ダンナさんが1日お休みの日。

 
『佐藤さん』が仕事から19時過ぎに帰宅すると、ダンナさんが夕食の支度をしていてくれてました。
 
ダンナさんは昔、舞台俳優をしていた頃に居酒屋の厨房でバイトしていたので、
『佐藤さん』より料理が上手いです。家事もテキパキ要領良くこなせます。
 
ほんとに家事は、マルチタスクばりばり活用するプロフェッショナルな仕事だなぁ~…と、
 
家事能力自己採点が低いわたしは、世の中の『お母さん』を尊敬せずにいられません。
 
食卓にはサラダと野菜炒めとかつおのたたき。
 
 
「いただきます」
 
と、みんなで食べ始めてしばらくして、
 
ダンナさんがぽつり。「タイもチイも、なんでカツオのたたき食べないの?」
 
確かに刺身大好き子供たち。いつもだったらすぐに手を伸ばすのに、野菜炒めにしか箸をつけてません。
 
カツオのたたきは、ダンナさんが柵で買ってきてたものを身をあぶって切り分けたもので、我が家の切れ味が格段に落ちてる出刃包丁でよく切り身にできたなって思える見た目ではありましたが……。
 
普段食費節約でなかなか刺身なんて出ないから喜ぶと思ったのに……
 
野菜ばかりじゃ子供たちがあまり食欲わかないと思ったから用意したのに……
 
と、ダンナさんの表情から口に出さずとも長い付き合いで思考を何とか読み取る『佐藤さん』。
 
チイ坊は、すかさず
「パパの野菜炒め、とても美味しくてたくさんたべちゃったから、刺身忘れてた」
と、明るく話したけど。
 
タイ坊が俯きかげんに、不安そうにつぶやいた。
「刺身ってアニサキスの寄生虫がいることあるんでしょ?」
 
ダンナさんの周りの空気が、グワっと波打ち、気温も一気に上昇したように感じた。
 
「食いたくないなら、食うな…!」
 
怒鳴りつけはしなかったけど、低いぶ厚い声に、タイ坊が
 
「あ、ぼくまたやっちゃった!?」
 
という顔をして、あわててダンナさんを見る。
 
「パパ、ごめんなさい。あのね、この頃よくTVでやっててね。気をつけなさいって。
だから、僕、心配で……」
 
確かに、報道してたなぁ……σ(^_^;
 
タイ坊の言葉が、ダンナさんに火をつけた。
 
「虫なんて、どこにだっているんだよ!野菜炒めのキャベツにだって、サラダの葉にだって青虫がつく。お前の食べてる米にだって、米びつの中に虫が出る時があるんだ。
 
お前の身体にだって虫がいる。顔の皮膚には顔ダニだっているし、身体の中は微生物だらけ。人間無菌状態ならすぐ死ぬからな!
 
虫と一緒に生きてんだよ!それでも嫌だってんなら、食うな!!」
 
シーンとなる食卓。
 
ダンナさんの剣幕に目を見開いたままだったタイ坊は、視線を落として涙をぽとぽと落としながら静かに白米と味噌汁だけを食べ、
 
「ごちそうさま」
 
と席を立ち、食器を片して寝室にこもってしまった。
 
つづく……(*_*;
 
 
 
 
 

 
 


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