今日も今日とてBun‐bun‐bun、ではなく快晴で雲一つなく。
空を見れば澄みきった青で。
昨日となんら変わらない天気で、気温も暑すぎず、寒すぎずな気温で。
こんなにもいい天気なら授業中に寝るのも仕方ないな、と文月学園に通う高校二年生の坂本雄二は思っていた。
授業中に寝るのは駄目だろう、という考えは彼の所属するFクラスには存在しない。むしろ雄二の考えに賛同してくれる者が多い。授業中に周りを見渡せば、眠ってる者が多数いる。中には、早弁をしてる者だっている。
勉学に励むべき文月学園の生徒にしてはあるまじき風景だ。しかしここはFクラス。このクラスを除く他、A・B・C・D・Eクラスの中では最低ランクの学力だ。
そんなクラスなのだから、授業態度は当然のことながら悪い。
しかし------
「貴様らっ!俺の受け持つ授業で睡眠を取るとはいい度胸だな!」
怒号一閃。
お世辞にも綺麗とは言えない教室で怒りの声が響き渡る。
そして、それまで睡眠を取っていた者も一斉に目覚め、何とも美しい正座の姿勢をとった(普通のクラスでは椅子と机があるのだがFクラスでは座布団と卓袱台がある)
「そんなに、俺の、授業は、退屈か?」
怒りのせいか、途切れ途切れに話すのは、問題児を多く抱えるFクラスの担任である西村教諭。通称鉄人。
筋骨粒々で、趣味はトライアスロン。
今時の若者が聞けば耳を疑うような趣味を持つ。
そして、彼の教育的指導によってトラウマを植え付けられた者もこのクラスには多くいる。言わば、天敵のようなものだった。
「だってしょうがないじゃないですか鉄じ…じゃなくて西村先生」
と、そんなドスの利いたセリフもなんのその、と言わんばかりに文句を垂れるのは、雄二と同じFクラス所属の吉井明久。
彼を一言で言うなら、所謂バカ。
この文月学園創設以来、誰も賜ることのなかった『観察処分者』という称号(称号、と言っても大層なものではなく、学園内で特に注意が必要である、と判断された者に贈られる。通称バカの代名詞)を持つ。
「なんだ吉井。何がしょうがないんだ」
「こんなにいい天気なんですよ?暖かいし、一部割れている窓ガラスから吹くそよ風がなんとも眠気を誘うし。いくら勉強熱心な僕たちでもこれはしょうがないというか」
「勉強熱心な、以外はまぁ分からんでもないが。眠らずにちゃんと授業を受けている奴だっている。主に姫路や姫路や姫路が」
「姫路さんしかいないじゃないですか!」
いつものようなやりとり。
姫路、と呼ばれた女子生徒は、Fクラスの中でも色々な意味で目立つ生徒である(ちなみに下の名前は瑞希)
頭脳明晰、容姿端麗、中には料理が凄いんです!…主に悪い意味で、と証言する生徒数人もいる。なぜ、頭脳明晰な彼女が学力最低ランクのFクラスに所属しているのか、と聞かれるとggれ。
そんな彼女は、他のメンツとは違い、姿勢よく授業を聞いている。現在は西村教諭と吉井のやりとりを聞いて苦笑しているが。
「でも明久くん。授業は真面目に聞かないと駄目ですよ?」
「脱走を企ててないだけマシだと思うんだけど」
「そもそも脱走を企てないで下さい…」
呆れ気味にそう言う姫路であったが、端から聞いていた西村教諭は怒りで顔を真っ赤にしていた。さながら赤鬼のように。
「吉井。後で教育について語り合わないか?主に拳を用いて」
「その話題に拳はいらないと思うんですけどっ!?」
そんないつもの授業のやり取りをしている内に終業を告げるチャイムが鳴る。明久はほっと胸を撫で下ろした。
そして昼休みに------
「全く…鉄人にも困ったもんだよ」
「なに言ってんのよアキ。西村先生からすれば困ったもんなのはあんたじゃないのよ」
そう言うのは、Fクラスでは姫路以外の女子生徒である島田美波。
姫路とは正反対で、活発で運動が得意な帰国子女だ。ちなみにもとは家族と共にドイツで暮らしていた。
趣味は吉井明久を殴る、という危険かつピンポイントな趣味をお持ちである。
「けど、美波だって途中から寝てたじゃないか。人のこと言えないよ」
「う…。う、ウチはいいのよ!普段はちゃんと聞いてるんだから!」
「今日は天気がよかったからのう。授業態度は最悪のFクラスとはいえ、あの陽気では仕方ないのかもしれぬ」
爺口調でそう言うのは、木下秀吉。
明久、雄二とは一年生からの付き合いだ。
容姿はなんとも中性的、むしろ女性に近い。そのせいか大多数の生徒は彼を女に近い扱いをしている。本人は否定的だが。
名前からしてれっきといた男だが、一部では第3の性別『秀吉』とまで言われている。
