震災の日におもうこと | 引田香織オフィシャルブログ「おかえり 」Powered by Ameba

震災の日におもうこと

「詩という言語のエネルギーは素粒子のそれのように微細。
政治の力や経済の力と比べようがない。
でも、素粒子がなければ、世界は成り立たない。
詩を読んで人が心動かされるのは
言葉の持つ微少な力が繊細に働いているから。
古典は長い年月をかけ、その微少な力で人間を変えてきた。


宇宙を含めた全存在は

人類が言語を生み出す何億年も前からあった。

我々はその言語以前のものを体内にちゃんと持っている。

赤ん坊も恐竜も自然も言語以前の世界。

詩を作る欲求とは

言語以前のものに言語で触れたい、ということ。 」


朝日新聞さんより引用させていただきました

谷川俊太郎さんの言葉です。


2月にご自宅へおじゃましたとき

たくさんお喋りさせていただいた中で

いちばん印象に残っている谷川さんの言葉は


「あのねぇ、かおりさん。言葉は弱いの。意味があるから。

だから僕は詩を全然信用してない。

詩なんかなくたって全然生きていける。

それに比べて、音楽は本当に強い。意味がないから。

無意味なものほど強いものはないと僕は思うんだよ。」


わたしは、介護をしていた去年の秋から冬の間

自分の魂を救うためだけに、谷川さんの詩を歌にしていた。

そこには意味なんてなかった。理由すら。

そうするしかない、衝動でしかなかった。


それを、ご本人にも聴いてもらい

たくさんの力強い 宝物のような言葉をいただいて

生み出した歌を世の中にも残していこうと決めて


だんだんと左脳が働いてくるにつれ

自分がやろうとしていることに意味が生まれてしまう状況に

戸惑いとか、不安とか、葛藤が起こってきて

作品への期待がふくらめばふくらむほど

迷いが拭えなくて、正直いまもまだ心は霧の中にいる。


だけど、谷川さんをはじめ、まわりの人が勇気をくれた。

ひとりじゃないから、想像したことを自由に形にしてみよう

怖がらず、最初はつぶやくようにでもいいから

拙くても真心をこめて、表現してみよう。


4年前の今日、わたしはもっと深い暗闇の中にいた

0歳の息子を抱いて 余震の続く夜を震えて過ごした。


今、わたしにできること。

やっぱり、悲しみや苦しみにフォーカスするのではなく

愛と喜びに包まれて、心豊かな毎日を送ること。

自分の夢と願いを大切にすること。

笑顔としあわせへの水やりを怠らないこと。


わたし、やっぱりね

歌っている時が、いちばんうれしいの。

楽しいとも、気持ちいいとも、ちょっと違う

でも歌っていると、自分や、聴いてくれる人の中に眠る

「言語以前のもの」に、そっと触れられる気がして。


だから、これからも 声がなくなるまでは歌います。

風邪の日も歌います。落ち込んだ日も

今日が終わらなければいいのにって思う日も

ひとりでいたい日も、みんなを抱きしめたい日も

ただ、ゆっくり、息をするみたいに。


今年は、自分のやりたいことを始める年だから

初めてのことばかりで、すっごく忙しくなると思うけど

今日を過ごせる、ただそのことへの感謝をこめて

心と体を労りながら、大事にLIVEしていきたいと思います。


どうぞよろしくね。またかくね。



かおりより