に立たせるなど繰り返し暴行。
そして真愛ちゃんが6歳の誕生日を迎えた翌日の9月25日、真愛ちゃんの全身に布団を巻き付けて、逆さまにして押し入れの中に放置し意識不明の状態にし、約4カ月後の2022年1月に低酸素脳症で死亡させたとされている。
西田被告は、末っ子の真愛ちゃんを含む4人の子どもを育てるシングルマザーで、船橋被告は岡山市内で妻と子どもらと暮らしながら、頻繁に西田被告の家に通っていた。
“見守りカメラ”には常習的な虐待の様子が
10月11日に岡山地裁で開かれた初公判。逮捕時に伸びきっていた髪を丸刈りにしてグレーのスーツ姿で法廷に姿を見せた船橋被告は、「全て間違いないです」と起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で、マッチングアプリで西田被告と出会った船橋被告が、西田被告の生活全般に関わるようになり、真愛ちゃんが家で食事をすることや排せつをすることを制限したり、殴る蹴るなどの日常的な虐待を繰り返していたと指摘した。
証拠の1つとして提出されたのが、船橋被告が西田被告の家のリビングと寝室に設置していた“見守りカメラ”の映像だった。そこには、昼夜問わず船橋被告が真愛ちゃんに行う虐待行為の様子が残されていた。
2021年9月8日から9月25日の映像には、「船橋被告が真愛ちゃんを殴る、蹴る、噛む様子」「真愛ちゃんが椅子に置いたポリタンクや鍋の上に立たされた状態でうずくまって寝たり、バランスをとりながら食事をする様子」「真愛ちゃんが鍋ごと椅子の上から落下するも、再び自ら椅子の上に立ち続ける様子」「真愛ちゃんの顔面を尿の付いた布で強く拭う様子」が映っていた。
また、「真愛ちゃんにどんぶりを持たせ、『ご飯とパン、出して』『指入れて頑張ってね』などと嘔吐(おうと)するよう要求し、真愛ちゃんが自ら口に指を入れる様子や、船橋被告が嘔吐物を確認し、『全然出てないな』と発言すれば、真愛ちゃんは船橋被告が去っても嘔吐を続ける様子」などもあった。
そして真愛ちゃんは、船橋被告からの命令に従い、時には真愛ちゃんが船橋被告を見つけ、ズボンをつかみ直立不動になる姿も残されていた。
その間、母親の西田被告は、虐待されている真愛ちゃんの近くを通過するも、助けることなく船橋被告の虐待を容認する姿が確認された。
さらに、2021年9月25日の映像には、真愛ちゃんが全身を布団で巻き付けられたあとの船橋被告と西田被告の会話が記録されていた。
船橋被告:
扉の中に閉まっとる
西田被告:
きょう(布団で)ぐるぐるだね
船橋被告:
ぐるぐる。ぐるぐるでトンと置いとる
西田被告:
(布団をきつく)絞めてないん?
船橋被告:
あけとる。ゆるめで長期保存考えとるけど、ゆるめだとあいつ暴れるから
睡眠や食事の時間も与えられず続いた虐待は、真愛ちゃんが低酸素脳症で救急搬送されるまで毎日続いた。
弁護側は、虐待の事実関係に争いはないとし、争点は刑の重さに絞られた。
「『なんでーまーちゃん生んだの』と言われた」
10月12日、検察側の証人として、母親の西田被告が出廷した。西田被告は長く伸びた黒髪を1つに束ね、うつむき加減で証人台の前に座った。
西田被告は、「2019年1月末ぐらい、マッチングアプリで知り合い交際を始めた。日曜日以外、週6回来るようになった」と語った。
マッチングアプリで西田被告と知り合った船橋被告は、すぐに西田被告の家族に介入するようになり、発達障害のあった真愛ちゃんへの虐待が始まった。
検察官から「船橋被告の虐待はいつから?」と問われると、西田被告は、「2019年4月頃。その前から、私やまーちゃん(真愛ちゃん)のことを否定したことがあった。『なんでーまーちゃん生んだの』と言われた」と涙ながらに答えた。
検察官:
真愛ちゃんにはどんなことをしていた?
西田被告:
フライ返しや布団たたきで体をたたいたり、延長コードを使って体を巻き付けたり、何回も見たことがあって、布団たたきについては「彩ちゃん(西田被告)もやるんよ」と強要された
検察官:
それであなたもやった?
