箱根新道の最初のIC、須雲川の出口看板が見えて来ました。

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須雲川IC

この箱根新道、さすがに天下の険と言われる箱根だけあって傾斜こそ厳しいですが、距離はと言えば大したことはなく、始点である料金所から終点の箱根峠まで13km程度しかありません。
その最初のICである須雲川出口までであれば、料金所を抜けてから5分ほどしかかからない距離です。
が、この須雲川の出口看板を目にした瞬間、私は言いました。
「ここで下りて、旧道を行きましょう。」

…同乗していた弟やAさんは、ちょっと変に思ったかもしれませんね。
せっかく有料道路に乗って料金を支払ったのに、その途端に降りることになってしまったからです。
しかも、これではルートが遠回りになってしまう、と、土地勘がある人ならすぐに分かるはず。
「お前は料金所を通るためだけに箱根新道へ車を向けたのか?」と思われても仕方ないでしょう。

当初の予定では、今回の目的地であるターンパイク箱根小田原線の終点レストハウスへは、箱根新道で芦ノ湖大観ICまで行き、そこから椿ライン、というルートを辿る予定にしていました。
が、Aさんのお話を伺っているうちに、これまで検討の俎上に上げて来た地点、旧道の七曲、椿ラインの芦ノ湖畔から芦ノ湖大観ICに至るまでの区間、私がここだったのでは、と思ったターンパイク箱根伊豆連絡線との分岐点手前の右コーナー、そのすべてをご覧頂いたとしたら、果たしてAさんはどのようなリアクションを返して来られるだろうか?という興味が頭をもたげて来たのです。
もしかしたら、窓の外の景色を眺めているうちに「…あ、ここだ!」と、思わぬところで予想もしなかった真相が明らかになるかもしれない。
Aさんには失礼ですが、「ひょっとしたらAさんの記憶違いがあるかもしれない」と…。
そう思ったのです。
ここで私はAさんの手を借り、これまで検討してきた推理の「最後の棚卸」をしてみる気になった、という訳です。

須雲川ICからまず目指そう、と思ったのは、旧東海道の七曲。
須雲川ICの出口は箱根湯本から元箱根町を結ぶ旧東海道に接続していて、箱根新道から旧道の七曲へ向かおうとするならば、この須雲川ICで新道を下りる必要があります。

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箱根新道を下りて旧東海道を西に向かい、暫くすると一番最初にここが事故現場だったと考えていた七曲に至ります。
七曲がりの厳しい坂道をゆっくりと駆け登ると、最初の候補地である、見晴し茶屋手前の最終左コーナーが見えて来ました。

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「私、一番初めは、ここが事故現場だったんじゃないか、と思っていたんですよね。」
七曲の最終左コーナーを抜けながら、私は後席に座るAさんへ話しかけました。
ちらり、とバックミラーをのぞくと、後席のAさんはシートバックから上体を起こし、前席のバックレストに手を掛けて周囲の景色に見入っています。

私は、Aさんがここでどんな反応を見せるか、注意深くバックミラー越しにAさんの様子を伺っていました。
あるいは、ここで「…あ!」と何かを思い出したような仕草を、Aさんが見せることはないだろうか?
どこかにそんな期待がなかった、と言えば嘘になるでしょう。

しかし、Aさんは私の語りかけに軽く頷いただけで、特にこれと言った反応は見せません。
検証のために過去にも何度かここを訪れた際、ついついこのつづら折れの坂道にそそのかされて少しくスピードを上げて駆け抜けてしまうことがほとんどでしたが、それに比べ今日はいつもより大分ゆっくりとしたペースです。
走る私の運転する車は、特に何事もなく、七曲の左最終コーナーを走り抜けて行きます。
淡く期待を抱いたような、劇的な出来事は何も起こりません。

(やはりここは何もなしか…)
私が最後の最後に設定した各候補地の棚卸のひとつめ、七曲の見晴し茶屋手前にある上り左最終コーナーは、これで完全に候補から落ちることになりました。