急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫 ク 2-1) (SB文庫)/マルコム・グラッドウェル

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この本は、噂や商品が、あたかも感染するかのように人々の間に浸透してゆくメカニズムを探り、明らかにした本です。
著者のマルコム・グラッドウェルは、本書で一躍ベストセラー作家となりました。そして第2作『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』では、人の第一印象のメカニズムを解析して、またもやベストセラー(勝間和代さんがすばらしい書評を書いています。)。つい先月発売されたばかりの"「Outliers」では、成功する人々の環境、人間関係(友人、家族など)を分析し、成功のメカニズムを明らかにするそうです。
近刊の「Outliers」については、グラッドウェルは自身のホームページで紐解いています。内容をざっと抜き出すと、
・往来、「成功」については個人の内面的変化について書かれる本がほとんどだった(七つの習慣など)
・しかし、実際に環境は成功に大きな影響を与えている。たとえば、ニューヨーク市でもっとも成功し、かつ影響力のある弁護士の多くは、ユダヤ人で、ブロンクスまたはブルックリンに1930年半ばに移民した両親のもとに生まれ、両親は衣料品販売に関わっている。
・さらに驚くべきことに、飛行機の墜落事故とパイロットの出自(文化的バックグラウンド)とは、相関関係がある。
えー。という意外性を感じさせる内容です。とりあえずアマゾンで注文しました。この本の翻訳は待てない気がします・・・。
さて、いまさらなのですが、グラッドウェルの第一作の書評です。
【目次】
目次:
はじめに ティッピング・ポイントとは何か?
第1章 爆発的感染、その3原則―ティッピング・ポイントへ至る指針
第2章 「80対20の法則」から「少数者の法則」へ・原則1―感染をスタートさせる特別な人々
第3章 粘りの要素・原則2―情報を記憶に残すための、単純かつ決定的な工夫
第4章 背景の力・原則3―人の性格に感染する背景
第5章 「150の法則」という背景―人の行動に感染する効果的な集団の規模
第6章 商品はどのようにして感染するのか?・Case study1―エアウォーク社の販売戦略から学ぶこと
第7章 自殺と禁煙・Case study2―ティーンエイジャーの感染的行動の謎を探る
第8章 ティッピング・ポイントを押せば世界は傾く―焦点をしぼること、実験すること、そして信念を持つこと
ティッピング・ポイント=アイデアや流行などが、劇的に広がる瞬間。は、そのアイデアや流行、それ自体がどのように広がったか、そのメカニズムを明らかとすることで見えてくるといいます。
この本は非常に示唆に富んでおり、そのいくつかを書き出すと・・・。
原則1 テイッピング・ポイントを誘発する人々にリンクする
ティッピング・ポイントを生み出す要因として、ある特定の性質を持つ人々の媒介があげられる。それらの人とは
①コネクター
人と人を介在する役割を果たす人々、経歴として様々な業界を渡り歩き、緩やかな親しさを多くの人と持ち続ける。
⇒シカゴ在住のロイズ・ワイズバーグは、典型的なコネクターとして紹介されている。彼女は、あるときふと思い立って、SF作家の集会に顔を出して「アーサー・C・クラーク」という若い作家と親しくなった。その後クラークは、シカゴに来たとき、彼女に連絡をとった。彼女は誰かクラークに会うべき人がシカゴにいるかと思い立ち、知人を通じてアイザック・アシモフと、ロバート・ハインラインを自宅に呼び寄せ書斎に皆集まったんだそうな・・・。てゆうかこの話を信じろというのは難しいです。
