別にこれといって不安や悩み事があったわけじゃないはずなのに
真夜中にふと目が覚めてしまうことが続いて。

そのたびに何故か、寝るときにはちゃんと消したハズの間接照明の白熱灯が
点いていることに気付かされる。

「もう…またつけっぱやん…つけたんなら消してや」

なんて、せっかく広めのベッドの、半分よりこっちめのとこで爆睡してる彼の寝顔に向かって、小声でぶつぶつ言いながら、
ベッドサイドに置いた照明のリモコンを、シーツの中からは出ずに、半身をよじって手にとり、
小さなボタンを選んで押す。

じんわりと暗くなっていく灯りが
なんとなく気持ちを落ち着かせてくれて
また朝までゆっくり眠れる。

真夜中に目が覚めた時は、決まってそんな流れ。


おやすみ。
って言い合って、灯りを落として
自分が眠ってしまった後に
間接照明なんか点けて、雑誌でも読んでるんかな…

携帯でもいじってるんかな…

それとも


起きてどっかいっちゃってるんかな…


日中は、ひとりそんなことばかり考えて
過ごしてしまう。

けど、雑誌も携帯も、彼の手の届く範囲にはいつも見当たらなかったし、何より神経質な自分が
隣で寝てる人がいなくなったら
すぐに気付いてしまうはず。

(なんで電気つけてるん?)

じんわりと暗くなる灯りの中、
彼の寝顔を見ていたら、
真っ暗になる直前、彼の目がうっすらと開くのを見てしまった。

眠そうなままこっちを見ていることに気付いて驚く。

「ごめん。起こしてしもた?」

小さな声でこっそり呟くと
まるで怪獣の唸り声。

「ん~…」

そして、続く、予想外の一言。

「また覚めた…?」

いつも爆睡してるって思ってたのに、
ひょっとしたらいつも起こしてしもてたんかな…

寝るのと食べるのが何より大好きな彼だから、起こしてしまってたなんて
なんだか凄く申し訳なくて…。
ごめん、ごめんと小さく何度も詫びる。

「…や、俺はいい。」

寝起きのくしゃくしゃな声なのに、
もう謝んな。って、カッコヨク
お前の寝息また聞いたら俺はすぐ寝れるし。って、さらりと。

多分、寝起きの超不細工な顔で言ってるはずなのに
左の胸の辺りが キュッと縮んで
なんだか悔しくて堪らない。

「電気、つけててもええよ。起きて暗かったら、なんか考えてまうやろ?」


超不細工なはずの顔とくしゃくしゃな声で、
どうしてそんなこと言うのかな…

「大丈夫。…大丈夫だよ」

最近ちょっと太くなっちゃった二の腕を
だき枕みたく引き寄せて、おでこを擦り付ける。
筋肉質ではないけれど、適度にしまった
彼の二の腕。


嫌がられるかなあ…抱き締めた二の腕を振り払われるかなあって
少し抱き締めた腕を緩めたら

ゴソって動いて
頭の上に、彼の反対の手の大きな手のひらが置かれる。

ゆっくりと往復するあたたかい手のひらに
緩めた手を再び抱き締めた。


「ありがとね…」


何が不安で目が覚めていたのかも
解らなかったけれど…


明日からは多分…。