もうオレンジ色の空もなくて
段々黒にかわりはじめた時間、
小さな小さな、昭和の匂いがする
まるで三丁目の夕日を現役で行く、我が家の前。

待ってた彼が、笑顔でバス停のある方向から歩いてくる。

いつもはあんまり歯を見せて笑わないのに、少し出っ歯の歯が隠れてないってことは、
ちょっと…いや、かなり飲んじゃったのかな?

今日…
今日、お給料。
今日、お給料日。


「おかえり。お疲れさま!
今月の頑張りは?」

彼が歯を見せたまま手のひらをうらっかえしにして、ヒラヒラと振ってみせる。

「あら、使おてしもたん?」

「ハイ!使ってしまいました!」

ご機嫌にお腹をポンポンって叩く彼。


お馬さんみたあと、飲んじゃったのかな?


彼が滅多に見せない、白い前歯を見ながら
ちっさくため息。

「ほら、はよ入り。
お風呂沸いてるよ。
スイカもきったあるよ。」


立て付けの悪い戸を開けてあげる。

先に入ろうとした彼が、急に隣に立ち止まって視界が暗くなる。

「籍、入れよ」

一瞬だけ真剣な顔。

そのあとすぐにまた白い前歯。


ほんまにしゃあない人やなあ…。


「もう籍入れたやろ?はよ入ってスイカ食べ!」


彼の最上級の告白は、
本当にそうしてから3年たっても
まだ変わらない。


籍より給料入れて欲しいわぁ。
なんて思いながらも、
ついつい笑顔になっちゃうんだ。