【ABC特集】 小学6年生男の子が2年かけたロングヘア なぜ髪を寄付?ヘアドネーションへの思い
2/28(月) 21:46配信
ABCニュース
病気でウィッグを必要とする子どもたちに髪の毛を無償で提供するヘアドネーション。病と闘う同世代の子達に少しでも寄り添いたいと、2年間髪の毛を伸ばし続けた小学6年生の男の子を取材しました。
小学6年の大屋敷惺(おおやしき さとる)くん。目をひくのは、その長い髪。
「20センチくらい違うよね。僕ここくらいまであるもん」(惺くん)
「(Qもともとはどれくらいの長さだったの)思い出せるよ。ここらへん、ここらへんくらい」
「(Qそこから結んでいる分が伸びたの?)ここからだいたいこの辺くらいまで」
惺くんが髪を伸ばしている訳はヘアドネーションのため(髪の毛の寄付)。自分の髪の毛を寄付します。その髪の毛は、脱毛症や無毛症、そして癌などの病気で髪の毛が抜けた子どもたちが使う医療用ウィッグに生まれ変わります。
惺くんは母親の康子さんと二人三脚で髪を伸ばしました。声をかけたのは康子さん。きっかけは、身近にいた病気に苦しむ子どもの姿。
「(身近に)闘病している頑張っている子、頑張っていた子の話を聞きまして、今、自分ができることをということでヘアドネーションをしようと。人の役に立つんだなあくらいにしか思ってなかったんですけれども、(身近に髪の毛を)必要としている人がいるんだな」(母・康子さん)
血液の病気の治療により髪の毛が抜けてしまった惺くんと同世代の子ども。二人は『少しでも気持ちに寄り添いたい』と、寄付のために2年前から髪の毛を伸ばしました。ウィッグの材料にするには31センチ以上の髪の毛が必要です。男の子の惺くんにとって、簡単にできることではありません。
「最初は嫌やと思って途中でちぎったり。」
「『なんで髪の毛伸ばしてるの?』『男の子女の子どっち?』って言われた」(惺くん)
惺くんがここまで続けてこられたのは家族の存在があったからです。実は2人のお姉さんは、これまでも髪の毛の寄付をしてきました。今も、そのために髪を伸ばしています。
「自分の髪だけど、他の人にも使ってもらうから大事にしようって」
「(Qふだん伸ばす時と違う)気持ちが違いますね」(ヘアドネーション2回目 琴音さん 24歳)
「(うなずく)」(ヘアドネーション3回目 楓音さん 17歳)
家族みんなでするヘアドネーションを見つめてきた父親の薫さん。
「息子がもっと嫌がったら、やめさせようと思ったけれど、お姉ちゃんがやっているから息子も自然なこととして受け入れたと思いますし、つながっていくっていうことなのかな」(父・薫さん)
実は、康子さんが惺くんをヘアドネーションに誘ったのには、もうひとつ理由がありました。
「(惺くんは)以前、生まれた時から肺動脈流狭窄症という病気を持っていたのですが、小さいうちに治りましたので、その時の未来に対する不安や、治ってから元気になっていることの実感が薄れてきていた。」(康子さん)
康子さんは、惺くんが今、健康であることを当たり前だと思わず、病気の子どもたちの存在を忘れないでいてほしいと願っています。
「(今、健康な惺くんが)誰かのために時間を使えたってことをうれしいなと思ってほしい」(康子さん)
惺くんに先立って、この日はまず康子さんが2年間伸ばした髪を切ります。
「あら、ないわ~」(康子さん)
切った髪を丁寧にまとめて、ウィッグにするためにNPO法人に郵送します。これで、一人のドナーとして髪の毛の寄付ができました。
「すっきりしました。お役ごめん。あとはもう託された。(ウィッグを)作ってくれる方に託されました。」(康子さん)
髪の毛を受け取るNPO法人『ジャーダック』。2009年に、美容師である渡辺さんが事業を立ち上げました。
寄付された髪は長さ別に仕分けられ、海外でトリートメント処理された後、日本のかつらメーカーがウィッグを製作します。一つのウィッグができあがるのに、平均して“50人分の髪の毛”が必要です。ウィッグは希望する子どもたちに無償で届けられます。その活動のほとんどは寄付金で成り立っていますが、コロナ禍で寄付は激減しました。
「それは厳しい。活動をたたもうかというところぐらいまで考えましたけどね。慈善事業をやっている場合じゃないというか、みんな命の問題を抱えている状況で、こんなことをやっている場合じゃないよね、みたいな。」(渡辺代表)