西田被告:
まーちゃんごめんねと思いながらしました
船橋被告の真愛ちゃんへの虐待は、それだけではなかった。
西田被告は、「山に行ってまーちゃんだけ降ろして車のあとを走らせた」「『きょうからまーちゃんのおうちはここだからね』と、衣装ケースに入れて出さないようにしていた」「トイレに行かせずバケツにさせていた。『バケツのおしっこは捨てないでね』と言われていた」と続けた。
また、真愛ちゃんを椅子に立たせて嘔吐(おうと)させる行為については、「勝手にお菓子を食べたりしたので『食べたものを返してください』という感じで」と語った。
船橋被告と終始電話をつなぎ、室内2カ所のカメラで監視されていたという西田被告は、繰り返される船橋被告の虐待を止めることはできなかった。
西田被告:
児相(児童相談所)に相談に行くことも、まーちゃんを病院に連れて行くこともダメと言われていた。たくさん制限や禁止されていた。私や子どもたち含め、精神が崩壊していた
最後に真愛ちゃんに対しての思いを聞かれた西田被告は、「まーちゃんに対して、残された子どもに対して、守ってあげられなくてごめんという気持ちが大きい」と述べた。
児相の観察中も船橋被告に生活状況を報告
一方、児童相談所に最初に相談があったのは、2019年4月だった。西田被告の次男から「母の友達に真愛がたたかれている」と相談を受けた小学校が連絡した。
児童相談所はその後数回、家庭訪問を行った。2019年6月には真愛ちゃんが迷子になり、警察に保護され、翌月に児童相談所は「ネグレクト」と判定し、観察を開始した。
そんな中、西田被告は生活状況を随時、船橋被告にチャットアプリ(LINE)で報告し、2020年8月5日には、次のようなやりとりもしていた。
西田被告:
どうしようか、ご飯あげてないよ
船橋被告:
夜抜いても死にはしない
西田被告:
話をするか、ほっとくか
お父さん好きか?との問いに「ううん」
2020年9月、「真愛ちゃんが墓地に立たされ叱責が行われている」と通行人から通報があった。児童相談所は真愛ちゃんだけを一時保護し、両被告の面談を数回行った。
翌2021年4月、児童相談所は真愛ちゃんへの面談を行った。真愛ちゃんは「お父さん(船橋被告)に叱られることあるか、怖いか」という質問に対し「うん」と大きくうなずき、「お父さんが好きか」という質問には「ううん」と首を横に振ったという。
この時、西田被告は児童相談所からしつけ等への注意を受けた。それにも関わらず、その後の船橋被告とのLINEのやりとりでは、十分な食事を与えていないことが伺えた。
西田被告(2021年5月4日のLINE):
昼から起きて現状報告。真愛、おなかすいたって泣き叫ぶ。トイレから脱走
西田被告(2021年5月5日のLINE):
子どもたちもそろそろ限界みたいで、真愛にいたっては顔の血色が悪くてしゃべりかけても無反応に近い状態で今日一日ずっと寝たきりだったから、きょうはご飯あげようと思ってる。あげてもよい?
船橋被告(2021年6月16日のLINE):
限界ならご飯なんかあげたら。真愛のことは彩ちゃんに任せるよ
児童相談所は、2021年9月の夏休み明け、子どもたちの体重が減少しているという報告を小学校から受けていた。
その後も虐待は続き、全身に布団を巻き付けて押し入れの中に放置された真愛ちゃんは、2022年1月、低酸素脳症で死亡した。
大人の意地の張り合いで失われた小さな命
10月13日、常軌を逸する虐待を繰り返した男は、法廷で“涙ながらに”当時を振り返った。
船橋誠二被告への被告人質問が行われ、証言台に立った船橋被告は、真愛ちゃんへの虐待がエスカレートした経緯を語った。2019年初頭、西田被告と出会った当初から、船橋被告は「何かしてあげなければいけないという気持ちだった」という。
船橋被告:
西田さんが「子どもたちにどう説明したらいいか分からない」、子どもたちも「(母親が)何を言っているか分からない」と言うので、取り持つ感じで説明していた。上の子たちは説明で分かったが、真愛ちゃんは分からず、怖がらせようと思い、暗い場所に連れて行ったりした
そして船橋被告は、「子どもたちが言うことを聞かない時、西田被告に頼まれて“しつけ“ていたのが、叱ったりたたくようになったきっかけだった」と説明した。
こうしたしつけが、なぜ虐待行為へ発展していったのか…。船橋被告は、「西田被告への“当てつけ”だった」と説明した。
船橋被告:
日中面倒を見ず、子どもたちが悪さをする状況を作っていながら、(子どもたちの)悪さを報告され注意だけ自分(船橋被告)がさせられて、「なんでそこだけ自分がやらなければいけないんだ」と思った
また、船橋被告は、「子どもたちが一番大切」と言っていた西田被告に対して、「『大切なら面倒を見るだろう』と真愛ちゃんに手を上げるようになった」として、西田被告への不満やいら立ちの矛先が、立場の弱い真愛ちゃんへ向くようになったと話した。
エスカレートしていったのは2021年8月頃からで、当時その意識はなかったという。
さらに船橋被告は、「真愛ちゃんへの虐待行為はほとんど西田被告に報告していた。(西田被告に)止められるはずが、止めるよう言わないので、『もう知らない』と無責任な気持ちになっていた」と説明した。
そして、「大人の意地の張り合いで真愛ちゃんの命が失われたのか」という質問に対し、船橋被告は小さく「はい」と答えた。
裁判は、10月16日に結審する予定となっている。
(岡山放送)