今年の12月、歌舞伎座で尾上松緑丈主演の「俵星玄蕃」が上演される(3日初日)。昨年の「荒川十太夫」に続き、講談ネタの新作歌舞伎ということで、大いに期待している(なお「荒川」は来年正月に再演)。



 ところで、俵星玄蕃が歌舞伎座で上演されるのは初めてではない。木村錦花の脚本で市川猿之助(2代目=初代猿翁)が演じたもので、本名題を「赤穂義士快挙録」という。昭和4年だからかれこれ1世紀近く昔のことである。台本は雑誌「歌舞伎」に掲載されており(国会図書館デジタルコレクションで読める)、一部を録音したCDが発売されている。



 作品は高田馬場と俵星玄蕃をあわせたもので、猿之助が二役をつとめている。出番は安兵衛の方が圧倒的に多く、なぜ俵星を併せたんだが、よくわからない。いずれにせよ、残念ながらあまり高い評価は得られなかったようで、3代目(スーパー歌舞伎の先代猿之助です、念のため)が復活させなかった事がそれを明証している。

 今回は松鯉先生の監修で、講談ネタの面白いところが盛り込まれているはず。大ヒットして再演·三演され新しい古典となることを願ってやまない。