それでも、ウィッグを必要とする子どもが一人でもいる限り、この事業を続けてきました。その一方で、髪の毛の抜けた子どもたちがウィッグなしでは学校に行けない・・・外出したくない・・・。そう感じさせる社会のあり方に疑問を感じる13年間でもありました。
「単なる事実がそこにあるだけなんですよ。毛があるという事実と毛がないという事実があるだけなんで。ウィッグをかぶらないといじめられるんじゃないかっていうものが世の中からなくなりさえすれば、ウィッグであってもいいし、ウィッグでなくてもいいわけですから」(渡辺代表)
『必ずしもウィッグを必要としない社会』。渡辺さんはヘアドネーションの先にある世の中を願っています。
「あまり傷まないように、触りすぎないようにしてたので」(康子さん)
必要な子どもたちに届くようについに惺くんが髪の毛を切ります。
「なんか不思議ねえ。久しぶりに髪を切るって。なんか不思議」(惺くん)
思い返す、髪を伸ばし続けてきた2年あまりの日々。
「『(友だちに)まだ切らへんの?』ってきつめに言われて、自分から『まだ切らないよ』って強く言ってその時は耐えてた。」(惺くん)
「意志が強いね」(美容師さん)
「うん。」
「ちゃんとヘアドネーションしたいって思ったからだね。」
「うん。」
髪の毛を少しでもたくさん寄付できるように細かい束を作ります。いよいよ長く伸ばした髪にはさみを入れる瞬間がやってきました。最初にはさみを入れるのは康子さんです。
「いくよ。」(康子さん)
「ママ信じられない。」(惺くん)
「(髪の毛を切って)難しいね」(康子さん)
「痛いねなんか。」(惺くん)
「切っちゃいましたよ。」(康子さん)
「(切られた髪を見て)蛇みたい」(惺くん)
次々に入るはさみ。髪の毛の束が増えていきます。
「うれしいよ。やっと切れるし。髪の毛のない人に頑張って伸ばした髪の毛をやっとあげられるからうれしいよ」(惺くん)
ふとこぼれる言葉から感じた息子の成長。
「はい。なくなっちゃました。誰?誰?」(惺くん)
「あーさっぱり(笑)。」(康子さん)
寄付した髪の毛が誰に届くかは、分かりません。どこかにいる髪の毛を必要とする人を思いながら過ごした2年間。
「46センチくらい。」(理容師さん)
「へえ。ありがとうございます。」(惺くん)
「よかったねえ。がんばったがんばった。」(康子さん)
短くなった髪の毛でちょっとだけ大人になった新しい日々が始まります。
2/28(月) 21:46配信
ABCニュース
病気でウィッグを必要とする子どもたちに髪の毛を無償で提供するヘアドネーション。病と闘う同世代の子達に少しでも寄り添いたいと、2年間髪の毛を伸ばし続けた小学6年生の男の子を取材しました。
小学6年の大屋敷惺(おおやしき さとる)くん。目をひくのは、その長い髪。
「20センチくらい違うよね。僕ここくらいまであるもん」(惺くん)
「(Qもともとはどれくらいの長さだったの)思い出せるよ。ここらへん、ここらへんくらい」
「(Qそこから結んでいる分が伸びたの?)ここからだいたいこの辺くらいまで」
惺くんが髪を伸ばしている訳はヘアドネーションのため(髪の毛の寄付)。自分の髪の毛を寄付します。その髪の毛は、脱毛症や無毛症、そして癌などの病気で髪の毛が抜けた子どもたちが使う医療用ウィッグに生まれ変わります。
惺くんは母親の康子さんと二人三脚で髪を伸ばしました。声をかけたのは康子さん。きっかけは、身近にいた病気に苦しむ子どもの姿。
「(身近に)闘病している頑張っている子、頑張っていた子の話を聞きまして、今、自分ができることをということでヘアドネーションをしようと。人の役に立つんだなあくらいにしか思ってなかったんですけれども、(身近に髪の毛を)必要としている人がいるんだな」(母・康子さん)
血液の病気の治療により髪の毛が抜けてしまった惺くんと同世代の子ども。二人は『少しでも気持ちに寄り添いたい』と、寄付のために2年前から髪の毛を伸ばしました。ウィッグの材料にするには31センチ以上の髪の毛が必要です。男の子の惺くんにとって、簡単にできることではありません。
「最初は嫌やと思って途中でちぎったり。」
「『なんで髪の毛伸ばしてるの?』『男の子女の子どっち?』って言われた」(惺くん)
惺くんがここまで続けてこられたのは家族の存在があったからです。実は2人のお姉さんは、これまでも髪の毛の寄付をしてきました。今も、そのために髪を伸ばしています。
「自分の髪だけど、他の人にも使ってもらうから大事にしようって」
「(Qふだん伸ばす時と違う)気持ちが違いますね」(ヘアドネーション2回目 琴音さん 24歳)
