1 堀正岳 『知的生活の設計』(KADOKAWA、2018)
2 西尾泰和 『エンジニアのための知的生産術』(技術評論社、2018)
3 スティーブン・スローマン フィリップ・ファーンバック 『知ってるつもり 無知の科学』(早川書房、2018)
4 呉座勇一 『陰謀の日本中世史』(KADOKAWA、2018)
5 ブレイディみかこ×松尾匡×北田暁大 『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』(亜紀書房、2018)
6 スコット・ギャロウェイ 『GAFA』(東洋経済新報社、2018)
7 赤坂憲雄 『性食考』(岩波書店、2017)
8 畑中章宏 『21世紀の民俗学』(KADOKAWA、2017)
9 飛浩隆 『零號琴』(早川書房、2018)
10 小西明日翔 『来世は他人がいい』既刊2巻(講談社、2017~2018)
短評
1 この著者の『ライフハック大全』というライフハック本が面白かったので、続く形で読んだ。他の知的生産術本と異なるのが「積み上げ」や「積み重ね」を強調しているところだ。長いスパンの知的生活を送る上でのヒントをたくさん与えてくれる。
2 1とは異なり比較的オーソドックスな知的生産術本。モチベーション、記憶、読書、情報整理というトピックで著者の実践を交えながらロジカルに論じる。個人的には読書の章がとても勉強になった。
3 最新の様々な分野の研究から人間の知能の限界を論じる。個人では限界があるので、集団やコミュニティを使うことで知能を拡張できるとの論はとても現代的だ。
4 中世史の通史を大量の史料を参照しながら批判的に論じる。この姿勢は左右の陰謀論やフェイクニュース、自称通史本に対抗するためにとても参考になる。
5 昨今の左翼リベラルの劣化は激しい。「差異の政治」や「ポリティカル・コレクトネス」を重要視しすぎたため、経済的視点がないがしろになり、結果的に貧困層の増大と保守派の増長を招いた。現代の左翼の復活のために経済的視点を重視することを強調していて、頷けるところがとても多い。
6 Google、Amazon、Facebook、Apple。巨大IT企業達の詳細な分析と対抗するための策が語られている。これらの企業を分析した類書は多いがここまでの密度は他の本ではないだろう。
7 食べること、交わること、殺すこと。この3つの変換を神話やおとぎ話の分析を通してあぶり出している。論の進め方がスリリングで「そういう読み方があるのか!」と膝を叩くことが何度もあった。
8 民俗学って結局昔のことを探るだけでしょ、という私の固定観念を見事に打ち破ってくれた。現代の出来事を通して民俗学のアップデートを図っていくさまは震災以後私達はどのように自分たちの感情と環境に向き合っていくかを教えてくれる。
9 ファン待望の大傑作。読んでいて震えが止まらなかった。これで『空の園丁』が出る!
10 ヤクザ(の孫)同士のラブコメ未満の物語。メンヘラ君がとてもいい味を出している。不穏な空気がたまらない。