近年、時代劇を語っては第一人者と呼び声高い、春日太一氏の新著である。映像作品から忠臣蔵の魅力を探ろうとする意欲作。全く知らない人にはゼロから知ってもらうよう…詳しい人には再確認してもらえるよう…批判的な人には誤解を解いてもらえるよう、とターゲットを広くとっている。平易な文章で読みやすく、この目標はある程度達成されているのではないかと思う。

 似たような発想で書かれた先行作もあるし、ウェブ上ではくすや という膨大なデータベースがあるので、それほど新鮮な感じは受けないが、独自な見解の窺えるところもあって飽きずに読める。特に、映画会社やテレビ業界の内部事情に関する記述は「あ、そうなの」と思わされるところが多かった。

 近年忠臣蔵が作られない理由についての分析は、目から鱗の落ちる思いだった。従来はマンネリとか時代遅れという評価で片付けられていたが、春日氏は制作する側の力量の問題だとする。なるほど、そういうことだったのか。ただ、そうするとキアヌ版や紀里谷版が(日本でも)興行的に振るわない理由も、説明してほしかったと思う。

 何にもせよ、こうして忠臣蔵文化に関心を持ち大切に思う人があるということは、意義のあることである。「このまま廃れてしまっては、あまりにも惜しい」という言葉は、春日氏ばかりでなく、私の思いでもある。