出たときから話題になっていたので興味は持っていた。このたび文庫化されたので、購求した。
読後の感想、となると、正直イマイチである。いや、面白くない訳ではないのだけれど、激賞するほどでもないという感じである(以下、ネタバレあり)。

大体、これ誰が主人公なんだろう?津軽采女、かと思っていたのに、ほとんど活躍せず、最高の見せ場が釣りと関係ない綱吉乱心。朝湖・其角の方が主となるが、肝心のところで島流しになっちゃってたり死んじゃってたりする。
最高の存在感を発揮するのは新造だが、これは最初から死んでいる。本編の主筋は彼をめぐるミステリーといってもよいが、謎は勝手に解けるので名探偵は不在なのだ。

で、采女が吉良の娘婿だという史実から赤穂事件に筆が及ぶのだが、釣りとは無関係なので、完全に脇筋。せっかく其角がいるのに、ほとんど物語的に機能しない。
作者の手腕からすれば、もう少しうまく織り込むことができたはずだ。いや、むしろこの作品に忠臣蔵はいらなかったというべきかも知れない。
本作に先行して長辻象平『忠臣蔵釣客伝』が同じ講談社から刊行されているが、こちらは文庫未収録。作家のネームバリューなのだろうが、是非文庫化してもらいたいと思う。いや、それ以上に『何羨録』を学術文庫にお願いしますよ、講談社さん。