今のぼくは満ち足りている。

いつも幸せを感じている。

ぼくの人生には今この瞬間もやわらかい光が降りそそいでいる。

 

「幸せになりたい。」

あの頃のぼくは、漠然とそんなことを思っていた。

不幸なわけではないけれど、幸せともいえない、満ち足りない日々。

でも、どうすれば満ち足りるのか、幸せになれるのか分からなかった。

 

トンネルのなかにいるような感覚がいつもあった。

いつまでも出口が見えない、真っ暗なトンネル。

手探りで前に進む不安と恐怖。

 

ぼくは待っていたんだ。

このトンネルから引っ張りだしてくれる誰かを。

 

自分を幸せにしてくれる誰かを、何かを、ずっと探していた。

自分以外の何かが自分を幸せにしてくれるのだと思い込んでいた。

34年間、ずっと。

 

ぼくは知らなかった。

幸せになるための方法が、こんなにも簡単だったなんて。

あの満月の日の奇跡が起こるまでは。

 

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「人はどうしたら幸せになれるんだろう?」

 

ぼくは静かな声でアーシャに話しかけた。

 

アーシャはミニチュアピンシャという種類の犬。

長い手足に、引き締まった筋肉。

短毛だけど、やわらかくなめらかな触り心地。

断耳をしていないから耳がふわりと垂れている。

体重は2,4キロしかなくて小さいけど6歳の成犬。

世界一かわいいくて愛おしい、ぼくの家族。

 

「アーシャはしゃべれないよね。」

 

アーシャが目をまんまるくして首を傾げたから、ぼくは小さく笑った。

ぼくは何をしているんだろう。

こういうセンチメンタルな気持ちのときは、早く寝たほうがいい。

 

ぼくはベットに入ろうと思い、部屋の電気を消した。

 

ぼくの家は森に囲まれている。

秋になると鹿の鳴き声がすぐそばで聞こえるほどの田舎だ。

部屋の電気を消すと、いつもは部屋が真っ暗になる。

(近くにお店がないんだ。コンビニもね。)

小さい頃は真っ暗になるのが怖かった。

もちろん、大人になってからは大丈夫だけど。

 

ふと、部屋のなかに違和感を感じた。

なんだろう。

 

「あ・・・少しだけ部屋が明るいんだ。」

 

今夜は部屋がうっすらと明るい。

カーテンの隙間から光が漏れている。

 

「今日は満月なんだ。」

 

ぼくはカーテンを開けた。

空にはまーるいお月さまが浮かんでいる。

満月の日は、世界が明るくなるんだ。

 

「綺麗だね、アーシャ。」

 

アーシャは自分のベットの上で月をみていた。

姿勢良く、お座りをして。

アーシャは、ぼくのベットでは絶対に寝ない。

というか、誰のベットでも寝ない。

 

毎晩、お気に入りのドーナツ型のベットで1人で眠るんだ。

きっと自由にのびのび寝たいんだろう。

 

ぼくがカーテンを閉めようとするとアーシャが「あ”~」と唸った。

アーシャは自分の気持ちをしっかりと主張できる。

(ぼくはそこも好き。)

 

「アーシャ、月を見たいの?

カーテン、開けておいてあげるね。」

 

その夜、アーシャはずっとお月さまを見ていた。

じーっと身動きせずに。

まるでお月さまとお話をしているかのように。

なんとなくだけど、お月さまもアーシャを見ているような気がした。

 

ぼくは、そんなアーシャを見ながら、いつの間にか眠りに落ちていた。

 

 

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明日はエピソード1「幸せになる方法」です。