②メイヴン(通人)
市場が提供する商品やサービスに精通した人々。消費者レポートを精読し、情報を自発的に収集するかたわら、周囲の人々に通人ならではの、信頼できる情報を提供し続ける。
③セールスマン(説得する人)
メイヴンの与えた情報に納得しない人々などを説得する役割を果たす。手振りや身振りにより聞く側を引き込み、ダンスを一緒に踊るように、感情を同調させ、説得する。
⇒ここで紹介されたセールスマンは、言葉による説得ではなく、身振りによる同調効果による説得を行う人です。
原則2 情報を粘らせる
・情報が「粘る」ことで、人々に広がる必要がある。
⇒これについては、「アイデアのちから」で、より詳しく展開されています。
原則3 環境による影響力を駆使する
・性格はその場の背景によって決まる
⇒神父を目指す神学部の学生に対して行った実験。
学生に、道端で倒れた人を助けた聖書のエピソードを教え、近くのビルに移動し、この話を講義することを依頼する。その際、皆があなたの講義を待っており、急いだほうがいい、と告げる。その上で講義場所までの道端に、倒れた人を配して、学生が実際に行動を起こすのか観察する。
すると、ほとんどの学生が、「急ぐ」という状況に圧されて、倒れた人を飛び越えて行ってしまう。
・ティッピング・ポイントにおける背景の影響
⇒1980年代のニューヨークの地下鉄の犯罪発生率は、壁の落書きを消し、無賃乗車を取り締まることで劇的に低下した。
このエピソードは、「ブルー・オーシャン戦略」や「統計数字を疑う」といった本でも取り上げられてきたものです。ニューヨークの犯罪発生率が劇的に減少した理由については、
ブルー・オーシャン戦略⇒担当者がブルー・オーシャン戦略により、取締りの手法を変化させたため
「統計数字を疑う」⇒景気動向が犯罪発生率抑制に相関したため
という分析があります。
【本書の印象】
本書はマーケティング、広告、組織化などの手法に大きな示唆を与えてくれる本です。また数多くのエピソードが含まれており、単純に読み物としても楽しめる本です。ただわたしは、ややひっかかる点もありました。たとえば下記のようなものです。
1.ティッピング・ポイントの誘発には、「コネクター」、「メイヴン」、「セールスマン」が必ず必要になるのだろうか?
⇒ティッピング・ポイントの成立において、「コネクター」、「メイヴン」、「セールスマン」がどう組み合わさるのか、またどう組み合わせることが効果的なのか、その辺が不明瞭な気がしました。
2.エピソードの解釈は鵜呑みにできるのか?
⇒たとえばニューヨーク市の犯罪率の減少の事例解釈、あるいは子供番組における情報の粘りに関する実験結果など、どの程度信頼性がおけるのか、やや読みにくくても注釈入りで元ネタを示してほしかったと思います。
【本書の活用方法】
著者のねらいは、通説や常識をひっくり返す「事実」を提示することです。本書で提示された「事実」とは、
・流行の感染はごくごく少数の人々(コネクター、メイヴン、セールスマン)によって作られる
・人は背景によって、性格が変わる(「嘘つき」OR「正直者」になるかは状況次第である。性格は特定できるものではない。)
・集団は150人までが規律なしにまとめることができる人数である。(150人を越えると集団は分裂する)
などです。
これらを知ることで、当然マーケティングなどに活用するむきもあるかと思われます。実際活用事例も本書には登場します。
ただこれらの事実は「解釈」でもあるわけです。うまくいくかいかないかは五分五分かもしれません。それでもやってみる価値は十分にあると思います。具体的には、とりあえずまわりの「コネクター」、「メイヴン」、「セールスマン」を探すことからでしょうか?
