それからしばらく私は二階の部屋にさえ入らず、入り口から覗き見るだけにした。しかし、どうしても赤ちゃん猫達の様子が気になる。小さいだけで、猫かネズミか豚の赤ちゃんかの見分けもつかない(失礼!)温かいポヨポヨが気になって仕方がないのだ。

  ミーコも見るだけならそろそろ許してくれるかな、とそうっと部屋に入り箱の前に座った。ミーコはすぐに箱から出てきて、私の横に座った。警戒もしているのだろうが、一応を許可をもらったように感じた。そうっと覆いを上げて中を覗いた。赤ん坊達は温かな空気の中、ヒクヒクしながらヨタヨタもつれ合っている。まだ目は開いてなさそうだった。

  私はこの子達の事が気になって気になって仕方がない。一体いつになったら目が開くのだろう。この子達はどんな子猫達なんだろう。

  仕事から帰るととっぷり日が暮れている。わざわざ電気をつけると脅かしてしまうのではと憚られ、私の訪問は朝に限って行われた。しかし成長は遅々としており、生れてから十日経ってもまだ目が開かなかった。目も開かないまま、兄弟でヨタヨタじゃれあい、お腹が空くとお母さんのお乳に正確にくわえつく。まれにうまく見つけられない所にいると、ミーコがさりげなく体位を変えてオッパイを与える。三匹に乳を吸われる間、ミーコはうっとりと目を閉じる。

  しかし二週間目のこと。「お早う」と覆いを取ってみると、ヨタヨタしている茶色坊主の目が開いていた。丸い目がくりくりしてる。あんなに器量が悪いとぼやいていたが、とんでもないかわい子ちゃんだった。カッパの皿に見えた柄も成長して縞柄に変わった。ぺちゃっと寝ていた耳もぴんと立ってどこから見ても猫の赤ちゃんだ。

  なんてかわいらしいのだろう!他の子達の目はまだショボショボしているが、こうなれば明日あたり本当のご対面となるだろう。

 

  翌朝、早速猫達を見に行くと…、おおっ、全員の目がぱっちり開いている。とにかく凄い器量良しだ、と私には思われた。このかわいさ、ただ者ではないゾ。抱っこして撫で回したいのをぐっとこらえて見守った。しかし、幸せのあまり声を出して笑わずにはいられない。

  三匹の猫達はまだ動きはよたっているものの、目が開いたとたん、以前に比べると格段に動きがしっかりしたように思える。

  この余りの可愛さが私に再び過ちを犯させた。私は覆いを取って、幼児へと成長した子猫達をカメラにおさめたのである。

  ミーコは私のそういう行為を危険と見なした。夕方仕事から帰った私が、ダンボール部屋を覗くと、そこに子猫達の姿はなかったのである。

 

奥からモモ、背中を見せているのがサクラ、白手袋がキキ

 

サクラが顔を見せてくれました。でも、モモが隠れちゃった。

やっと全員の顔が撮れました。みんなエムがくっきりしています(笑)。

(2000年11月に、使い捨てカメラで撮った画像のため、かなり画質は悪いです。)