原田信之(名古屋市立大学、元岐阜大学)

原田信之(名古屋市立大学、元岐阜大学)

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『スクールリーダーのための教育効果を高めるマインドフレーム:可視化された学校づくりの10の秘訣』

 

ジョン・ハッティ、レイモンド・スミス 編著
原田 信之 訳者代表


子どもも教師も伸ばす学校経営

 本書は、生徒の学力を高める学校を導く「できる」リーダーの特性はどのようなものかについて「10のマインドフレーム」を紹介している。特徴的なのは、「何を実践するか(すべきか)」という行動の提示ではなく、その根底にあるべき「なぜそれを実践するのか」という信念や価値観(マインドフレーム)に着目しているという点であろう。
 また、子どもがよく学び育つ学校と、教師が力を発揮し、能力を伸長させる学校には共通性がある、という考え方が一貫している点も特徴的である。すなわち、よく子どもを伸ばすための教育や学習のデザインは、そのまま教師の力を伸ばす学校マネジメントにも応用できる、という考えが示されている。
 これを受けて、10のマインドフレームは、学校が向かうべき方向性に関する「診断」の場面のもの、診断を受けて「介入」を検討する場面のもの、それらを同僚教師との協働において「実施」する場面のもの、その結果を適切に「評価」して次のサイクルに向けた「診断」として活用する場面のもの、といったように、生徒の学習に関する改善プロセスになぞらえて提示される。目の前の子どもの学力を伸ばすべく備えるマインドフレームが、部下・同僚や組織の力を伸ばすのにも活用できるという構造は、「良い教師」と「良い管理職」を連続的に捉えるヒントにもなるだろう。
(2970円 北大路書房)


(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

 

日本教育新聞↓

https://www.kyoiku-press.com/post-263215/

フィードバックの効果量の分散原因

 

 フィードバックの効果量の分散原因を探るために、25のメタ分析のいくつかから確かめておこう。

 

 まず、スタンドレーの「教育/治療目的の強化としての音楽の効果に関するメタ分析」(1996)に示されたフィードバックの効果量は2.87、リサコヴスキー&ウォルバーグの『教室での強化学習』(1980)に示された効果量は1.17、ウィットらの「教師の即応性と生徒の学習との関係:メタ分析」に示された効果量は1.15、スワンソン&ルシア「ダイナミックなアセスメントに関する実験的文献の選択的統合」(2001)に示された効果量は1.12と極めて高い結果を示している。一方、スーザン・ウィルキンソン『教師の賞賛と生徒の学力の関係性』 (1980)に示された効果量は0.12、賞罰を影響要因として分析したゲッツィーらの「子どもの識別学習におけるフィードバックの種類と組み合わせの効果に関するメタ分析」(1985)に示された効果量は0.14など、効果がわずかしかないものが含まれていることがわかる(ハッティ 2017、付表B「900超のメタ分析結果」参照)。

 

 そもそもフィードバックとは、「課題に関する現状の理解と目標とされる理解の程度との間の隔たり(gap)を埋め合わせるために提供される情報」(本書4頁)のことである。この課題に関する現状と目標(達成規準)との間の隔たりを埋め合わせるために差し向けられる支援的な指導行為に着目したのはランプラサードである。ランプラサードは、「フィードバックとは、あるシステム要因の現状レベルと参照レベルとの隔たりに関する情報であり、その隔たりを何らかの方法で修正するために使用されるものである」(Ramaprasad 1983, p.4)とした。

 

 学習目標(達成規準)に近づけるために提供される情報がフィードバックであるとすると、それを受けとる生徒側は、教師からどのような情報が与えられることを期待しているのだろうか。それは「さらによくできるように、活動をどのように改善すればよいのか」(ハッティ&イエーツ 2020、102頁、引用文中の傍点省略)がわかる情報であり、これは学習目標との隔たりを埋め合わせ、目標に接近していくのに有意な情報のことである。

 

 ハッティによれば、生徒の側はうまくいかなかったことや、やり残したことがあったとしても、その過ぎ去った過去のことを考えるより、「次はどこに向かえばよいのか」という未来志向のマインド傾向を有するという(同102-103頁)。反対に、生徒が望まないのは「不必要に長たらしく、個人的に傷つけられるように感じる批判」(同102頁)である。教師側からすると、生徒の誤認や間違いを修正するのに有益な情報を与えているつもりの言葉、すなわち、教師には生徒のためを思ってのフィードバックのつもりのものが、批判めいた言葉として受けとられ、結果的に「生徒の目には個人的で勝手な評価と映ってしまう」(同)ことがあるという。ここで考えるべきは、生徒の誤認や間違いは数が多いうえに目立ちやすく、教師側からすると可視化しやすい(取り上げやすい)ということである。「教師はあたかも負のフィードバックを通してその情報が獲得されるかのようにしばしば振舞ってしまう」(同103頁)ことである。つまり、教師から生徒への口頭フィードバックは、意図的ではないとしても、誤認や間違いをあげつらうのと大差ないような言葉を生徒に返していることも起こりうるということであり、繊細に扱うべき教育行為である。教育方法を通しての教師の成長という視点からも、フィードバックの奥は深い。

 

「あとがき」(『教育の効果:フィードバック編』法律文化社、2023年6月、248-250頁)より抜粋

 

 

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 ハッティのこれまでの邦訳書においても、フィードバックを深掘りしているところを見つけることができる。フィードバックが説明されている主な箇所は以下のとおりである。

 

 1.『学習に何が最も効果的か』(あいり出版、2017年)、第7章「授業の流れ:フィードバックの位置づけ」173-211頁

 2.『教育の効果』(図書文化、2018年)、「フィードバックを重視する指導」169-185頁

 3.『教育効果を可視化する学習科学』(北大路書房、2020年)、8章「フィードバックの役割」101-114頁

 4.『教師のための教育効果を高めるマインドフレーム』(北大路書房、2021年)6章「私は生徒にフィードバックを提供して理解できるように支援し、私に与えられたフィードバックを解釈して行動する」144-183頁

 5.『スクールリーダーのための教育効果を高めるマインドフレーム』(北大路書房、2022年)6章「私は教師や生徒にフィードバックを提供して理解できるように支援し、私に与えられたフィードバックを解釈して行動する」104-120頁

 

 

 

 

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