【本書のテーマに対する私の考え】
マルコム・グラッドウェルは、個人=集団の関係について、他の多くの類書が個人⇒集団の立場をとることに対して、集団⇒個人という立場で分析をしています。
たとえば「ホイラーの法則」という類書にありますが、これはセールスを行う個人の言葉に注目して、不特定多数の顧客に何を言うか、どう働きかけるのか、という個人から集団を俯瞰する立場をとっています。
マルコム・グラッドウェルがこれまでの著書、そして近刊の「Outliers」も含めて取る立場は、集団(あるいは背景)こそが、個人に大きな影響を与えているというものです。個人と集団の関係を双方向から見る視座は社会学では常識ですが、意外とこれまで一般書ではなかったようで、これがグラッドウェルの本をベストセラーに押し上げている要因ではないでしょうか。
グラッドウェルの本は示唆に富むものですが、一方でこれはひとつの世界の見方である、という慎重さも必要だと思います。

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この本は、噂や商品が、あたかも感染するかのように人々の間に浸透してゆくメカニズムを探り、明らかにした本です。
著者のマルコム・グラッドウェルは、本書で一躍ベストセラー作家となりました。そして第2作『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』では、人の第一印象のメカニズムを解析して、またもやベストセラー(勝間和代さんがすばらしい書評を書いています。)。つい先月発売されたばかりの"「Outliers」では、成功する人々の環境、人間関係(友人、家族など)を分析し、成功のメカニズムを明らかにするそうです。
近刊の「Outliers」については、グラッドウェルは自身のホームページで紐解いています。内容をざっと抜き出すと、
・往来、「成功」については個人の内面的変化について書かれる本がほとんどだった(七つの習慣など)
・しかし、実際に環境は成功に大きな影響を与えている。たとえば、ニューヨーク市でもっとも成功し、かつ影響力のある弁護士の多くは、ユダヤ人で、ブロンクスまたはブルックリンに1930年半ばに移民した両親のもとに生まれ、両親は衣料品販売に関わっている。
・さらに驚くべきことに、飛行機の墜落事故とパイロットの出自(文化的バックグラウンド)とは、相関関係がある。
えー。という意外性を感じさせる内容です。とりあえずアマゾンで注文しました。この本の翻訳は待てない気がします・・・。
さて、いまさらなのですが、グラッドウェルの第一作の書評です。
【目次】
目次:
はじめに ティッピング・ポイントとは何か?
第1章 爆発的感染、その3原則―ティッピング・ポイントへ至る指針
第2章 「80対20の法則」から「少数者の法則」へ・原則1―感染をスタートさせる特別な人々
第3章 粘りの要素・原則2―情報を記憶に残すための、単純かつ決定的な工夫
第4章 背景の力・原則3―人の性格に感染する背景
第5章 「150の法則」という背景―人の行動に感染する効果的な集団の規模
第6章 商品はどのようにして感染するのか?・Case study1―エアウォーク社の販売戦略から学ぶこと
第7章 自殺と禁煙・Case study2―ティーンエイジャーの感染的行動の謎を探る
第8章 ティッピング・ポイントを押せば世界は傾く―焦点をしぼること、実験すること、そして信念を持つこと
ティッピング・ポイント=アイデアや流行などが、劇的に広がる瞬間。は、そのアイデアや流行、それ自体がどのように広がったか、そのメカニズムを明らかとすることで見えてくるといいます。
この本は非常に示唆に富んでおり、そのいくつかを書き出すと・・・。
原則1 テイッピング・ポイントを誘発する人々にリンクする
ティッピング・ポイントを生み出す要因として、ある特定の性質を持つ人々の媒介があげられる。それらの人とは
①コネクター
人と人を介在する役割を果たす人々、経歴として様々な業界を渡り歩き、緩やかな親しさを多くの人と持ち続ける。
⇒シカゴ在住のロイズ・ワイズバーグは、典型的なコネクターとして紹介されている。彼女は、あるときふと思い立って、SF作家の集会に顔を出して「アーサー・C・クラーク」という若い作家と親しくなった。その後クラークは、シカゴに来たとき、彼女に連絡をとった。彼女は誰かクラークに会うべき人がシカゴにいるかと思い立ち、知人を通じてアイザック・アシモフと、ロバート・ハインラインを自宅に呼び寄せ書斎に皆集まったんだそうな・・・。てゆうかこの話を信じろというのは難しいです。
②メイヴン(通人)
