一階の居間に置いた箱の中で、ミーコは赤ちゃん猫をすくすくと育てていた。私は猫達の目がいつ開くかと、待ち遠しかった。二週から三週間は待たなければならないとしりつつも、朝に夕に猫達の様子を見ずにはおれなかった。それもこれも、ミーコが私を完全に信頼してくれていた御蔭だったのだが、そうと気づかず、生れてから四日後、とうとう私は行き過ぎてしまった。
あろうことか、遊びに来た友人に赤ちゃん猫を抱かせただけでなく、思い出にと、その姿を写真に取ったのである。
友達は大喜びで、茶色のカッパ坊主を可愛いと掌に乗せた。
ミーコは抗議の声を初めて出した。でも、私は上手になだめたつもりで、ミーコの母性本能を侮ったのである。
楽しい時を過ごし、友達を駅まで送って帰ってみると、箱の中が空っぽである。私はゾッとした。
もしかして…、食べちゃったの?
(写真は当時手軽に使えた使い捨てカメラで撮ったこともあり、かなり画質が悪いです。)