雪だ。
昨夜降って、今朝には消えていて、なあんだと油断していたら昼間にまた降った。
雪を喜ぶのは九州の出身だからだろうか。
雪は白い。繭っぽい。
「繭」というタイトルの小説を読んだ。
私は乱読だし文庫しか買わないし(主に収納スペースと重量の問題で)
だいたい読めばすぐに忘れるし(めちゃめちゃ感動した、と、日記に書いてある本のタイトルを見ても、何の感動もあらすじも思い出せない)拾うように感想を書き留めるけれどそれはおおむね重要ではない。
その時に書きたい衝動で書いているので、感動の量やら心の重要度には関連しないんだ。
で。感想。
たいへん失礼な感想。
「繭」という小説には
文月悠光さんという詩人の解説がついていて、そこに添えられた詩を読むだけで
価値があった、と思わせられた。
言っておくが、小説自体も良いのですよ。
小説本体も、解説に添えられた詩も、とても個人的な糸に触れるので、
おちおち「ここが良かった」「あの場面が好き」みたいなことが言えない。
糸かー。
わたしはわざわざ、繭っぽい言葉を探しているんだろうか。
そういえば、タイトルに惹かれて手に取った本だ。
どうもわたしは、詩人(あるいは、歌人)というものを特別視しているようだ。
ながい冬を越えた先の夏に(夏、に)駆け出していく少年を見ているような。
かたい殻のなかでふつふつと沸るいのちをこっそり得意げに見せられたような。
どうやってたどり着きどうやって降りるかわからない尾根から、にっこりと無邪気な微笑みを送られたような。
そこへわたしも行きたいけれど、どうにも何もかも足りなくて、
おまけにぬくぬくと、燻るのもまた楽しくて。
だから羨まない。けれど好きよ。とっても好きよ。手を振るかわりに念を送るね。
たくさんたくさん、飛んで、走ってね。
繭って、百発百中なんだろうか。
蛹のない繭って、ないんだろうか。
待て。調べるな。誰もわたしに知らせるな。
白いものを白いと思って、見ている時間をわたしにおくれ。
そんな土曜日の午後。