市場が提供する商品やサービスに精通した人々。消費者レポートを精読し、情報を自発的に収集するかたわら、周囲の人々に通人ならではの、信頼できる情報を提供し続ける。
③セールスマン(説得する人)
メイヴンの与えた情報に納得しない人々などを説得する役割を果たす。手振りや身振りにより聞く側を引き込み、ダンスを一緒に踊るように、感情を同調させ、説得する。
⇒ここで紹介されたセールスマンは、言葉による説得ではなく、身振りによる同調効果による説得を行う人です。
原則2 情報を粘らせる
・情報が「粘る」ことで、人々に広がる必要がある。
⇒これについては、「アイデアのちから」で、より詳しく展開されています。
原則3 環境による影響力を駆使する
・性格はその場の背景によって決まる
⇒神父を目指す神学部の学生に対して行った実験。
学生に、道端で倒れた人を助けた聖書のエピソードを教え、近くのビルに移動し、この話を講義することを依頼する。その際、皆があなたの講義を待っており、急いだほうがいい、と告げる。その上で講義場所までの道端に、倒れた人を配して、学生が実際に行動を起こすのか観察する。
すると、ほとんどの学生が、「急ぐ」という状況に圧されて、倒れた人を飛び越えて行ってしまう。
・ティッピング・ポイントにおける背景の影響
⇒1980年代のニューヨークの地下鉄の犯罪発生率は、壁の落書きを消し、無賃乗車を取り締まることで劇的に低下した。
このエピソードは、「ブルー・オーシャン戦略」や「統計数字を疑う」といった本でも取り上げられてきたものです。ニューヨークの犯罪発生率が劇的に減少した理由については、
ブルー・オーシャン戦略⇒担当者がブルー・オーシャン戦略により、取締りの手法を変化させたため
「統計数字を疑う」⇒景気動向が犯罪発生率抑制に相関したため
という分析があります。
【本書の印象】
本書はマーケティング、広告、組織化などの手法に大きな示唆を与えてくれる本です。また数多くのエピソードが含まれており、単純に読み物としても楽しめる本です。ただわたしは、ややひっかかる点もありました。たとえば下記のようなものです。
1.ティッピング・ポイントの誘発には、「コネクター」、「メイヴン」、「セールスマン」が必ず必要になるのだろうか?
⇒ティッピング・ポイントの成立において、「コネクター」、「メイヴン」、「セールスマン」がどう組み合わさるのか、またどう組み合わせることが効果的なのか、その辺が不明瞭な気がしました。
2.エピソードの解釈は鵜呑みにできるのか?
⇒たとえばニューヨーク市の犯罪率の減少の事例解釈、あるいは子供番組における情報の粘りに関する実験結果など、どの程度信頼性がおけるのか、やや読みにくくても注釈入りで元ネタを示してほしかったと思います。
【本書の活用方法】
著者のねらいは、通説や常識をひっくり返す「事実」を提示することです。本書で提示された「事実」とは、
・流行の感染はごくごく少数の人々(コネクター、メイヴン、セールスマン)によって作られる
・人は背景によって、性格が変わる(「嘘つき」OR「正直者」になるかは状況次第である。性格は特定できるものではない。)
・集団は150人までが規律なしにまとめることができる人数である。(150人を越えると集団は分裂する)
などです。
これらを知ることで、当然マーケティングなどに活用するむきもあるかと思われます。実際活用事例も本書には登場します。
ただこれらの事実は「解釈」でもあるわけです。うまくいくかいかないかは五分五分かもしれません。それでもやってみる価値は十分にあると思います。具体的には、とりあえずまわりの「コネクター」、「メイヴン」、「セールスマン」を探すことからでしょうか?
【本書のテーマに対する私の考え】
マルコム・グラッドウェルは、個人=集団の関係について、他の多くの類書が個人⇒集団の立場をとることに対して、集団⇒個人という立場で分析をしています。
たとえば「ホイラーの法則」という類書にありますが、これはセールスを行う個人の言葉に注目して、不特定多数の顧客に何を言うか、どう働きかけるのか、という個人から集団を俯瞰する立場をとっています。
マルコム・グラッドウェルがこれまでの著書、そして近刊の「Outliers」も含めて取る立場は、集団(あるいは背景)こそが、個人に大きな影響を与えているというものです。個人と集団の関係を双方向から見る視座は社会学では常識ですが、意外とこれまで一般書ではなかったようで、これがグラッドウェルの本をベストセラーに押し上げている要因ではないでしょうか。
グラッドウェルの本は示唆に富むものですが、一方でこれはひとつの世界の見方である、という慎重さも必要だと思います。