演劇部に所属し、人真似をさせると右に出るものはいない…といった、なんとも良くも悪くもFクラスらしい人間である。
「え?じゃあ秀吉も寝てたの?」
「うむ。恥ずかしながらの」
「…………いい写真が撮れた」
「ムッツリーニ…お主、また隠し撮りをしておったのか?」
「…………!(ブンブン)」
ムッツリーニ、と呼ばれた少年は否定するかのように首をブンブンと横にふった。
勿論、ムッツリーニとは彼のあだ名であり、本名ではない。
本名は土屋康太。通称ムッツリーニ(寡黙なる性職者)
秀吉と同じく、明久、雄二、とは一年生からの付き合いだ。
その名に恥じぬムッツリっぷりで、エロの為には死をもいとわないある意味で大物。口数も少ないことからもその異名がつけられている。
カメラ等に精通しており、撮影技術はプロ顔負けであり、学校内でもムッツリ商会という写真屋を独自に開いている。ちなみに撮った写真のほとんどは盗撮である。
「そんなに大げさに否定しても意味ないと思うよムッツリーニ」
「いつものことじゃからのう…」
「…………何を言っているのか分からない」
嘘をつくのが下手なのか、すぐにバレてしまうのだが、普段のことなのでもう諦めている。
「ところで雄二」
「あん?なんだよ?」
「もう昼休みだけど、こんなところで油売っててもいいの?」
「なに言ってんだ明久。いつも昼休みにはこうして集まって昼メシ食ってるじゃねぇか」
「いや、さっきから霧島さんが雄二を探して------」
「すまん皆。ちょっと用事が出来たみたいだ」
言うやいなや、驚くべき速度で昼食を準備を片付けて、教室を出ようとした------が
「……雄二、見つけた」
「げぇっ!翔子!」
時すでに遅く、先程明久の言っていた霧島、という女子生徒が雄二の開けた教室のドアの前に立っていた。
軽く説明をしておくと、霧島翔子はAクラス所属の女子生徒で、クラス内で成績トップの者に任命されるクラス代表でもある(ちなみに雄二もFクラスの代表である)
更にその可憐な容姿から、非の打ち所がない。が、一時期は男子の誰にも靡かない様子から女が好きなのでは、という噂が流れていた。実はそれは誤解であり、本人は雄二に幼い頃から好意を抱いており、二年生に進級してから行われたあることがきっかけで、雄二に告白。一応、現在では恋人同士(翔子にとってはそういう認識)の関係にある。
「ていうか霧島さん、いつの間に…?」
「ムッツリーニ、お主気づいておったか…?」
「…………正直、全く気づかなかった」
…気配に敏感なムッツリーニにも気づかれずに教室のドアの前に立っていたことに明久と秀吉は軽い驚きを隠せなかった。
「しょ、翔子…なんだ?俺に何か用か?」
怯えながら恐る恐るといった感じで雄二は尋ねる。雄二の粗野な見た目にそぐわぬ光景であった。
「……お弁当、一緒に食べようと思って」
「そ、そうか。別にかまわないぞ。なら俺たちと一緒に」
「……だめ、二人きりで」
「なん…だと…?」
そう言われ、戦慄する雄二であったが、翔子本人は純粋に恋人同士(仮の関係ではあるが)仲睦まじく昼食を一緒に食べたい、という何とも年頃の女子らしい思いがあった。
が、そんなことは露知らず、雄二本人は「二人きりでどんなおしおきをするつもりなんだ…」と何とも失礼な思いを抱いてる。
「翔子、すまんが二人きりでは」
「よーしみんな!もうお弁当は食べたよね?」
「はい!もう食べ終わっちゃいました」
「ウチも今日はなんだかいつもよりお腹空いてるみたいでねー。もう終わったわ」
「うむ!今日も美味い昼食じゃった!」
「…………同じく、ごちそうさま」
「お、お前ら!俺を見捨てる気か!?」
とはいえ、このタイミングで全員が同時に昼食を食べ終わるとは余りにも不自然だ。
雄二は少し考え、結果、自分が嵌められたことを悟り、脱力した。
「さぁ霧島さんっ。僕らのことは気にしないでいいから雄二を連れていって!」
「……吉井。ありがとう」
「明久っ!テメェ覚えて…ぐあぁぁっ!?翔子!俺の肘はプラモデルの様には曲がらんぞっ!?」
雄二の慟哭が、廊下中に虚しく響き渡った。
「……雄二、ここで」
「ここって屋上じゃねぇか。今日は天気もいいし、昼飯食うのには最適かもな」
雄二は諦めたのか、もう抵抗を止めて翔子に腕を引かれるがままになっていた。
そしてついたのは校内の屋上。たまに雄二が先程昼食を共にしていたFクラスのメンツとはたまに来て昼食をとる場所でもあった。
