昨日、世界のスーパースターイチロー選手が引退表明をいたしました。東京ドームでの最後の試合では8回裏の交代の際、超満員の観衆から大きな拍手とチームメイトから「Thank you!」「My pleasure!」の言葉とハグが交わされていました。試合後に行われた引退会見は実に1時間25分にも及びました。日本で9年、MLBで19年、長きにわたり人としての愚直な生き方をリアルに見せてくれた事へのリスペクトの意味を込めて、改めてとても印象に残った部分を雑誌AERA dot.編集部の西岡千史氏の記事を引用させていただきながらご紹介したいと思います。

 

(子供達へメッセージを、と聞かれ)

「野球だけでなくてもいいんですよね、始めるものは。自分が熱中できるもの、夢中になれるものを見つければそれに向かってエネルギーを注げるので、そういうものを早く見つけてほしいと思います。それが見つかれば、自分の前に立ちはだかる壁にも、壁に向かっていくことができると思うんです。それが見つけられないと、壁が出てくるとあきらめてしまうということがあると思うので。いろんなことにトライして。自分に向くか向かないかよりも、自分の好きなものを見つけてほしいなと思います。

この最後の部分、「向くか向かないかではなく、好きなものを見つけて欲しい。」どんなことにも当て嵌まりますね、結局は好きじゃなければ続かないと言うことでしょう、‟好きこそものの上手なれ”だと思います。

 

(イチロー選手の生き様でファンの方に伝わっていたらうれしい事は、と聞かれ)

「生き様というのは僕にはよくわからないですけど、生き方と考えれば、人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく。少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むというか、進むだけではないですね。後退もしながら、自分がやると決めたことを信じてやっていく。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど。でも、そうやって遠回りをすることでしか本当の自分に出会えない、そんな気がしている。そうやって自分なりに重ねてきたことを、今日のゲーム後の様にファンの方が見てくれていた。それはうれしかったです。」

イチロー選手らしい謙虚な本音の話ですね。こんな名セリフはどんな脚本家でも書こうと思って書けるものではないでしょう。実体験に基づいたリアリティに溢れた言葉だから人の心に沁みるのだと思います。

 

(24時間野球に備えてきたことを支えてくれた弓子夫人への言葉は、と聞かれて)

「いやあ、頑張ってくれましたね。一番頑張ってくれたと思います。僕はアメリカで結局3089本のヒットを打ったわけですけど、僕はゲーム前にホームの時はおにぎりを食べるんですね。妻が握ってくれたおにぎりを球場に持っていって行って食べるんですけど、その数が2800ぐらいだったんですよね。3000いきたかったみたいですね。そこはおにぎり3000個握らせてあげたかったなと思います。とにかく頑張ってくれました。僕はゆっくりする気はないけど、妻にはゆっくりしてほしいと思います。

奥様が握ってくれた2800個ものおにぎりを自身の3000本安打へ例えて、奥様にも達成させてあげたかったとコメントする辺りは、アメリカへ来て外国人として暮らす中で人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたそうです。孤独を感じて苦しんだことも多々あったそうです。でも、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと今は思っているそうです。

 

最後に、こんなコメントをされていました。

「つらいこと、しんどいことから逃げたいというのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気のある時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく人として重要なことではないかと感じています。」

現在17歳になる愛犬「一弓」が懸命に長寿を全うする姿に「俺がんばらなきゃな」と励まされたエピソードを交えながら、奥様との夫唱婦随の生活への心からの感謝を大変感慨深く仰っていました。婚活を真剣に頑張っていらっしゃる皆様には是非お聞きいただきたい会見でした。インタビューに真摯に答える姿と、その内容の素晴らしさに感動しながら、あのスーパースターイチロー選手の偉業は決して一人では成し得なかったものだと想像させていただきました。たった一度の人生で何をやり通すか、「自分に向くか向かないかじゃなく、好きな事を見つけよ!」、「人より頑張ることは難しいから、自分の中にある測りを使って地道に進むしかない。例え間違っても、遠回りをすることでしか本当の自分に出会えない。」、そして現役生活を支えてくれた周囲の人々への感謝の言葉。他ならぬイチロー選手が口にした一言一言だからこそ、素直に深みをもって私たちの心にストレートに響く気がいたします。今日は、この辺で失礼します。

(※雑誌AERA dot.編集部の西岡千史氏の記事を引用させていただきました。)