ちょっと遅れた誕生日会を 友達たちが開いてくれるって言うから

飲み会なんだっ。って言って出てきた。

誕生日、忘れてるみたいやから
誕生日会なんよって言わない。

気にしたら可哀想やもん。
忘れててごめんって言わせるの なんか寂しいねん。

覚えててもらえへんかったのは
まだあのひとの中で そんなにランキングが上位じゃないからなのかも…

そやったら、来年までにがんばるだけ。

やから言わずに出かけることにしたん。


玄関でカラフルなスニーカーの紐 しゃがんで結んでたら


「なぁ」

って後ろからねぼけた声。

「ん?」
「行く途中ここ寄ってきて

渡された、名刺サイズのちっちゃいショップカード。

それから、商品券。

「なんか買ってくんの?」
「予約してて 取り行けてへんの。ついでにとってきて」

目をこすりながらもそもそ言われて
手の中のカードのアドレスを見る。

確かに通り道。

けど
このブランド 好きやったんかな?

「名前言えばわかるから」

そう言って イッテラッシャイもなしに
背中を向ける彼に

「おやすみー」

こっちがお見送りの言葉。

休みの日に 昼前に 起こしてもうてごめんな。

カラフルなスニーカーのソールを
トントンって鳴らして外に出る。



カードに載ってるちっちゃいちっちゃい地図は
随分簡易のものだけど
知らないはずないくらい有名なお店。

入り口の門番みたいな男の人に 扉を開けてもらって
恐る恐る入ってみる。

場違いな格好で来てもうたな…
なんか居づらくて はやく終わらせたくて

近くの店員さんに
「あの 頼まれもので来たんですけどっ」

予約してて…って名前言ったら
丁寧にその場で待たされて。


3分もしないうちに出てきたのは…


真っ赤で小さな四角い箱…。


「お客様 お誕生日おめでとうございます」

って。
続けて彼の名前…


彼からです やって。

予約してたみたい…


やや…もぅ


知らん人の前で

こんな泣いてもうて…


やや…もぅ


なんでこんなこと。


誕生日の日から ソワソワしてるみたいに
感じたこと
勘違いって思い込まなくてええの?


渡された商品券で会計してくれてる間に

電話を1本。


「ごめん~。今日 あかんようになった」


走って帰る慣れた道。



左手に ちっちゃくて真っ赤な 紙袋を下げて。