手紙を書くのが苦手だ。
時候の挨拶とか、結び方とか、そういうものを小難しいと考えてしまう。
しかしマナーに反することをするのも嫌だ。

手紙を、難しいものだと思い込んでる。

 

レターセットを買い込んでしまうのはなぜだろう。

 

そして、ちゃんと消費して、また買い足す必要が出てくるのも。

 

手紙を書くのは、好きだ。

送ってしまったら、自分の手元には文面が残らないこととか

書くときに、相手のことだけを考えて書くとか

そういうのが、たまらなく好きだ。

 

 

先日、ファンレターをいただいて、その返事を書いた。

すべての手紙にきちんと返事を出す人もいるんだろうけれど

いや、そういう人がほとんどなんだろうけれど

わたしは、あまりそういうことをしない。できない。

お返事用のイラストハガキ(あるいは、ペーパー)を作っておいて、

そこに一言書き添えるだけでも、きっと、絶対、

何もしないよりよっぽど良心的なのに。

 

漫画を描いているときは、ほとんど余裕がなかった。

日々の生活とか。

人として、「やれて当たり前のこと」の数々が、できなかった。

では今はやれているかといえば、そうでもないけれど。

以前よりは、少しはやる。

体に良いものを食べる

きちんと睡眠をとる

ふるい雑誌をまとめて廃品回収に出す

書類に、目を通す(これが最高に苦手で、今も頑張ってやってる感じ)

ファンレターに返事を出せたのは、今、その余裕があったからだ。

 

描けていない今、この時期に手紙をくれるということは、

きっと心配して、励ます気持ちで、いたわりの気持ちでくれたんだと思う。

勝手に、そう思った。

うれしかった。

ていねいに、返事を書いた。

そして、悩んだ。

そういう距離感って、どうなんだろう。

私の方がそこまで距離をつめてしまったら、相手はむしろ戸惑うのではないか。

読者として欲しいものは、

溢れ出した心情などではなく、メディアに乗った作品のほうではないのか。

 

たくさん迷って、

結局はうんと少ない簡素な文章で書き直し、返事を出した。

 

あれを読んだ相手はきっと、距離を感じたと思う。

でも、きっとそれでいいんだ、と。

勝手に、思った。

 

だれかへの

みんなへの

返事のような、メッセージのような、

そんなふうに思いながら、でも没頭するとそれも忘れて

また、描きたいと思った。

 

自分のため、も、きっとある。それもある。

でも、

だれかのために、描きたい。

 

 

手紙はいつでも、相手のことを思って書いている。