今年の赤穂義士祭で大石内蔵助をつとめるのは、超大物俳優の高橋英樹さんである。御本人のブログにも予告が載り、楽しみにしておいでの様子がわかる。「私はこれだけ時代劇を演じながら 大石内蔵助 主役は舞台だけ」と述べられている通り、意外に映像作品の大石役がない。「女と男の忠臣蔵」シリーズで2本つとめているが、これは銘々伝なので脇役にとどまる。(以下の記述では敬称を省略させていただきます)
 これは、華麗な剣さばきが裏目に出たのかも知れない。そりゃもう桃太郎侍に限らず、高橋英樹が出ればムチャクチャ強い剣豪に決まっているのだが、そうすると大石じゃなくって安兵衛役者だ。頭の中で里見浩太朗や松方弘樹と剣を交えさせたら、間違いなく高橋英樹の勝ちなのだが(個人の感想です)、その分、大石レースでは不利になる。
 もう一つは年齢的な不運がある。討ち入り時の大石は四十代半ばだが、俳優の年齢はもう少し上でないと貫目不足になる。前述「女と男…」の時はまだ少し若かったから、これから本格的な忠臣蔵の機会はあるはず、だった。しかし、その後時代劇が斜陽に向かう。忠臣蔵の制作本数が減って、ついに機会を逸したということだろう。
 そう言えば、同じ「女と男…」シリーズで大石をつとめた田村高広も、不思議なことに本格的にはやっていない。お父さんは高橋と同じ意味で安兵衛役者だし、正和は堀田隼人が本役。一家の中で一番大石向きなのが高広だと思う。一力なとやったら無類だったに違いない。時代的には撮っていてもよいとおもうのだが、残念なことである。東野栄治郎の吉良がない(サラリーマン忠臣蔵だけ)ことと併せて遺憾の極みである。
 田村高広版の不在は忠臣蔵映像史の欠と言うべきものであるが、今さら如何とも致しがたい。しかし、高橋英樹版はまだ可能性がある。なんとか実現してもらいたい。それが無理ならせめて討ち入り姿をみたい、という向きには、今年の赤穂義士祭が絶好の機会となる。可能な方は是非おいでになって下さいと云爾。