先日終了した「半沢直樹」、メチャ面白かったですね!
うちのコーチも出番は1分もないぐらいだったのに、いまだに知り合いに会うと「半沢出てたでしょ?!」と言われるそうです。社会現象とまでなった高視聴率ドラマの威力はすごいです!役者は、やはり「話題作に出てなんぼ」ですな。
最終回は特に面白かったですね!
「どんでん返し」「伏線回収」「顔芸」などユニークなものはいくつもありましたが、中でも僕は「メタファー」のぶっ込み方がすごいなと思いました。
【メタファー=「面白い演技!」の裏技】
「7つの基本フォーム」の一つ、メタファーはもちろん台本に書かれている場合もあります(シナリオ作法では「シャレード」と言うらしいです)が、俳優がアドリブでその場でやることも多いです。
最終回、大きなものだけでも5〜6個ありました。皆さん気付きましたか?また、そのメタファーが「台本に書かれていたもの」か、「俳優が自分でその場で思いついたもの」か見分けられましたか?
【メタファーってなに?】
さて、ちょいここで、メタファーを知らなかった、また読んだけど忘れちゃった、よく分からなかったって人に、おさらいです。プロの撮影現場ではしょっちゅう使う重要テクなので理解必修です。
演技のメタファーとは、「何らかの状況や心情や意志などを、言葉を介さず象徴的(連想的)な『動き』で観客に伝えるテクニック」です。
リンク先よく読んでしっかり復習、理解してからこの記事読んでくださいね。
さあでは、「半沢直樹」最終回の珠玉のメタファーの数々を見ていきましょう!
ドラマ「半沢直樹」最終回 メタファー解説
① 盆栽破壊
最も印象的なのは、白井大臣が盆栽を「くたばれ〜」と言って粉々にする所でしたね。老獪で陰湿な政治の象徴だった盆栽、それを叩き付け破壊するのは見ていてとてもビックリし、スカッとしたシーンでした。
白井大臣の「私はあなたを潰す!」という決意が、この「動き」を通してしっかり私たちに伝わってきましたね。
この盆栽は、最終回以前から、「出過ぎた枝は切る」つまり反抗するものは抹殺するという柄本明さん演じる蓑部幹事長の「権力の象徴」でした。枝にハサミを入れるたびに、そこにいる人はみんなビビっていました。それを最終回に粉々にするとは、さすがのアイデアですね。
余談ですが、この盆栽は実は劇用の軽いものなのだそうですよ。言われてみれば、かなりの重さの土の入った鉢を女性があんな風に頭上高く持ち上げることは難しいですね。もちろん破壊だけなら本物でも机から落とせばいいだけですが、あの「画」が欲しかったから軽いものに変えたんですね。
② 桔梗、踏みつけ&押し花
その白井大臣が、蓑部を裏切りを決意するキッカケとなったのが、半沢の嫁、花から渡された桔梗の花、花言葉は「誠実」。その花を蓑部に踏みにじられ、白井大臣はなにが大切なのかに気付かされます。
押し花にして持っていたシーンが印象的でした。
③ 「ハアー?」
まだまだありますよ!
債権放棄を発表する会場で、蓑部幹事長の言葉に対して、大和田常務が「ハアー?」と耳に手を当てて聞き返します。
もちろんこれは、本当に言葉が聞き取れないのではなく、「あなたの言うことはもはや聞きません!」というメタファーです。
蓑部幹事長から、やられたのを土壇場でやりかえしたわけです。痛快でしたね。
④ 辞表引き裂きからの紙吹雪
そして、半沢の辞表を巡るシーン。
辞表を目の前で破くシーンです。これはドラマではよくありわかりやすいですね。
辞表を破くという行為は、「お前の実力を見せてみろ!」というメッセージです。
辞表を「紙吹雪」にして、おまけに歌舞伎の助六のポーズまで取っています。
「よっ、澤瀉屋(おもだかや)!」の声が聞こえてきそうですね。
この紙吹雪は、「オレは潔く身を引く」というメッセージのメタファーでしょう。こんな使い方すごいですね!
⑤ 頭取チェアチラ見
さあ最後、これは見過ごした人も多いかもしれません。
半沢に向かって「頭取になってみろ!」と言って会議室から出て行った大和田を見送ったあと、半沢はフッと会議室の真ん中の椅子に目線を落とします。
その椅子こそが、そう「頭取の椅子」です!
それを見たあと、空間を見つめ微笑みます。(ちなみに、これは、7つの基本フォームの一つ「イメージ風船」というテクニックです。)
「頭取の椅子」をチラ見してから、未来を想像し、ニヤリ。これからの戦いに決意を新たにしているのが感じられますね!(この写真だけだとちょっと悪者顔に見えますが)
椅子をチラ見するのとしないのでは、微笑みの意味が全く変わります。堺雅人さんのアドリブメタファーでしょうか?すばらしいですね!
半沢直樹は芸達者なベテラン俳優が多く、「7つの基本フォーム」の宝庫で、とても分かりやすく勉強になりました。
「顔芸」も話題になりましたが、あれは役に成りきれている、つまり「何がしたいか?」を明確にそこに見つけているからこそ成り立つもので、普通の人があれをやったらただ大げさでわざとらしく、ヘタクソに見えてしまいます。「顔芸」を成立させる為には経験とテクニックがいるのだと感じました。
さて、おおまかですけど、みなさん、メタファーをどこで使っていたか、わかりましたか?言われて見たら「ああこれかっ!」ってなったと思います。
メタファーをうまく使うと、セリフで説明するより観客に深く伝わり、観客をまるで劇中に入り込んだ気持ちにさせることができます。「うんうん、そうそう!」と「自分がそれを見つけた」気分になるのです。つまり、たった一つの動きで観客に「うまい!」と思わせることができるとてもお得なテクニックなのです。
今回のようなうまい使い方を学んで、「半沢俳優」さんたちのような「メタファーの使い手」を目指しましょう!