フリーになって10年たった頃、高校の時世話になった

恩師の退官パーティーで、NHKに就職した同級生と再会した。

 

同級生「おまえ今なにやってんの?」

のりお「アニメーター」

同級生「じゃあうちの仕事やっとくれ」

のりお「うん」

………こうして

同級生は、ひこねのりおがどんなアニメを作っているかも知らずに

ひこねのりおは、同級生が頼む仕事がどんなものかも知らずに

交渉は成立し、みんなのうた【ポンタ物語】が誕生した。

1977年のことである。

【ポンタ物語】は、化けられないタヌキの物語だ。

詩をつくったのは、伊藤アキラ氏。

『〜この木何の木気になる木〜』など耳になじんだ

歌を数多く手がけてきた物語の紡ぎ手である。

 

『人を騙せなければタヌキではない』という価値観の世界で

化けられない仔ダヌキのポンタ。

「ぼく だませないの……」

父ダヌキに修行をつけられたり

神頼みをしてみたりするが、

どうしてもポンタは、化けられない騙せない。

(↑胡散臭気なタヌキ神様。描いていて楽しかった)

結局、仔ダヌキポンタは自分以外の何にも化けられぬまま

家を出る。

化けず騙せず生きられる場所を探す旅に出る。

「ぼく だませなくても いいの!」

 

この物語では努力や根性で化けられるようにならない。

化けられない、騙せない自分を、ポンタは肯定して生きて行く。

あくまで自分の価値観で、自分にあった場所を探す。

 

歌うのは『おひょい』のあだ名をもつ俳優の藤村俊二氏

独特の歌声が物語によく似合っていた。

 

ひこねのりおが関わった、みんなのうた作品第一作目なので

思い入れ深い。

コンテが残っているので見て欲しい。

 

このコンテを描いてから44年。

人を騙せないタヌキの旅は終わっただろうか。