「……雄二」
「なんだ?翔子」
「……やっと、二人きりになれた」
「…っ!」
と、雄二は自分の置かれている状況に気付き顔を青くする。
そうだ、きっといつもの拷問…もといおしおきが待っているんだった…と、雄二は高校生の日常にはふさわしくない物騒な考えを巡らせる。
と、翔子が持っていたカバンに手をかけた。
雄二はそれを警戒しつつ距離を取ろうとする。
「……雄二」
「っ!」
ダメか…!と悟り雄二は目を深く瞑る。…が待っても自分に被害がないことを感じると、雄二はそっと目を開いた。
「これは…なんだ?弁当…なのか?」
「……そう」
翔子が手にしていたのは、なんのへんてつもないただの弁当箱。重箱仕様を除けば、どこから見てもただの弁当箱だ。
「……今日は雄二と一緒に、食べようと思って」
「……」
唖然としながら、雄二は自分の考えていたことが杞憂であると認識する。
ホッとしたのと同時に、疑問が浮かぶ。
「翔子。なんで急に一緒に昼飯を食べようと思ったんだ?」
「……あまり、一緒に食べたことがないから」
そう言いつつ少し恥ずかしそうに俯く翔子を見て、雄二も少し顔が熱くなるのを感じた。
「あ、改めて言うな。なんか恥ずいじゃねえか…」
「……私も」
なんとも言えない空気が屋上に流れた。
お互い幼馴染みといった関係ではあるが、過去のことも相まってか、幼馴染みらしいことをしていなかった。そのせいか、なんだかむず痒くなった雄二は、はやいこと弁当でも食べるようにした。
「ほ、ほら翔子。早く食べようぜ。時間がなくなっちまう」
「……うん」
雄二は持参した昼食を手にかけようとしたその時。
「……?」
ふと、視線を感じた。それも長い付き合いのある敵(バカ)の視線を。
直感の感じまま、雄二は急に立ち上がり視線のする方へと駆け出した。
「…っ!(バンッ)」
「し、しまった!」
「…………バレたか」
「ゆ、雄二!?何故ここが分かったのじゃ!?」
思った通りだ、と内心で呟く。
屋上のドアから覗いていたのはいつもの三人。
「お前らまでなにやってんだ…」
「さ、坂本くん!?ち、違うです、これはその」
「う、ウチらは別に…」
姫路、島田のFクラス唯一の女子たちまでもが覗いている。ハァ、と溜め息をつき雄二は呆れた。
「ちぃ!バレたからには仕方ない!」
「…………撤退」
「す、すまんの雄二っ!」
「ごめんなさい坂本くんっ!」
「ちょ、ちょっと!ウチを置いていかないでよ!」
「あっ、テメェら!」
恐るべき速さで五人は逃げていく。特に男三人に対しては既に逃げ足の速さを知ってはいたが、追う側になると改めてその逃げ足の速さに驚く。
追う気が失せた雄二は呆然としている翔子のもとに向かった。
「あー、そのなんだ…翔子」
「……なに?」
「一緒に、食うか。弁当」
「……!うん」
「(早く、ろくでなしの俺から離れさせないとな)」
赤くなった翔子を見て、雄二は思う。
「(でも今くらいなら、いいよな?)」
誰に確認しているのか分からないが、雄二はそう心の中で呟いた。
さて、この重箱の中身をいただこうか------
おまけ
雄二と翔子が行ってすぐのこと
「全く、雄二も世話が焼けるね」
「霧島があんなにも想っとるのにのう」
「…………素直じゃない」
「それにしても…いいですよね。好きな人と二人きりでお弁当を食べるなんて(チラッ)」
「そ、そうよねー。なんか憧れるわね(チラッ)」
「?どうしたの二人とも」
「あ、アキ!今度ウチと一緒にお弁当食べましょう!二人っきりで!」
「へ?ど、どうしたの美波?急に------」
「ぬ、抜け駆けはずるいです美波ちゃん!明久くんっ、今度は私と一緒に食べましょう!」
「ひ、姫路さん!?姫路さんまでどうしたの!?」
「アキはウチと一緒に食べるのっ!(グイッ)」
「いえ、私と一緒に食べるんですっ(グイッ)」
「さ、裂ける!二人とも、僕の体はそんなに引っ張っても分裂しないからっ!」
「アキはウチと!」
「私とっ!」
「ギャアァァァッ!!」
「こちらもいつもと同じじゃの」
「…………世話の焼ける」
後書き
気付けば執筆からえらく時間がかかりました…(´・ω・`)
一応初のバカテス小説でしたが、いかがでしょうか?
色々と反省点はありますが、これ以上長引かせて書くのもアレなんで、このような形で投稿させていただきましたm(_ _ )m
いずれ修正したいので、また修正したら是非ともみてやったください!(^^ゞ
それでは~(>_<)ノシ
Android携帯からの投稿