行くところがなくなり、女ともだちの所に厄介になることにした。
一緒に住むのなら結婚しましょうと言われる。
今は女どうしでも結婚できるのだ。
さて、住むところを頼るからといって、そんな理由で結婚を決めてもよいものか。
彼女は、そんな(わたしの打算に因る)結婚でよいのだろうか。
何より、果たしてわたしは、女のからだを愛せるのだろうかと不安である。
彼女の部屋は几帳面に片付いていて、これでは早晩愛想を尽かされるだろう、とも思う。何せわたしは片付けと計画的行動が苦手なのだ。
いや。
計画性がないというなら、ここで流されるまま結婚してしまうのもありかもしれん。
まあ、伴侶といえど必ずしも肉体を結ぶ必要はあるまいと、
せめて心を、できるだけ優しくいつくしもうと、わたしにしては殊勝な決意をする。
ところが。結婚をしたからにはと言って、彼女はその几帳面さで、一生懸命(たいへん苦手そうに見えた)わたしのからだを愛そうとするのだ。
やめてくれ、とわたしは逃げた。
そのまごころに、まっすぐな気持ちに恐れをなして。
そんな夢をみた。
彼女の住処は、レンガづくりの2階にあって、1階はカフェ兼古本屋である。
ここにある本より、わたしの雑多な本のほうが数は多いよ、と眺めつつ
聞いたことも無いタイトルの、専門的且ついかにも面白そうな品揃えであった。
あれは、惜しかったな。
逃げてしまっては、あそこに戻って本棚を眺めることも許されまい。
などと、ひどいことを考えていた。