【おことわり】だいぶ前に書いたものなので、歌舞伎俳優もほとんど代替わりしてしまった。白鸚と書いたのは初代で、現幸四郎とあるのが今の(2代目)白鸚。現猿之助とあるのが今の(2代目)猿翁である。又五郎は2代目のこと(以上2019年に追記)

 松竹ホームビデオから二代目市川猿之助(初代猿翁)主演の「大忠臣蔵」が発売になった。1957年の作品だが、デジタル処理をしてあるため、画面はかなりきれいである。若干ノイズが入るが、これはやむを得まい。
 作品は、あっと驚く「仮名手本」である。浅野・吉良・大石あたりはさすがに実説の名をとっているが、その他はほとんど歌舞伎の名前。内容も、五段目~九段目の筋をほぼ忠実に(といっても限界があるが)映画の手法で表現しようというものである。中では六段目、七段目相当の箇所が上出来である。毛利菊枝のおかやは、中村又五郎・先代上村吉弥に劣らぬ(褒めすぎ?)名演。沢村貞子のお才など脇が手堅い。七段目では、チョボの入る珍しい演出で不自然な筋をカヴァーする。
 珍しいと言えば、立花左近のくだりが全く「勧進帳」だったのも珍しい。阪妻の「忠臣蔵」でBGMに使ったのは見たことがあるが、垣見五郎兵衛の名で東に下る大石を、関守の立花左近が見逃すという設定はちょっと・・・。しかし幸四郎(白鸚)とのやりとりは、さすがの迫力である。
 古い映画でいろいろな方の若き日を見られるのも楽しみ。団子(現・猿之助)や染五郎(現・幸四郎)は、今の顔が浮かんでしまいちょっと可笑しい。今では悪役専門の名和宏が片岡源五右衛門といういい役で出てくる。大木実の清水一角も今とは違う雰囲気。ただ、なぜ吉良を裏切ったのか、よくわからなかった。
 何にせよ、二時間半を長く感じさせない、楽しい作品である。 
2003年11月25日