ゴールデンウィーク明けの最初の日曜日であるこの日、私たちがターンパイク箱根小田原本線の終点にある大観山レストハウスに到着したのは、午前11時の少し前でした。
芦ノ湖畔から椿ラインの坂道を登り、大観山山頂を巻き込むように走る右コーナーを抜けて私が車を止めたのは、事故現場だった可能性が最も高い、と思われる右コーナーに一番近いこのあたりでした。

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事故現場のコーナーは、芦ノ湖側からみて右側は石垣、左側は谷ですし、見通しの効かないコーナー付近ということもあって、たとえ一時的にせよ、車を停めておくことのできる場所がありません。
付近で車を止められる場所といえばレストハウスの駐車場しかなく、その駐車場から現場のコーナーまでは歩いて行かざるを得なくなる、と分かっていましたから、当然のようにその現場に一番近い場所を選んで車を停めました。

ゴールデンウィークが明けたばかり、ということで、都内からここまでほとんど渋滞もなく順調なドライブでしたが、ここ大観山レストハウスの駐車場は、それこそ駐車場がいっぱいになるほどのオートバイと車、人でごった返していました。
この大観山レストハウス、オートバイや車を趣味にする人にとってはメッカのようなところで、二輪ならドゥカティやジレラ、四輪ならポルシェ、フェラーリ、マセラティなど、普段あまり見掛けることのないお値段お高めの趣味の車が、ごく当り前のように集団で集まってくる、動くモノ好きにとってはたまらない場所です。
この日もたまたま何かイベントが行われていたらしく、駐車場には「Motorrad BMW」と書かれた幟旗が立てられ、たくさんのBMW乗りの粋人達が集まってきていました。

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駐車場に車を停め、サイドブレーキを引いて車を降りた私は、そのあまりの人とオートバイの多さに圧倒されて(すごいなあ…)とその駐車場の様子に目を奪われていました。
車を降りて事故現場である大観山山頂下の右コーナーに向かって歩を進めながら、レストハウス下の駐車場に集まる人たちやオートバイに気を取られ、ほんの一瞬、私の意識の中から、同行していた弟とAさんが掻き消えていました。

と、ふと見ると、私が向かおうとしていた大観山山頂とは別の方向にAさんが歩いて行くのが眼の端に写りました。

(あれ?)

進めていた歩を止め、あさっての方向へと向かうAさんの方に向き直った私は、慌ててAさんの後を追いました。
何か珍しい車かオートバイでも目に入ったのでしょうか?
あるいは、この人ごみの中に、面識のある方でも見つけたのでしょうか?
Aさんの足取りは早く、まるで何か探し物を見つけて、そこに急いで向かっているような性急さを感じさせました。

(…何を見つけたのだろう?)
黙って先を行くAさんに従い、弟と私はそのAさんの背を追いました。

しばらく足早に歩いたAさん、突然立ち止り、

「○○○○。」

そう口にされました。

「○○○○。」
単語なのか言葉なのか、あるいは単語としては意味のない感嘆詞なのか?
最初私は、そのAさんの口から発せられた「音」が良く聞き取れず、何を仰っているのか理解できませんでした。
その「○○○○」が耳に入って数秒、その言葉とも音ともつかないものが私の頭の中でゆっくりと形を成して行き、

「ここだよ。」

という単語だ、と分かるのに、私の意識としてはかなり長い時間を要したような気がします。よほど意外で、理解を超える答だったからなのでしょう。

その時、Aさんが立っていた場所は、ここでした。

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…えっ?(・ ・)(・ ・)←オトウトトワタシ
























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弟と私は、そのあまりに予想外なAさんの種明かしに、しばし口を開けたまま言葉を失ってしまったのです。