ジョン・ハッティ(John Hattie)氏の講演会が、2026年3月18日に盛大に開催された。
開催地は、スイス・ドイツ語圏に位置する北西スイス教育大学。主催者は、教授学者ヴォルフガング・バイブル教授 (Prof. Dr. Wolfgang Beywl)であった。
ハッティの教育論はドイツ語圏において、ますます盛んに研究・実践されている様子が伝わってくる講演会であったようだ。
会場には、700名を超える参加者が集い、オンラインでも1000名を超えるアクセスがあった。
講演会とともにパネルディスカッションも開かれたこのイベントへの反響は、「学習の可視化研究が、授業や学校運営の改善に向けた具体的な指針を提供していることを如実に示している」とコメントされている(Newsletter Lernen sichtbar machen, Nr. 42, Mai 2026より)。
以下、ニューズレター(同)の内容をかいつまんで紹介する。
授業では、ほぼどんな働きかけでも効果をもたらすため、その影響力の強さが重要になる。
だからこそ、
- エビデンスに基づいて授業に関する決定を行い、
- 「評価的」に検証し、さらに発展させ、
- それによって「好意的な意図」の域を超え、「実証された効果」へと到達することが重要になる。
その際、達成された成績レベルだけが重視されるべきではなく、むしろ学習における進歩こそが重要となる。
ハッティは、最も強力な影響要因を4つの「大きなアイデア」にまとめた。以下の図は、彼の講演の構成の軸となる、これらのアイデアを示している。
1.学習風土と教師の考え方が成果を左右する
大きな学習の進歩の基盤となるのは、学習風土と教師の姿勢である。これに続いて学習プロセスが進行し、その後、学習者の成果が現れるが、その中心となるのは、学習者が学級やグループの一員としての帰属意識を持てること、間違えても学びの糧として前向きに捉える文化の醸成、そして現在の成績レベルを超えて全員に高い期待を寄せていることである。
2.学習者は自らの学習を自己操作的に進めるべきだ
ハッティは、学習者がいかにして自らの学習を能動的にかたちづくれるかという問題を取り上げている。教師も学習者も、すべての人にとって、「何を」知っているかと「いかに」知っているかの違い、そしてその両者が互いに関連し合っていることが明確でなければならない。教え方の方略を、まずこの表面的な理解、次に深い理解、そして最終的には転移・応用的な理解に合わせて明確に調整することが極めて重要である。講演会では、これら3つの理解レベルに対して、どのような学習方略を指導し、習得させるべきかが示された。
3.自分の影響力を把握せよ
可視化された学習の中心にある核心的な考え方は、優れた教師は、自分の授業が実際にどのような影響を与えているかを把握している、ということだ。このことを教師は教室に入るたびに常に自問すべきである。これにより、教師の役割は拡大する。つまり、教師は自身の授業を自ら評価する役割も担うことになるのだ。
ハッティは、次のように問いかけることを促した。
自分の授業は、意図した通りの効果を生徒に引き出せているだろうか?誰に届き、誰には届かなかったのか?私の指導法は、これをどの程度促進したのか、妨げたのか?
教師は積極的にフィードバックを求めるべきであり、学習成果だけでなく学習プロセスも可視化し、エビデンスに基づいて振り返る必要がある。教師は好奇心を持つべきだ。
4.学習に対する責任を共に担う
学習の可能性を広げるのは、個々の教師だけの役割ではなく、全員の共通の課題である。ハッティが見学し、北西スイス教育大学のチームが支援する2つの学校の事例のように、教師全体が教授と学習を可視化すれば、明確な集団的な有効性への期待が生まれる。これは、学習の進歩と最も強く関連している要因の一つである。
さっと、以上がニューズレターが伝えている講演会のダイジェストである。
ハッティ研究に基づく実践は、着実に浸透していっているように見うけられる。
