花金の真っ昼間。

某駅前の交差点。

「○○ちゃん(俺の呼び名)プリンケーキとショートケーキどっち食べたい?」

恋人繋ぎした右手で俺の左手をギュッと握り締めながら彼女が問う。

「プリンケーキ!」

信号が青へと変わる前に即答。

「私もプリンケーキがオススメなんだ♪」

目的地の某百貨店地下一階に到着。

「ケーキ屋さんメッチャ多い!」

広大なフロアを見渡し思わず驚き戸惑う俺を引き連れる如くお目当ての洋菓子店に案内する彼女。

「プリンケーキ二つ下さい♪」

お洒落な長財布から代金を取り出だそうと彼女。

デート時に彼女の財布の紐を決して緩ませない信条の俺は「気持ちだけで十分」とクールに呟き代わりに支払おうと考えた。(その方が株上がるだろうと云う姑息な思惑含め←笑)

けど。

【こんな機会滅多に訪れないしむしろ強く印象に残るはず】

と…今回は特例的に甘えさせて貰った。

そして二人の秘密基地へ。

彼女は持参した可愛い蝋燭をプリンケーキの中央にそっと刺し立てる。

その導火線に些か勢いよく擦ったマッチで火を灯す俺。

刹那。

彼女の歌声。

『涙サプライズ!』

AKB48は俺達共通の神推しアイドル。

流石。

分かってる。

彼女が歌い終えるや蝋燭の火を吹き消す俺。

「○○ちゃん○○歳おめでとう!」

彼女は満面の笑みで拍手。

「ありがとう!あっ、でも…歳ハッキリ言わなくて良いから」

二人同時に腹抱え大爆笑。

想い出す。

今から○年前の年の瀬。

外気を凌駕する程の侘しく冷え切った箱の空間。

二人は僅かばかりの距離を保ち向かい合った。

彼女はステージ上。

俺は客席。

キラキラしたアイドルとしがないヲタの関係でしかなかったのに。

何時しか相思相愛の禁断のガチ恋へと。

平成最後のマイバースデー。

彼女と出会えた奇跡と幸せを改めて強く噛み締めた。

○月には勿論お祝い返し固く約束。