廃棄物とは

 一般的に廃棄物とは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下廃棄物処理法と表示)第2条1項に「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう」と規定しています。

 すなわち、廃棄物とは、自分で利用もしくは他人に売却することができず不要になった固形状または液状の物のことになります。

 従って、自分が不要だと思ったものでも鉄、金属くず、アルミ、カレット(ガラス屑)、古紙類・古布類、空きビン類、古繊維などを有償で買ってくれる人がいれば、廃棄物ではなく価値のある有価物になります。これらは「もっぱら物」とも言われています。

 

一般廃棄物と産業廃棄物はどう違うの?

 ごみは発生源により大きく二つ、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分れます。

 

■一般廃棄物

  一般廃棄物とは、一般的な生活活動から発生した廃棄物のことです。

〇家庭廃棄物はその名の通り、一般家庭で通常発生するごみで、

〇事業系一般廃棄物はビジネスを行う上で発生したごみのうち、産業廃棄物以外のごみとなります。

 廃棄物処理法では、廃棄物のうち下(表1)のような産業廃棄物以外の廃棄物のことを一般廃棄物と定義しています。

 

■産業廃棄物

 産業廃棄物とは、事業活動に伴って発生した下表21種類の廃棄物のことです。

 

産業廃棄物の種類一覧(表1)

 

廃棄物の種類

内容・具体例

燃え殻

石炭がら、灰かす、廃棄物焼却灰、炉清掃排出物、コークス等

汚泥

排水処理後に排出された処理汚泥、洗車場汚泥、建設汚泥、下水道汚泥等

廃油

鉱物性油、動植物性油、潤滑油、絶縁油、洗浄用油、タールピッチ等

廃酸

廃硫酸、廃塩酸等のすべての酸性廃液。

廃アルカリ

廃ソーダ液等のすべてのアルカリ性廃液

廃プラスチック類

合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくず等合成高分子系化合物

紙くず

パルプ製造業、製紙業、紙加工品製造業、新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業から生ずる紙くず

木くず

建設業(工作物の新築、改築または除去)、木材・木製品製造業、パルプ製造業、輸入木材の卸売業および物品賃貸業から生ずる木くず

繊維くず

建設業工作物の新築、改築または除去)、繊維工業(衣服その他繊維製品製造業以外)から生ずる木綿くず、羊毛くず等天然繊維くず

10

動植物残さ

食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業から生じる動物性または植物性の固形状の不要物

11

動物系固形不要物

と畜場において処分した獣畜、食鳥処理場において処理した食鳥等の動物系の固形状の不要物

12

ゴムくず

生ゴム、天然ゴムくず等

13

金属くず

鉄くず、切削くず、研磨くず等

14

ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず

ガラスくず、レンガくず、セメントくず、モルタルくず、陶磁器くず等

15

鉱さい

高炉・平炉・転炉、不良鉱石、鉱じん、鋳物廃砂等

16

がれき類

コンクリート破片、アスファルト破片等(工作物の新築、改築または除去により生じた不要物)

17

動物のふん尿

牛、馬、豚、めん羊、山羊、にわとり等の畜産農業から排出されるふん尿

18

動物の死体

牛、馬、豚、めん羊、山羊、にわとり等の畜産農業から排出される死体

19

ばいじん類

大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設等において発生するばいじんであって集じん施設によって集められたもの

20

上記の19種類の産業廃棄物を処分するために処理したもの

産業廃棄物を処分するために処理したもので、1~19の産業廃棄物に該当しないもの(コンクリート固形化物)

21

輸入された廃棄物

航行廃棄物、携帯廃棄物を除く輸入された廃棄物

 

 上表黄色の番号7,8,9,10,11,17,18)の廃棄物については、記載された特定の業種が排出した場合のみ産業廃棄物になります。

 従って、事業に伴って発生した産業廃棄物であっても、発生源が記載以外の業種から排出されたものであれば産業廃棄物にはならない廃棄物となります。(21種類のうちの7種類)。

 そして、この21種類に該当しない廃棄物が一般廃棄物となります。

 

ごみは誰が処理しなければならないのか?