「(うなずく)」(ヘアドネーション3回目 楓音さん 17歳)
家族みんなでするヘアドネーションを見つめてきた父親の薫さん。
「息子がもっと嫌がったら、やめさせようと思ったけれど、お姉ちゃんがやっているから息子も自然なこととして受け入れたと思いますし、つながっていくっていうことなのかな」(父・薫さん)
実は、康子さんが惺くんをヘアドネーションに誘ったのには、もうひとつ理由がありました。
「(惺くんは)以前、生まれた時から肺動脈流狭窄症という病気を持っていたのですが、小さいうちに治りましたので、その時の未来に対する不安や、治ってから元気になっていることの実感が薄れてきていた。」(康子さん)
康子さんは、惺くんが今、健康であることを当たり前だと思わず、病気の子どもたちの存在を忘れないでいてほしいと願っています。
「(今、健康な惺くんが)誰かのために時間を使えたってことをうれしいなと思ってほしい」(康子さん)
惺くんに先立って、この日はまず康子さんが2年間伸ばした髪を切ります。
「あら、ないわ~」(康子さん)
切った髪を丁寧にまとめて、ウィッグにするためにNPO法人に郵送します。これで、一人のドナーとして髪の毛の寄付ができました。
「すっきりしました。お役ごめん。あとはもう託された。(ウィッグを)作ってくれる方に託されました。」(康子さん)
髪の毛を受け取るNPO法人『ジャーダック』。2009年に、美容師である渡辺さんが事業を立ち上げました。
寄付された髪は長さ別に仕分けられ、海外でトリートメント処理された後、日本のかつらメーカーがウィッグを製作します。一つのウィッグができあがるのに、平均して“50人分の髪の毛”が必要です。ウィッグは希望する子どもたちに無償で届けられます。その活動のほとんどは寄付金で成り立っていますが、コロナ禍で寄付は激減しました。
「それは厳しい。活動をたたもうかというところぐらいまで考えましたけどね。慈善事業をやっている場合じゃないというか、みんな命の問題を抱えている状況で、こんなことをやっている場合じゃないよね、みたいな。」(渡辺代表)
それでも、ウィッグを必要とする子どもが一人でもいる限り、この事業を続けてきました。その一方で、髪の毛の抜けた子どもたちがウィッグなしでは学校に行けない・・・外出したくない・・・。そう感じさせる社会のあり方に疑問を感じる13年間でもありました。
「単なる事実がそこにあるだけなんですよ。毛があるという事実と毛がないという事実があるだけなんで。ウィッグをかぶらないといじめられるんじゃないかっていうものが世の中からなくなりさえすれば、ウィッグであってもいいし、ウィッグでなくてもいいわけですから」(渡辺代表)
『必ずしもウィッグを必要としない社会』。渡辺さんはヘアドネーションの先にある世の中を願っています。
「あまり傷まないように、触りすぎないようにしてたので」(康子さん)
必要な子どもたちに届くようについに惺くんが髪の毛を切ります。
「なんか不思議ねえ。久しぶりに髪を切るって。なんか不思議」(惺くん)
思い返す、髪を伸ばし続けてきた2年あまりの日々。
「『(友だちに)まだ切らへんの?』ってきつめに言われて、自分から『まだ切らないよ』って強く言ってその時は耐えてた。」(惺くん)
「意志が強いね」(美容師さん)
「うん。」
「ちゃんとヘアドネーションしたいって思ったからだね。」
「うん。」
髪の毛を少しでもたくさん寄付できるように細かい束を作ります。いよいよ長く伸ばした髪にはさみを入れる瞬間がやってきました。最初にはさみを入れるのは康子さんです。
「いくよ。」(康子さん)
「ママ信じられない。」(惺くん)
「(髪の毛を切って)難しいね」(康子さん)
「痛いねなんか。」(惺くん)
「切っちゃいましたよ。」(康子さん)
「(切られた髪を見て)蛇みたい」(惺くん)
次々に入るはさみ。髪の毛の束が増えていきます。
「うれしいよ。やっと切れるし。髪の毛のない人に頑張って伸ばした髪の毛をやっとあげられるからうれしいよ」(惺くん)
ふとこぼれる言葉から感じた息子の成長。
「はい。なくなっちゃました。誰?誰?」(惺くん)
「あーさっぱり(笑)。」(康子さん)
寄付した髪の毛が誰に届くかは、分かりません。どこかにいる髪の毛を必要とする人を思いながら過ごした2年間。
「46センチくらい。」(理容師さん)
「へえ。ありがとうございます。」(惺くん)
「よかったねえ。がんばったがんばった。」(康子さん)
短くなった髪の毛でちょっとだけ大人になった新しい日々が始まります。