子猫達を階下に下ろした夜である。トイレの場所を教えた後、子猫達をコタツに入れてみた。中はぬくぬく。布団をそっとめくって中を見ると、子猫達はプロレスごっこ。くんずほぐれず絡み合っている。ミーコはそれをじっと見守っている。ミャーのだった毛玉のおもちゃを渡してみた。子猫の頭ほどもあるモケモケフワフワの玉に順番にかじりついている。自分達も毛糸玉のようなものであるが、その感触を楽しんでいるように見える。

  この時、初めて気付いたのは子猫は歩かないということだ。いや、それは子猫達にしてみたら歩いているつもりなのかもしれないが、一足一足跳ねているように見えるのだ。その足に備わってあるバネの制御調節をちょうど良い加減に出来ないのかもしれない。もしくは、足が短いのに、速く前に進みたいので、跳ねてしまうのかもしれない。ピョコピョコ体全体を弾ませて、部屋中を走り回り、兄弟達と遊びまわっている。

  そう言えば、猫って助走も無しにすごいジャンプをする。じっと行きたい場所を見つめてそこまでの距離を測り、一瞬にして力を結集して目的地へと後ろ脚を蹴る。人間には考えられないほどの瞬発力だ。それは猫の骨格を見てもうなずける。前足の付け根はそれほどでもないが、後ろ脚は非常に太く、強力な靭帯と腱の存在が確かめられる。

  子猫達は意味もなく必要もなくても、その運動能力と生命力を発揮せずにはいられないのだろう。静かなのは眠っている時と、おっぱいを飲んでいる時だけだ。かの作曲家の目にも、子猫の溢れる生命力が踊っているように見えたのだろうか。記憶のひずみから短い一節をかろうじて引きずり出し、思わず口ずさむ私であった。