 人が生活し、事業者が活動することによって必ずごみが発生します。ごみの処理については、廃棄物処理法という法律に規定されており、誰が出したごみかで処理する責任者が異なります。

 

■事業系一般廃棄物

 産業廃棄物に該当しない事業活動に伴う廃棄物(事業系一般廃棄物)は、事業者が自ら処理するか、市町村または市町村の許可を受けた一般廃棄物処理業者に処理・処分を委託することになっています。

 

■一般廃棄物

 家庭から出たごみは「一般廃棄物」に分類されており、ごみの収集・運搬や処理は市町村である自治体が処理しなければならないことになっています。

 

■産業廃棄物

 事業活動により発生したごみのうち法律で定められた種類のごみは「産業廃棄物」(上記表1を参照願います)と呼び、ごみを出した者に処理する責任があります。

 

一般廃棄物について、ごみが収集され処分されるまでの流れ

 家庭から出るごみは、可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみ、資源ごみに分けて出されますが、いずれも先に述べたように、自治体が処理しています。

 

 ごみ処理の流れは、一般的には、ごみの収集⇒運搬⇒焼却・破砕のための中間処理⇒運搬⇒埋め立て・覆土の最終処理となります。

 

■収集・

 自治体では前述のごみの種類ごとに収集する曜日とエリアを定め、ごみの量の季節変動や地域の実情に合わせた作業計画を策定し、効率的な作業を行っています。

 東京23区では、家庭ごみの処理手数料は無料ですが、1日に10キログラムを超えるごみを出す場合や粗大ごみと事業系ごみは有料となっています。

 

■運搬

 自分の出したゴミの処分には許可は必要ありませんが、他人の出したゴミの収集・運搬を行うためには自治体の「一般廃棄物収集運搬許可」が必要になります。

 

可燃ごみは、収集現場で小型プレス車など収集車に積み込み、清掃工場に搬入して燃やします。燃やすことによって、ばい菌や害虫、においの発生を防ぐことができます。

 

不燃ごみは、東京の場合、中防不燃ごみ処理センターまたは京浜島不燃ごみ処理センターに搬入します。一部の区では陸上中継所や船舶中継所を設置し、コンテナ車や船舶に積み替えて中継輸送しています。

 

粗大ごみは、粗大ごみ破砕処理施設に搬入します。中継所がある区では、小さな収集車から大型車両に積み替えて中継輸送します。中継することにより、輸送効率の向上、交通渋滞の緩和や排気ガスによる大気汚染の低減に効果があります。

 

■中間処理(焼却・破砕等)

 埋立て前にごみを中間処理施設で焼却・破砕して、ごみの埋め立量を少なくするための施設です。

不燃ごみからは鉄とアルミニウムが回収でき、回収後はハンマーで細かく砕いて量を少なくしてから埋め立てます。

 粗大ごみは、可燃系と不燃系に分けられ、可燃系は細かく砕いて燃やし、不燃系は細かく砕いて鉄を回収してから埋め立てます。

 

焼却残渣(ざんさ)はどのように扱われているの?

 自治体が所有するごみ焼却施設で発生した可燃物の灰や焼き残りである焼却残渣を最終処分場に処分しようとしても、各自治体がそれぞれ処分場を持っているわけではありません。

 従って、焼却残渣の無害化や処分量削減を目的に、1,300℃程度の高温で焼却残渣を溶融する処理が行われています。

 以前は焼却灰や飛灰は最終処分場に埋められていましたが、これらの一部は溶融したものを冷却し固化させ、セメントの原料として資源化されるようになり、焼却灰を原料に人工砂が道路路盤材として製造され始めました。

 また、容積を減少させて最終処分場の延命を図ることができる他、高熱でダイオキシンや揮発性の重金属が無害化されるというメリットがある溶融スラグは道路路盤材やインターロッキングブロック(道路や舗装に使われるブロックの一種で加重がかかった際に目地を介してブロック同士が噛み合い、加重が分散される構造となっている。このブロックを使った舗装は、雨水が地面にしみ込みやすく、都市型水害や地盤沈下を緩和する効果をもつ)、道路側溝(U字溝)のようなコンクリート製品の骨材等として利用されています。

 このように、今まで埋めてられていた焼却残渣を資源化することにより最終処分場への埋め立量を削減することが可能となりました。

■最終処分場(埋め立・覆土)

 最終処分場は不要となった廃棄物の最終的な行き場所となります。

 中間処理施設で焼却・破砕されたごみや可燃ごみの灰の一部や、資源を回収した後の不燃ごみ・粗大ごみは埋め立処分場に運ばれ、種類別に定められた区画に埋め立てられます。

 

