「集団的自衛権」は、「自衛権」と名前がついているので騙されてしまうのですが、そもそも自国を守るための「自衛権」ではなく、他国同士の戦争の当事国の一方の側に立って、戦争に参戦していくことなのです。ですから、他国から見たら、単なる先制攻撃に他なりません。

日本が戦争当事国になり、しかも先制攻撃をしたことになる。その結果、日本全土が攻撃対象となる、ということを、私たちは覚悟しなければなりません。

現実に、アメリカは2003年にイラクを攻撃する際、先制自衛権を理由としています。日本も先制自衛権に踏み込む可能性が十分にあります。

安倍首相は、「日本人の命を守る」とくり返し主張しますが、集団的自衛権行使が認められてしまえば、日本人が犠牲になるリスクはむしろ高まるのです。本気で日本人の命、日本の子どもたちを守るのであれば、集団的自衛権を安易に認めてはならないと思います。

もうひとつ、大事な点を確認しておきましょう。安保法制懇の報告書などでは、軍事力を拡大する中国を封じ込めるために、抑止力を高めねばならない、そのために集団的自衛権が必要、という説明がさかんになされています。

集団的自衛権とは、自国防衛と無関係の戦争に参戦することを意味しますから、中国からすれば、再び日本が軍国主義化している、と映るのは必至です。そして今度は中国が日本に対抗して軍事力を高めることにつながるのは当然のことです。その結果、日中間の関係をますます悪化させ、緊張関係を一気に高めてしまいかねません。


悪徳商法のひとつに、会議室などにお年寄りを集めて、商品を売りつける商法があります。その際、この商品の効用を過大に説明し、もしいま買わなければ大変だ、という不安をあおります。十分考える時間も与えられず、参加者は、集団心理も働いて、最後にはみなその商品を買わされてしまいます。
安倍首相は、集団的自衛権の実態を国民に伝えず、そのリスクも伝えず、しかも嘘までついている。安倍首相が行っていることは、国民を騙すための「悪徳商法」だと言えます。
しかも、燃費ばかりくって家計を圧迫する。こんなマイナス面をいっさい伝えずに、「どの家にもありますから」「これがないと家の防犯が守れません」と不安をあおって、「いま買うしかない」ととにかく相手に考える時間を与えず、押し売りをする。
いま安倍首相が行っているのは、悪質な悪徳商法と言わざるをえません。しかも、マスコミを大々的に動員して、国民を集団催眠に陥らせようとしている。

アメリカはこの10年のあいだで国防費を50兆円減らすことになっています。1年平均5兆円です。この5兆円は日本の1年あたりの防衛予算に匹敵する額で、それを毎年減らすとしていますが、アメリカの世界戦略そのものは変更するとは言っていません。

とんかく、放っていたら中国の軍拡に追いつかない、だから集団的自衛権行使を可能にして軍事的な連帯で中国を封じ込めようとおっしゃっています。

エコノミストの浜矩子さんの言葉を借りると「平成の富国強兵政策」を安倍政権はすすめています。経済を強くするのは軍事力を高めるためだと、安倍政権のブレーンの経済学者たちも正直におっしゃっています。

ここで明らかなのは、集団的自衛権、特定秘密保護法、日本版NSC,新防衛大綱、武器輸出3原則の廃止、これら一連をワンセットとして安保法制懇の北岡座長代理たちは理解し、安倍政権はその考えにもとづき、憲法9条破壊の立法をつぎつぎすすめている、という現実です。