さて、ここらで「なぜリアルで自然な演技」が求められるのか?再確認をしておこう。

 

「達成したい目的」と「具体的なやり方」

どこで習っても、何を演じてもなかなかうまくならない人(以前のオレ)に共通の問題は、「目的がない」&「やり方を知らない」。

 

演技の仕事の目的は、仕事なんだから「顧客の要求に応える」こと。

 

そして多くの顧客は「リアルで自然な演技」を求めている。

ではなぜ「わざとらしく不自然な演技」は求められないのだろう?

 

答えはカンタン、観客はドラマの中の「架空の世界」をリアルに感じ、それでその役の人物と一緒に考えたり悩んだり、つまりその役に共感して、その世界を味わいたいのだ。

 

そこに「わざとらしく不自然な演技」をやる俳優がいると、その「作品世界」じゃなくて、その俳優そのものがそこに見えてしまう。「この人、わざとらしいなあ」って。物語への興味は失われ、もはやその俳優のヘタクソさしか目に入らなくなってしまう。

 

これは、CMの演技でも同じ。

CMでは、多くの場合

 

  1. 「ユーザーインサイト(消費者の本音)」
  2. 「ソリューション(解決策)」
  3. 「ハッピーまたは満足」

 

って流れで構成されている。

たとえば、

 

  1. 「油汚れが落ちなくて・・・」
  2. 「そこで、この新型洗剤だ!」
  3. 「あら、スッキリ!」

 

ってこと。

 

そう、その不満や要求の「解決策」を提案するのが、CMの目的なんだね。

で、もし、最初の「ユーザーインサイト」や最後の「ハッピー」がウソ臭かったら・・・当然、その「解決策(商品)」もウソ臭く見えてしまう。

 

地方CMとかでよく大げさな演技で紹介されている商品ってあるけど、やっぱりあれってウソ臭くて胡散臭く感じるよね?まあ突き抜けてしまえば逆にバカバカしくて面白いけど。

 

ということで、実はCMに要求される演技の「リアル度」ってのは、企業規模と関係あるらしい。大きくて広くユーザーと接する身近な商品を扱っている企業ほど、「リアルな演技」を求める傾向にある。その代表は「Google」とか「Facebook」とか通信会社、保険会社などだね。

 

逆にユーザーが限定されたマニアックなものだったり、小規模な企業のものはわざとらしい演技が求められる傾向にある。カー用品とか地元のパチンコ屋とか。

 

 

さて、本題に戻って、その「リアルで自然」を目的とできない人は、「どう演じたら分からない」ってレベルでいつまで経ってもグルグル回って成長しない。

 

その目標さえしっかりつかめたら、それがどういう仕組みで成り立っているか、そこに興味を持つだろう。よくある「セリフ術」とか「発声」とか「気持ちのコントロール」とかじゃなく。

 

「目的」が明確になって、初めて「やり方」に意識が向いて行く。

そして、その「やり方」を知れば、もう「目的達成」は目の前だ!

 

多くの俳優がその「仕事の目的」と「やり方」に興味を持たず、見当違いの努力をし続けている。もちろん僕もその一人だったけど。そして、訳の分からぬ不安とだけ戦ってしまっている。

 

ホントの「知識と技術」を知らない「演技の先生」や「監督」などの指導者の、「ふだんの君のままでいいんだよ!」とか「もっと力抜いてリラックス!」とかの、勘違いした指導の言葉がその混乱に輪を掛けてしまう。

 

「ふだんの君」って、自分はそれまでそんな言葉言ったことも、そんな状況になったこともないんだよ!なんでそれで「ふだんのまま」でできると思うんだろ?

「ふだんのままでいる」ではなく、「まるでふだんのままに見える」ことこそ仕事なんだ。

 

「もっとリラックス!」って、仕事やるのにリラックスメインにしてどうすんだっての。

「リラックスが目的ではなく、課題を明確にして、結果を創り出すことだけが大切なんだ。

 

世の中には、楽器やスポーツ、ダンスなどの教室がたくさんあって、そこでは「基礎」とともにその「やり方」を教えている。なのに、なぜか演技、それもプロ俳優の世界で求められる「リアルな演技」では、その「基礎」や「やり方」を教えている所は、僕の知る限りたった一つしかない。

 

「発声」とか「リラックス法」とか「シアターゲーム」とか「インプロビゼーション」とか、まあそういうのもいいけど、それって「リアルな演技」の基礎じゃないでしょ?そういうことやってるだけで、台本に基づいて監督さんの細かい要求に応える「リアルで自然な演技」ができるのかってことよ。結局そういうレッスンしてる先生って、実際の演技の仕事のこと何一つ分かってないんだよね。

 

どんなジャンルのレッスンでも、そこに本当に「知識と技術」が確立していれば、情熱さえあればどんどん上達して行くはず。演技レッスンの世界だけが、生徒から高い金取って「混乱」だけを植え付ける教室がほとんど。

 

 

明確な知識と技術。それを知れば、あとは必死で訓練して自分のものにすればいいだけ。

 

芝居始めた時に、今のこの知識と技術に出会いたかったなあ。そしたら、今とはぜんぜん違う場所にいたかもしれない。

 

もちろん、「新たな武器」を持った今の、ここからどれだけ登れるか?って新しいゲームもとても面白くてワクワクしてるんだけどね。

 

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