 新しく最終処分場を建設することが困難な現状から考えると、埋立地を長く使えるようにすることはとても重要になり、そのためにもごみの排出量を削減することが喫緊(きっきん)の課題となっています。

 

一般廃棄物扱いとなる災害ごみは、市町村・自治体が処理します

 台風、暴風雨、豪雨、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの自然災害により⼤規模な災害が発⽣すると、河川の決壊や家の浸水や全半壊などで、膨⼤な量の⽊くずや崩れたブロックなどが発⽣します。また、家の中でも、⼤量の家具や、家電製品、食品容器、畳など⽣活に伴う⽣活ごみ・し尿が発⽣します。これらを、災害ごみと呼び、災害廃棄物となります。

 これは法制上事業活動から出たごみではないので、一般廃棄物となり、市町村である自治体が処理することになります。

 

災害廃棄物の特徴とは

浸水被害は家電、畳、布団、家具などの粗大ごみなどの「片付けゴミ」が中心。

土砂災害では「がれき混じり土砂」が中心となり、土砂流木とがれきの選別処理が必要。

突風被害は「屋外物」「混合物」となり、発生量推計には過去の類似災害のデータが有用となります。

 

災害ごみ処理責任者である区市町村が定めるべき処理方針

 災害ごみ(廃棄物)は、一般廃棄物に位置付けられ、区市町村が包括的な処理責任を負っていることはすでに述べた通りです。

 区市町村は、自区域内で発生した災害廃棄物について、管理するごみ処理施設や民間の処理施設を活用し、主体的に処理を行うこととなります。

 また、自区域内で発生した廃棄物を単独で処理しきれない場合など、必要に応じて、近隣自治体間で構成する臨時の災害廃棄物処理共同組織を設け、地域が一体となって災害廃棄物処理を実施することとなります。

 

■災害発生後(発災)仮置場の迅速な整備と選別、再資源化の徹底

 発災直後において、大規模災害時に緊急車両が通行可能となるよう道路上のがれき等の除去作業を行い、救援ルートを確保する作業である道路啓開や救助捜索活動に伴い撤去する必要のある建物等の損壊物や被災住民が排出する災害廃棄物の一時的な保管を行う「一次仮置場」を速やかに整備する必要があります。

 

〇一次仮置場の設置

壊れた家や建物を解体し、道路などから撤去したがれきを一時保管し、大まかな選別を行うところ。

 

〇二次仮置場の設置

被災建築物の公費解体を開始するまでに、一次仮置場から災害がれきを集めて、細かく砕いたり、選別したり、焼却したりする中間処理に必要な機材を設置し、災害廃棄物の減容化及び再資源化のための処理を行う「二次仮置場」を整備し、早期に本格的な処理を開始するところ。

 

〇市民仮置場の設置

災害時、家の中で生活するうえで、どうしても急いで捨てる必要がある壊れた家具などを一時的に集める場所。近くの公園などに設置されます。

 

○ 仮置場の不足が想定されるため、早期から広域処理を開始する。

○ 畳や腐敗性廃棄物(生ごみ等)の回収を優先する。

○ 木くずは、選別、破砕した後、再資源化する。再資源化ができないものは焼却処理する。

○ コンクリートがらは、選別、破砕した後、原則、再生砕石として再資源化する。

○ 金属くずは、再資源化する。

○ その他の廃棄物は、選別、破砕した後、可能な限り再資源化を図り、再資源化できない

もののうち、可燃分は焼却処理、不燃分は埋め立処分する。

○ 発災後3年以内に処理を完了する。

 

生活ごみは収拾できません!

 しかし、このような状況下にあっても、災害に起因しない家庭から排出される生活ごみや粗大ごみや避難所から排出される生活ごみ等は通常のごみ収集となります。

 

区市町村が「かきくけこ」の対応をしなかった場合はどうなるか

か 仮置場

 多くの災害ごみが発生した場合、自治体が指定する災害ごみを集める「仮置き場」が設定されますが、仮置場候補地の事前検討・選定が未実施であると災害発生後、急遽公有空地等を仮置場に選定せざるを得ません。周辺住民から臭気・車両渋滞等の苦情が発生し使用継続が困難になり、すぐ次の用地選定に迫られることになります。

