静かな夜のゆめ | 引田香織オフィシャルブログ「おかえり 」Powered by Ameba

静かな夜のゆめ

いつもと同じ、静かな夜。

あたしは2階にある自分の部屋で
熱いカフェオレをすすりながら、本を読んでいた。

カーテンは、小学校のときから変えていない
落ち着いたピンクの生地に、白と茶のねこがたくさんいる
お気に入りの柄。

音楽は流さない。
CDデッキは古くて、壊れてしまって動かないし
強い風で、窓がかすかにきしむのを聞くのは、けっこう好きだからだ。

ベージュ色に褪せたページをめくりながら
あたしは、本に恋をしてるっていうより
本を読む空間に恋をしてるんだろうなー。
と、どうでもいいことをほっこりしあわせに思い浮かべていると

突然、どたどた!と、階段を駆け上がる足音がする。

お父さんが、仕事から帰ってきたのかな?
いつもなら「ただいまー」の声が先に聞こえるのに
それにあんなに急いで。どーしたんやろ。

階段を駆け上がってきた正体は、予想通り父で
あたしの部屋のドアをばたん!と開けるなり
「け…、警察を呼んで。」と、息をきらして言う。

そのまなざしが、ただならぬ気配を漂わせていたので
あたしは近くに置いてあった携帯を慌てて取り上げ
息をのんで、とりあえず、110の番号を打った。

「おとうさん、すぐ警察には電話できるけど、ちょっと待って。
落ち着いて教えて。何があったん?」

「だめ、早く!もうここにあいつらは来てしまう!
黙って、ああ早くドアを閉めて」

「あいつら…?誰?」

とききながら、ドアを勢いよく閉めようとした瞬間
あたしは階段から漏れてくるざわめきに、はっとして気づいた。

「…なんか来る。しかも相当な数いる…!?」

少しだけあいたドアのすきまから見えたのは
膝丈サイズの、こびとたちだった。

そう白雪姫に出てくる、あいつら。
しかも7人どころではない。うじゃうじゃしていて、数など数えられない。

唖然としていたら、こびとの一人が
隙間から見えたあたしとお父さんに気がついて
「ねぇ!いたよー!!!!」と叫んだ。

次の瞬間、こびとたちは「がー!!!!!」と歓声をあげ
うんしょ、こらしょ、とドアをこじ開けようとする。

あたしも何がなんだかわからなくて
とりあえず出来る限りの力でノブを押さえつけたけれど
人数には勝てず、すぐにドアはあいて
大量のこびとたちが、部屋の中に流れ込んでしまった。

天井から床まで、本当にびっしり、こびとたちで埋め尽くされて
息ができなくなって、圧迫されて苦しくて
そのうえ、こびとたちのわめく声でうるさくて、もう死にそう。

あたしはやっとの想いで叫んだ。

「あんたたち、どうしてこんなことするのー!!!!!」

そしたら全員が口をそろえて
力いっぱいの声で、あたしの質問に答えた。

「おーなーかーすーいーたーのー!!!!!!!」

耳の奥がきーんとして、しばらく放心状態になったが
その答えで、こいつらは邪悪な奴らではない。
と察知したあたしは、とりあえず残った力を振りしぼって

「わかったー!キッチンに集合ー!!!!!!!!!!!」
と号令をかけて、ホイッスルで1階へ誘導した。

ひゃひゃひゃー♪と笑いながら、こびとたちは階段を駆け下りていく。
きれいに整列して、それはそれはスムーズに部屋を出ていき
みるみるうちにこびとは消え、部屋にはあたしとお父さんが取り残された。

「冷蔵庫に何があったかな。」

お父さんがぼそっとつぶやいて、目がさめた。




夢占いできる友達が切実にほしい。笑
かおりより