この日子猫達には沢山の初めてがあった。トイレも初めての体験である。いつでもトイレ訓練が始められるように、新しいトイレは買ってきてある。砂を入れ、ミーコのトイレからも砂を拝借した。そうするば、ここがトイレだと本能で知るからだ。

  お乳を飲み終わった子猫を一匹ずつトイレに入れた。ミカンもミルクも初めての砂の感覚を踏みしめながら、猫らしくフンフン匂いを嗅いだ。賢いミーコの子どもだから、この子達もきっとすぐにトイレを覚えるだろう。その様子から私はそう確信した。

  ところが、てぶくろの様子が何やら変である。フンフン匂ってると思っていたら、頭の動きが他の子より激しい。ようく見ていると、なんと匂うのではなく、砂を口に入れているのである。人口砂だし、体に良いとは思えない。私は慌てて口に指をつっこんで、砂を出させた。しかしてぶくろは、そんなことは一向にかまわない様子だ。懲りずに何度でも砂を噛もうとする。まるで人間の赤ちゃんみたいだ。何でも口に入れて、口で確かめようとする。てぶくろの名前はこの場で即座に改名された。新しい名は「カミカミ」である。どうやらこの子が末っ子である。

  この後、数日に渡って機会を見つけては子猫をトイレに運び、躾をした。トイレに関しては、ミーコは、まるで私に任せっきりにしていたように思う。ミーコときたら、トイレの仕方を教えるというより、いつまでも赤ちゃん扱いして、お乳をやってはオシッコを吸い取っていた。ちゃんと始末が出来るのだろうかとある日心配で観察していると、大きく育った子猫のオシッコが吸い取りきれず、却ってこぼれてしまう場面もあった。そこで、ミーコに頼らず私は私で、根気強く、そそうの後をきれいにし、躾を繰り返した。夜にたまにそそうはあるものの、随分うまくいったのではないかと思う。何度かそそうした割には、そそうした場所でオシッコをする癖もつかず、一月くらいでトイレをきちんと覚えたからである。尚、ミカンはそそうを一度もしなかった。そそうをしたのはミルクとカミカミである。