 公園・グランド等に養生なしで直接廃棄物を仮置きする事態も搬入管理の対応ができず

野放図な投棄場となります。

 災害ゴミは設置された集積所に車などの運搬車両で持っていくか、自治体によっては対応事業所に電話して戸別に収集してくれるので、各自治体のウェブサイトの確認が必要となります。

自治体経由のごみ収集は無償ですが、罹災りさい証明書が必要な場合があるので、事前に取得に留意する必要があります。

 

き 協定

 災害発生時の廃棄物収集等に関する民間業者との協定が未締結であると、災害発生後一定期間、廃棄物の収集体制が組めず仮置場へ自力運搬手段のない市民はやむを得ず路上や近隣空地に排出することとなり、しばらく放置状態が続きます。業者運搬から仮置場運営管理の道筋ができなくなります。

 

く 組合・国・県・他都市との連携

 災害発生時の具体的な他機関連携のイメージがないと支援要請の具体化に時間を要することとなり1自治体の処理能力を超過する災害が発生した時、適切な連携がないと、具体的な処理戦略が迅速に描けないこととなります。

 

け 計画

 市・県が災害廃棄物処理計画を未策定であると災害発生時の初動対応が後手に回り緊急対応に追われ、復旧・復興に廃棄物処理がお荷物となります。

 

こ 広報

 災害廃棄物対応の戦略決定に手間取ると災害廃棄物の排出方法の明確な広報が遅れ、分別の乱れと便乗排出を食い止めることができず、ボランティアへの分別排出周知徹底も行き届かず、結果として処理困難な大量の混合ごみを抱えることとなります。

 

災害廃棄物処理支援ネットワークの活用

 具体的な廃棄処理については環境省の管轄下から複数省庁が協力し、必要人員・機材を近隣自治体や都道府県に支援要請しつつ、処理費用の分担や処理完了までの期間見通しについて、県や国で協議を進めることが定められています。また、この支援処理に関しては専門人員支援に特に重点を置いた官民合同のD.Waste-Net(災害廃棄物処理支援ネットワーク)が活用されることになります。

 

発災後のスケジュール

 東京都の場合の経過期間と取り組み事項を見てみます。

■~3か月目

公費解体の受付や解体工事、災害廃棄物処理の開始

〇 災害廃棄物の収集運搬、処分や仮置場管理業務に関する委託契約を締結する。

〇 必要に応じて、都外施設への広域処理を検討する。

 

■~6か月目

公費解体の受付や解体工事を継続し、排出現場での分別をできる限り行う。

〇 二次仮置場への廃棄物の搬入、破砕、選別等を開始する。

〇 処理施設への搬入、中間処理、最終処分を実施する。

〇 必要に応じて、都外施設への広域処理を実施する。

〇 復興資材の品質評価、搬出を開始するとともに、搬出先を拡大する。

 

■~2年目

公費解体の受付や解体工事を継続し、排出現場での分別をできる限り行い、二次仮置場へ搬入するとともに、適宜、解体計画を更新し、効率的な解体を進める。

〇 都内施設、都外施設への搬出を継続する。

〇 復興資材の品質評価、搬出を継続する。

〇 進捗状況を踏まえ、人材や資機材の配分の最適化を行う。

 

■~3年目

処理完了に向けた準備

〇 仮置場の閉鎖準備を行う(早期に閉鎖できる場合は早期に着手)。

〇 公費解体受付終了に関する都民への周知を行う。

〇 仮置場の現状復旧を行う。

 

住民の役割

 災害後の復興のためには、災害廃棄物を素早く撤去することがまず必要となります。しかしながら、現実的に撤去された災害廃棄物を一度に処理することは困難であるため、一時的に仮置き場に集積され、順次処理されることになります。

 仮置き場に長期間災害ごみを野積みすると、周辺環境を汚染する恐れがあるため、迅速な処理が求められます。

 このため、災害廃棄物の処理は埋め立てやバッチ式の焼却(細かく破砕せずに処理できる)が大勢となることが多くなります。

 

 被災地域の住民は、被災者でもあり廃棄物の排出者であります。

 

 まずは自らの生命と安全な生活を確保することが第一ですが、一方、災害廃棄物の適正な処理のためには、廃棄物の排出段階での分別の徹底など、早期の復旧・復興に向けて、一定の役割を果たす必要があると考えます。