「暁の翼」
シネマヴェーラ渋谷で鑑賞。
増村保造監督と同じ東京大学出身の監督ということで、会社もいろいろと期待していたであろう富本壮吉監督の第一回作品。「製作・永田雅一」というところにその気合を感じる。
富本壮吉監督と同じ1960年に監督デビューしている方は他に、井上芳夫監督、弓削太郎監督、池広一夫監督などがいる。このお三方のデビュー作は「製作・武田一義」であるから、会社側の差別化がよくわかる。
大映のこういうわかりやすいところは、良くもあり、悪くもあるよなあ、と思う。私はこの愚直なまでに分かりやすいところが好きなんだけど。大映って可愛いよねえ。
富本壮吉 暁の翼 1960年4月6日 永田雅一
井上芳夫 特別攻撃 1960年2月10日 武田一義
弓削太郎 女は抵抗 1960年3月8日 武田一義
池広一夫 薔薇大名 1960年12月7日 武田一義
井上昭 幽霊小判 1960年4月6日 三浦信夫
井上梅次 勝利敗北 1960年4月27日 永田雅一
瑞穂春海 すれすれ 1960年5月18日 武田一義
老成瑞穂春海監督とヒットメーカー井上梅次監督を大映に呼び寄せて映画を撮ったのも同じ1960年。大映勝負の年、1960年。よく考えたら、4月6日公開の映画は、新人監督二本立てになっているのね。この日、映画を見に行った人たちは相当な大映ファンで、「よし、大映の新人監督の門出を祝ってやろうかな」ぐらいに思って観に行っていたのかも知れない。
リアルタイムで大映映画を観ていた人たち、絶対楽しかっただろうな。羨ましい。私の父や母さえも生まれていない時代だから、羨ましがるのは変な話だが。
映画の内容の話に戻るけど、これは実話を基に作られた映画ということだけど、その史実を知らない私は最後の最後までハラハラしながら観ていた。あまりこういう内容に感情移入しないタチだけど、この映画の最後、菅原謙二と友田輝が再会する場面は感動した。つまりとても良い映画です。
飛行機好きな人が見たら、また違った面白さもあるだろうし、大映俳優好きの私が観てもまた面白い。今作は若手沢山で嬉しい!
1957年ごろから在籍している男前若手と1960年からの可愛い新人たちが共演する作品はあまり多くないのではないか。
だいたい1960年の新人達が出始めたタイミングで、1956年1957年ごろからのお兄さんたちは引退していくから、共演できるのはこの時期だけ。ただ黒須光彦、花野富夫はそれほど出番は多くない。一言の報告を終えて、そのまま立ち去ってしまう。
それより森矢竹村吉葉のほうが出番が多かった。またまた森矢×竹村映画だった。
土方孝哉、仲村隆、長田健二、松本幹二の四人は管制塔(?)のようなところで、何やら忙しそうにしていた。土方孝哉以外の三人はクレジット無し。仲村隆101作品目だ。
喜多大八は台詞があったし、クレジット出演かな?クレジットに佐藤八郎とあったような気がする。前から薄々気づいていたけど、やっぱり喜多大八と佐藤八郎は同一人物だね。佐藤八郎から喜多大八に改名したのだ、きっと。今回の映画ではっきりした。
成田昇二、若林祥二のダブルショウジも出演。浜口喜博が操縦する機体に搭乗していたのが成田昇二だ。やっと成田昇二分かるようになった。
私が気になる大映若手俳優三人のうちのひとりは若林祥二さんかな?という気がしてきた。仮にABCとしたとき、Cの方だ。Aの方はたぶん若松健さんだとこれもハッキリした。
残るBの方だけ分からないなあ。若松、若林ときたら残るは若村?でも、あの時代の大映俳優に若村姓は見当たらない。若シリーズは梅若正義を含めた三人で完結かな(笑)
「朝風に乗って」
黒須光彦つながりで先日購入したDVDの話。
「からっ風野郎」、「不敵な男」、「暁の翼」と続けて黒須光彦を観ていたら、なんだか急に気になる存在になってきて、思わずAmazonで「昭和こどもキネマ」というDVDを注文してしまった。
わたしはどれだけ大映俳優に浪費すれば気がすむのか。
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子役時代のくろみつが見られるDVD「昭和こどもキネマ 第五巻」は、Amazonで注文できる。
そもそものきっかけは「からっ風野郎」。「この警官服のくろみつ格好いい」というところから始まった。
右から、竹内哲郎、三津田健、佐藤八郎(喜多大八)、花布辰男、三島由紀夫、黒須光彦
1950年に東宝教育映画株式会社が製作した、子供達のための映画。とにかく良い映画。この一言に尽きる。
日頃、醜い忙しない生き方をしている自分が恥ずかしくなった。この時代の日本人の質朴さと、時代を変えていこうという気概は、現代日本人が立ち帰るべき原点かもしれない。
そしてこの麗らかな映画には敗戦国の物悲しさというのが微塵も感じられない。終戦から五年が経ったころ、この当時の人々の経済的・精神的復興はまだまだ途上であっただろうと思うけど、せめて子供達に見せる映画だけは明るいものを、と思って製作したのだろうなあ。この時代の大人たちは、未来の宝である子供たちをしっかり育てようと一生懸命だったんだよね。この映画を観ていると、それがとてもよく分かる。
この映画を見て育った方々がその後の日本を変えていったという事実が、何よりこの映画の価値を物語っている。
山内康儀(久保明)
黒須光彦