※これは、私と一緒に暮らし始めたミーコとその子供たちとの2000年から2003年当時について綴ったエッセイです。過去記事は『猫家族(エッセイ)』のテーマで絞っていただけますと、簡単に検索できます。お時間がありましたら、読んでいただけますと嬉しいですニコニコ

 

 

  その日は朝から雨だった。

  キキだけは朝御飯抜き。水分も制限した。そして、嫌がるキキを洗濯ネットに入れて車で病院に送り届けた。

 

  家の中はいつになく静かだ。見るとミーコもモモもサクラもみんな寝ている。つられて私もつい台所のテーブルでぼーっとしてしまった。

  ミーコを避妊手術させた時には、お腹の傷口に貼ったテープを噛んで取ろうとした。傷口は自分で舐めて治す習性があるのだから当然だ。しかし、雑菌が入ると治癒が遅れると言われ、お腹を覆う腹巻きや首の周りにつけるラッパのようなものを病院で勧められた。それをつければ、ミーコがテープをはがすことが出来ないからだ。自分で何種類か腹巻きを作ってみたが、どれも数時間でミーコは脱いでしまった。おそるおそるテープを剥いで傷口を見ると、腹部の柔らかい肉皮が切り開かれた跡が数針縫われ、かすかに出血している。何とも痛ましく、ミーコに申し訳なく思った。健康な身体を切り開くことには、理屈でなく罪悪感を禁じ得ない。仕方がないとは言え、肉を切り、臓器を摘出するのはなんとも残酷なものだと、後悔する自分がいた。しかし、やはりこれ以上子猫が増えると困るのだ。と、手術を正当化するために、自分の気持と折り合いをつけるのに手間取った。

  そう、キキが子供を産むと困るのである。仕方が無いのだと自分に再び言い聞かせていると、電話が鳴った。

  「あの、ナカマ獣医(仮名)ですが、キキちゃんなんですけど。」

何かあったのだろうか。不安を抑え切れず最悪の場合をつい考えてしまった。

「あの、キキちゃん、女の子じゃなくて男の子だったんです。麻酔はしたんですけど、メスを入れる前に気がつきまして……。避妊手術は出来ませんが、去勢手術はどうされますか?」

 

2015年8月29日のキキ。

愛情深く、いつもグルーミングしてくれる。

大好きだよ、キキちゃん。